イケてる!市民活動★ミニレポート内容

公認サークルのひとつ「田んぼ倶楽部」を通じた住民コミュニティ形成とは?「タイムズ・ピース・スクエア」でご活躍されている方の代表の井上 秀敏さんと細川 尚嗣さんにお話を伺いました。

 

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井上 秀敏さん(右)

タイムズ・ピース・スクエア団地管理組合理事長、田んぼ倶楽部部長

 

細川 尚嗣さん(左)TPSC(タイムズ・ピース・スクエアクラブ)委員長

 

<タイムズ・ピース・スクエア>

甲子園球場約2倍の広大な敷地に建つ3棟・総戸数1000戸の大規模マンション。

各棟に管理組合(団地理事会・TPSクラブ・TPS町会)があり、ユニークな組織形成と活動展開をされています。

 

子どもへの高い教育効果や、交流の場として有効な「田んぼ倶楽部」

「田んぼ倶楽部」について詳しくお聞かせください。

井上:「田んぼ倶楽部」は、約70~80人の住民が常時参加する、TPS公認サークルのひとつで、今年で12回目を数えます。2畝(80坪)の土地があり、そこで有機肥料である蓮華を使った無農薬の米作りをしています。

始めた当初3年は農業のプロに指導をいただいていましたが、今は、実家が農家で米づくりに精通した住民を中心に自立して、みんなで農業に精を出しています。今はもち米を育てています。

4月に田んぼ起こしをし、6月に田植え、6月3週目あたりから8月1週目あたりまで、毎週草引きをするなど、日曜日の朝8時に集まり、みんなで大切に育てています。先日大きな台風で敷地内に数本の倒木がありましたが、田んぼは被害を免れ、今日無事に稲刈りの日を迎えられてほっとしています。今日、刈った稲から採れたもち米を使って、11月に行う「冬まつり」で餅つきを行い、ぜんざいと磯辺焼きを販売します。

住民コミュニティ形成のツールとして、「なぜ田んぼ?」と不思議に思うかもしれませんが、実際に携わってみると、子どもへの教育効果が非常に高いと気付いたのです。

田んぼで作物を育てることを通じて、「食育」に繋げやすいということもありますし、都会の中で、自然と触れ合える。例えば春にはカエルが見れますし、野鳥も来ます、昆虫とも触れ合うことができます。また、身体を動かしますので、いい運動になります。こうしたことから、子どもの健やかな心と体を育むのに、「田んぼ」は非常に有効だと思うのです。農業体験をしたことのない親も多いですから、親子で参加することで、大人にとっても子どもにとってもよい交流の場になっています。

 

タイムズ・ピース・スクエアは住民の自立したコミュニティ形成までがデザインされた物件だった

「田んぼ倶楽部」を始めた頃のいきさつをお聞かせください。

細川:田んぼ倶楽部を始めとした「TPS公認サークル」とされている活動は、マンションを購入する際に、マンション管理会社から、「このようなサークル活動がありますよ」と紹介を受けました。このマンション管理会社が企画した「住民コミュニティ形成」のためのアイデアで、入居した当初からあった枠組みなのです。

TPSでは年に2回、大規模な祭りを行いますが、当初はマンション管理会社が企画・運営し、それに対して住民が運営費を支払うシステムでしたが、それを、住民のボランティアで運営する自主運営に変え、収益をマンションの管理運営に還元するシステムにしました。もちろん管理会社側も、ゆくゆくは住民による自立した運営に移行していくことを見据えていました。実際には、駐輪場が少ないので、土地があるなら田んぼよりも駐輪場にしてはどうか、といった意見もなかったわけではありませんが、田んぼにしたことで、今でも資産価値があると私は思っています。田んぼのある生活。田んぼをコアに、コミュニティが成立しているのは素晴らしいと思います。

 

1,000世帯いれば、多様なプロが身近に存在。ノウハウを提供し合う様々な連携が可能に

その独特の組織体制と運用、コミュニティ形成における強みについてお聞かせください。

細川:TPSには理事会、町会、TPSクラブがあり、独立したひとつの町のようになっています。

1,000世帯もいると、デザインのプロ、農業のプロ、電気のプロ…いろいろなプロがいますので、仕事や経験で培ったノウハウを提供し合う連携により、大きなことでもできる、それが最大の強みです。また大小いろいろなサークルがあるので、ネットワーク単位で強固につながることができるのも強みです。

 

井上:マンションに入る住民は、子どもが就学前の子育て世代が多いですから、子どもが小さいうちから親子でコミュニティに自然に参加することで、子どもだけでなく、さまざまな世代の大人同士も触れ合うことができます。

30歳代から40歳代の若い父親は、仕事が忙しく、地域コミュニティになかなか入りにくいという側面があると思うのですが、ここではそんなことはありません。30歳代半ばから50歳代くらいの年代が担い手のコアになっています。マンションに新たに入居した子育て世代には、子どもへの教育効果などメリットを理解してもらったうえで、いかに自分たちの「まち」に魅力を感じ、好きになってもらえるか、という視点でアプローチをすることで参加意欲を喚起できると思います。

 

マンション住民だけでなく、近隣の方々とも連携・交流できる大規模なまつりを開催

近隣地域の方々とはどのような交流をされていますか。

細川:TPSの住民はもちろん、近隣の方々を含め、組織や世代を超えて触れ合う交流の場として位置づけているのが、TPS夏まつりとTPS冬まつりです。田んぼ倶楽部などのサークル活動は、マンション住民だけが行うものですが、まつりは一般に向けて広く開放し、近隣の学校から小学生、中学生のほか、就学前の幼児もたくさん参加してくれます。単一マンションのレベルで行うまつりとしては、約3,000人を、動員する、かなり大規模なもので、TPS各組織のボランティアによる店舗を中心に、地域のボーイスカウト、飲食店にも出店いただくなど、地域と連携した一大イベントとなっています。

50円、100円…小銭を持って、焼きそばやかき氷などの定番ものから、無農薬で栽培した安全で安心な冷やしきゅうり、冷やしトマトなどを食べながらプロレスや吹奏楽、ダンスなどを鑑賞し、マンション住民も近隣の方々も、みんなが楽しく触れ合います。

子どもにも、学校の友達ではない近所の知りあいを増やす、そして親も交流し合う。そんな機会としてとても意義のあることだと考えています。

 

世代交代も視野に入れ、常に新しい人との出会いや関係性づくりを意識

最後にチャレンジしたいことなど、今後の抱負についてお願いします。

井上:今の担い手はまだまだ若いのですが、世代交代も視野に入れています。現在、農業ノウハウを伝授してくれている方の後を継ぐ人の育成を始め、新しい方に入会していただくための、倶楽部説明会などの活動を積極的に行っています。年配の夫婦、共働き世代で孤立している世帯があれば、そういう方々ともぜひ一緒にやっていきたいです。ただ、考え方は人それぞれなので、考えを押し付けるつもりはありません。楽しそう!入ってみたい!でも入りにくい…そう思っている人がいれば、ウエルカムです。

人間関係がどんどん希薄になり、ドライさが目立つ現代社会ですが、せっかく住んでいるなら自分のまちを好きになってほしいですし、私自身、昔ながらの地域コミュニティ独特のウェット感がもう少しあってもいいのかな、と思います。こうした価値観が若い世代にも共感され、多様な人たちが遠慮なく入って来れるコミュニティづくりを目指したいと考えています。

 

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マンションの上の部屋からの鳥瞰写真。

 

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子どもたちも積極的に参加していました。

 

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農業指導をされる方は若い人に対し、強いリーダーシップを発揮されていました。

 

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束ねた稲を干します。また稲を束ねるのは非常に難しくテクニックがいることがわかりました。