イケてる!市民活動★ミニレポート内容

自らの経験を生かして立ち上げた介護事業から、ご縁を紡いでその活動が大きく広がっているNPO法人おひさま。地域の福祉をトータルにプロデュースしようと奔走される理事長 原 博美さんと児童発達支援責任者の駒崎順子さんにお話を伺いました。 

 

おひさま_掲載写真

NPO法人おひさま

理事長 原 博美様(向かって右側の方)

さんさんくらぶ/にじくじら

管理者 児童発達支援責任者

駒崎順子様(向かって左側の方)

 

<主な活動>

介護・保育・子育て支援事業
障がい者自立支援事業

 

 

世代を超えたつながりをめざして。

NPO法人おひさまの活動についてお聞かせください。

介護事業の「ヘルパーステーションおひさま佃」と「ケアプランセンターおひさま佃」、保育・子育て支援事業の小規模保育施設「ゆりかごハウス」、そして障がい者支援事業の障がい児通所支援(多機能型)「さんさんくらぶ」と児童発達支援「にじくじら」を運営しています。また高齢者の認知症や、寝たきりにならないための予防事業として、老人センターで「おとなのてらこや」を開催したり、大学と協働で親と子のきずなを深めるしつけの提案「ゆりかごラーニング」にも取り組んでいます。看護師としての経験と、「NPO法人にしよどにこネット」前代表理事として子育て支援に関わってきた経験を生かして、8年前にNPO法人おひさまを設立しました。乳幼児、障がいのある子ども、子育てをしている親、そして高齢者、と幅広い支援に取り組んでいます。地域のみんながつながり仲間になって、さらに人と人がつながる、世代を超えたつながりをめざしています。

 

 

介護事業のスタートから始まったNPO法人おひさま。

この事業を立ち上げたきっかけについてお聞かせください。 

西淀川区で地域の活動を始めて約25年になります。もともとは看護師でしたが、高齢者や障がい者の看護に10年程携わった後、親として子育ての活動に取り組む様になりました。そして、富山県の「この指とまれ」や香川県の「いのちの応援舎」などの取り組みと出会い、自分の地域でも世代をつなぐ取りくみをしたいと思うようになりました。子育て中でも介護中でも障がいがあっても、その人らしく生きがいのある生活が出来る地域をつくりたい、「切れ目のない福祉」が地域には必要だ、とずっと感じていたからです。そんな思いを周囲に発信し続け、仲間が集まり、周りからも後押しをしていただき、決意を固めて「おひさま」を立ち上げました。

まずはケアマネージャーの資格を生かして、ケアマネージャーやヘルパーの仲間と介護事業を始め、そこを拠点に保育、子育て支援、障がい児通所支援、児童発達支援へと広がりました。地域の人と人がつながる豊かな街づくりをめざして活動しています。

 

 

子どもの主体性を育みながら、親が育ち、次世代の担い手が育っていく。

高齢者のサポートから始められ、たくさんの事業を展開していらっしゃいますね。子育てに関わる活動のきっかけや成果について、お聞かせください。

まず、小規模保育施設「ゆりかごハウス」からお話します。「おひさま」を立ち上げて1年目に、空き家を使わせていただける機会に恵まれました。ここを見た瞬間に「子どものために使いたい」と思いました。それで、保育ママ事業に取り組むことにしたのですが、改装には多額の費用がかかることが分かりました。資金が厳しい中、助成金制度があるとあおぞら財団さんから情報を得て、大家さんにもご協力いただき、素晴らしい施設をつくることができました。3年後には、スタッフ全員が保育士資格をもつ小規模保育所になりました。様々な人の応援のおかげで、今では、保護者のみなさんから感謝の声を沢山いただける保育所となっています。

次に開設した、障がい児通所施設の「さんさんくらぶ」ですが、子育て支援が様々ある中、障がい児の支援は特に大切、とご意見をいただくことがありました。確かに、障がい児をもつお母さんは、子育てに悩みますし、孤立しがちで、より手厚い子育て支援が必要です。しかし私自身は経験が少なく、障がい児支援に取り組めるか不安でした。そんな中、たまたま旧知の友人で西淀川養護学校の元教師をしていた駒崎さんが仕事復帰したいというタイミングの時に「放課後等ディサービスを一緒に立ち上げよう」と声をかけ、まさに絶妙のタイミングで縁がつながりました。

そして、障がい児通所施設の「さんさんくらぶ」を駒崎さんと二人で立ち上げ、障がいのある子どもの放課後や休日の居場所として、「食」を療育の柱にして子どもたちの主体的な活動を大切に活動しています。

その1年半後に立ち上げた、児童発達支援の「にじくじら」は、発達が気になる就学前の子どもとと保護者が一緒に通所し、遊びを通して必要な力を育てていくと同時に、お母さんのサポートも大きな目的としています。健診などで、ことばが遅いなどの状況から療育に行ってみてはどうか、と言われて最初は驚きとショックで茫然自失のお母さんがここに来て、まずあたたかいスタッフたちに出会うと同時に少し前に同じ思いをして「にじくじら」に来た先輩ママとも出会って、ひとつずつできたことを喜び合ったり不安を相談して、あれよあれよと見違えるように親も子も元気に変わっていきます。区役所の保健師さんや相談員さんから、「にじくじらに通うお母さんたちはお友達親子が多くて元気だ」と言われます。障がいのある子どもをもつ親は悩みを抱え込み孤立しがちですが、同じ立場のお母さんたちとつながることで、心強くなり、主体的になっていきます。今では自主的に家族ぐるみの交流会を企画したり、親同士声を掛け合い励ます姿が見られるようになり、親子療育をはじめて本当に良かったと思っています。

これらの子どもに関わる事業の一環として、親と子のきずなを深める楽しいしつけの提案「ゆりかごラーニング」をプール学院短期大学の寺田恭子教授と協働で取り組んでいます。寺田教授とは、子育て支援の活動を通じて出会い、かれこれ20年近く活動を共にし、協働させてもらっています。「ゆりかごラーニング」は発達心理学や脳科学、主体性理論を柱に、子どもの自尊感情や主体性をバランス良く育てるには、「親の主体性のバランス」が大きく影響することに着目しています。親の主体性が自分の思い通りにしたいという思いが強いと、自分のめざす子育てをやろうと必死になるあまり、親も子もしんどくなってしまいます。親と子の良好な関係を育むためにはどうすれば良いかを、DVDで具体化し、パワーポイントを使った講義とセットで「ゆりかごラーニング」として創りました。子育て中の親や支援者、一般の人にもこの「ゆりかごラーニング」をお伝えしたところ、子育ての理論や具体的な方法がよく分かると高い支持を得ています。

「支援者は助手席で、親を運転席に」を合言葉に、子育てや人と人の繋がりを応援することで、親と子どもを応援し、親と子どもが心豊かに育ち合うことを大切にしていきたいと考えています。

 

 

豊かな人生のエンディングのために。出会いの場で高齢者をサポート。

介護事業からのスタートとお聞きしましたが、施設のほかに高齢者のサポートはどんなことをされていますか?

高齢者のみなさんの最大の願いは「寝たきりや認知症になりたくない」です。その願いを元に、西淀川区老人センターで「おとなのてらこや」を開いて、予防事業に取り組んでいます。3年間やっていますが、大人気で、毎回40名の定員が満席になり、リピーターも沢山おられます。内容は、脳を活性化するトレーニングとして、脳科学の研究を参考にした読み書きや計算のプリントをやったり、ゲームや音楽を楽しんだり、笑いヨガやリハビリをしてもらったり、楽しく生きがいをもってもらいたいと取り組んでいます。高齢になると、新しい人と出会う機会が少なくなりますが、人との出会いは脳を活性化するだけでなく、生きる意欲にもつながります。「おとなのてらこや」では、くじ引きでテーブルごとのグループを作り、自己紹介やアイスブレーキングで楽しい出会いをファシリテートします。健康寿命をのばすために、人と人の出会いを応援し、生きがいのある場をつくっていきたいと考えています。

一方、介護の現場では看取りもあります。高齢者のみなさんの中にはご病気や認知症だけなく、一人暮らしや障がいのある方もいます。誰にも訪れる死を「こわいもの」、「忌み嫌うもの」ととらえるのではなく、どのような状況であれ、主体的に自分らしく生きることを楽しみ、感謝のある最期を迎えたいという気持ちになる支援をしたいと考えています。終末期が豊かであること、満足して人生の最期を迎えられるのは素晴らしいことだと思います。そのお手伝いが出来るよう、看護師やケアマネやヘルパーなど様々な仲間と経験を生かし、医療や地域のみなさんと連携しそのサポートをしていきたいと思います。

 

 

この町でみんながひとつになる、融合する場所づくりがこれからの課題。

乳幼児、障がい者のサポートや高齢者福祉、さまざまな事業に取り組まれている思い、今後の展望についてお聞かせください。

地域で活動を始めた25年前は、自分自身も未熟でしたし、子育て支援や地域活動についてなかなか理解してもらえず、周囲の関心も低かったのですが、今はあちらこちらで様々な人と人がつながり、地域の活動が活発化してきたと感じます。ここまで活動を続けてこられたのは、子どもや親、障がい者、高齢者まで「切れ目なく支援をしたい」という思いがあったからだと思います。障がい児親子にとっては

児童発達支援で0歳から利用しはじめたら、放課後等ディサービスも利用されると、最長で18歳までの子どもたちをサポートさせてもらえます。学校は1、2年で担任が変わりますが、学校よりも長いスパンでずっと一人ひとりの子どもとその親に関わり、ずっと寄り添い相談にのり、一貫して見守ることができます。現在私たちの活動では、親同士が交流することで親自身も成長し、やがて地域をもりあげ、自分たちで仲間をつくっていこうという気持ちも出てきて、層が厚くなってきたと感じています。その中から、18歳以降の子どもの将来についても一緒に考える地域福祉の担い手が育つことを願っています。

障がい者が自分らしく自立して生きていける地域にするにはどうすればいいか、大きな課題です。幸い、西淀川区は工場も多く、ものづくりの町ですから、そこで将来働けるようなつながりを作っていくのもひとつの道ですし、高齢者や子どもに関わる仕事も向いていると思います。多様な生き方の選択肢があれば、希望が湧いてきます。ものづくりの町と障がい者や高齢者の支援が結びつけば、何か新しい可能性が生まれそうです。地域に開かれた場所で、地域ぐるみの支援があり、楽しく生きていけるしくみ、場所をつくっていきたいです。そういう場所を今、私たちは探している最中です。

また、来期は内閣府の子ども・子育て支援新制度、企業主導型保育事業の内示も頂きました。私たちの同志である福祉職の皆さんは現場で頑張っていらっしゃいますが人材不足が深刻です。福祉職の方の子育てを「ゆりかご」や「にじくじら」の保育のノウハウを使い応援し、預けてよかったと言ってもらえる保育所にしたいと準備しています。

地域が温かい家族のような涙あり笑いありで生きていける、ずっとお互いを見守っていけるようなしくみを今後もつくっていきたいと思います。

 

 

「人」が縁をつなぐ。共感が渦をつくる。

活動を始められてから25年、長い年月ですね。大切にしてこられたことは何でしょうか?

何よりも「人」です。一人では何もできませんでしたし、支え参加してくださる人がいなければ、ここまでの道は歩めませんでした。

やってみたいと言った時に共感し背中を押してもらい、仲間が集まり、新しい事業展開を考えた時にちょうどやりたい人に巡り合い、子育て時代のご縁で「ゆりかごラーニング」に取り組み・・・というように、共感し合える人、応援しくれる人、思いをもった人が周囲にいたからできたことです。「思いを発信し行動する」と新たな出会いやヒントが生まれてくるものですね。強く熱い思いをもった人と人が共感して共鳴して、つながり、組織をつくってきたと感謝しています。まさに今、池に石を投げたところ、渦が出来て、その渦が大きくなっていることを感じます。みんなの夢が夢を呼び、もっともっと子どもたちが、障がいがある人が、高齢者が、ここに住む人や働く人が、生き生き輝くように取り組んでいきたいです。

目下の大きな課題として、経営力が挙げられます。経営は難しいし、厳しい道であることを痛感しています。今まで培った諦めない心、折れない心で、専門職の力もお借りして、壁を突き破り、みんなの力を得ながら、夢をかなえたいと思っています。