イケてる!市民活動★ミニレポート内容

「あったかファミリー運動」のコンセプトは、「演劇を通して育む人間力」。演劇がなぜ心身に良い影響を与えるのか?子どもを取り巻く社会の変化に対する思いとは?NPO法人あったか演劇研究会 代表の川本 充佐子さんとスタッフの皆さまにお話を伺いました。

 

 

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あったかファミリー運動

(NPO法人あったか演劇研究会)

代表 川本 充佐子さん(前列左から2人目)とスタッフの皆さま

<主な活動>

感性・全脳教育に基づいた子ども達の豊かな心や人間性を育むワークショップを教育現場や商業施設で展開。子どもも大人もイキイキと生き続ける社会づくりを目指しています。

創設者:川本 ルリ子さん

 

 

活字だけでは理解が難しい「社会課題」からテーマを決め、音楽や演劇など芸術アプローチで体感理解につなげる

どのような活動をされているかについて、お聞かせください。

「あったかファミリー運動」は、「未来に向けて夢の持てる社会づくり」をスローガンとして、演劇興行、演劇ノウハウを活かした身体表現・感情表現などのレッスン、音楽イベント、セミナーなどを企画・運営しています。

「NPO法人あったか演劇研究会」の本部として「あったかファミリー運動」がありますが、ここを拠点として、「教育再生の会」、「コミュニケーション力アップセミナー」、「本のディスカッション」、「演劇」、「身体表現・感情表現」などの講座を開いており、メンバー全員が企画や準備を行い、各地の施設や学校に出向いて 子どもたちの豊かな心を育む出張授業を行ったり、地域のイベントや商業施設において出演させていただいています。当会ならではの特色は、テーマを「社会課題」としていることです。「演劇」の事例でいうと、子育て、超高齢化、地域での孤立といった課題をひとつ取り上げ、それを題材にみんなで舞台を創りあげていきます。

楽しみながら理解していただくことを大切にしていますので、社会課題をテーマにしても、深刻にならない演出にして、時間も15~20分程度にコンパクトにまとめるようにしています。

例えば、子どもとよく話す親の場合、逆に子どもと殆ど会話せず、怒鳴りつけてばかりいる親の場合など、わかりやすい対比で表現し、子どもへの接し方ひとつでいかに子どもの成長に差が生じるかを表現します。身体表現・感情表現をフルに使い、セリフ(=言葉)で訴求する演劇というアプローチにより、受け手にメッセージとして届き、共感につながります。活字ではなかなか伝わらないことも演劇を通すことで、可能性はどんどん広がると考えています。

子ども・子育てをテーマとした劇なら、子育てに悩みがある保護者の方々に子どもとの接し方について考えるきっかけにしていただければ、と考えます。

また、世代を超えた老若男女がひとつの舞台を作り上げることをコンセプトとした「参加型の舞台公演」も行っています。一般の方を役者として募集・採用し、公演という成功体験を通じ、自尊感情を育むとともに、公演までに至る他の役者やスタッフとの協働プロセスを通じて、コミュニケーション能力や想像力など、社会で生き抜くために必要なさまざまなスキルを磨くことができます。

学生、会社員でも気軽に、都合に合わせて参加できるよう、少ない稽古参加でできる役を務めていただきます。高校生に参加してもらった時は、放課後に1~2回の練習で本番に臨めました。演劇未経験者でも大歓迎です。最近は、演劇に興味を持っている若い方が増え、手応えを感じています。

 

 

子どもと親との関わりを通じて、子育て世代が家庭教育のあるべき姿について考え、行動できるきっかけを提供したいと始めた草の根運動が活動の原点

あったかファミリー運動発足の経緯を教えていただけますか。

「あったかファミリー運動」は私の母が23年前に立ち上げたものです。

母は当時、音楽教師やピアノ講師をしていたのですが、社会問題への感度が高く、特に職業柄、子育てや教育に高い関心がありました。そこで、子どもを取り巻く社会課題をテーマに、子育て世代が家庭教育のあるべき姿について考え、行動できるきっかけになればと、1995年、草の根運動「あったかファミリー」を立ち上げました。その頃は、まだ現在のスタイルでなく、教師という立場と音楽というアプローチによって、情操教育の観点から子どもの豊かな心を育もうというものでした。

しかし、学校や家庭における教育の変化、地域との関わりの希薄化など、社会は目まぐるしく変わりました。時代の流れに伴った活動をしたいと思った母は、2002年に「あったかファミリー運動」という名称で、 任意団体としての活動を開始しました。

その頃、私は企業に就職したばかりでした。もともと心理学を学んでおり、さまざまな社会情勢やその背景にあるものを分析することに興味・関心が高かったので、母の活動を身近で見ているうちに自身も参加したいと考え、2006年に入所し、現在に至ります。

私のような比較的若い世代は、どちらかといえば社会課題への関心が希薄だと思います。つまり、あまり危機感がない―どこか他人ごとに見てしまう。自分ひとりが何か言ったところで何も変わらない、という具合に。でも、社会の担い手である私たちが「誰かが何とかしてくれる」では、この国の未来はないと思います。だから私たちの活動が、若い世代を中心に社会課題に関心を持ち、“自分ごと”として考えるきっかけになってほしいと考えています。

 

 

コミュニケーション力が磨かれることで子どもの健やかな心と体を育む

子どもたちが、変化する社会を生き抜くために必要なことは何だとお考えですか。

子どもや若者のコミュニケーション力を高めていくことがとても大切なことと感じています。教科書を読めない(理解できない)、つまり読解力がない子どもたちが増えていると聞いたことがあります。活字離れが影響していると思いますが、地域との関係性の希薄化(無縁社会)の影響もあるのではないかと個人的に考えています。

現代社会では、核家族化を始めとしたライフスタイルの変化に伴って、地域の方々と交流する機会が減っています。

昔であれば、地域の方々とコミュニケーションできる機会はたくさんあったと思います。他人と関わることを通じて、伝える・聞く・考える・相手の気持ちを想像する・相手を思いやる、といった具合にコミュニケーション力が磨かれ、子どもの健やかな心と体を育むことにもつながっていたと思うのですが、今は地域との関わりを持たない世帯も増え、地域で子どもを育てるといったシステムは失われつつあると感じています。

それなら、子どもが集まる場所に私たちが出向いてできることがあるのではないか、と考え、小中学校の道徳の時間や総合的な学習の時間をいただいて授業プログラムを実施しています。

 

 

観劇と感情表現のアクティビティでコミュニケーション力を高める授業プログラム

どのようなプログラムか、具体的にお聞かせください。

「お互いを認め合えることができたら素敵だね」というメッセージを込めています。児童や生徒が楽しみながら理解できる仕掛けとして、前半は「演劇」、後半は「身体・感情表現ワークショップ」という構成としています。

後半の「身体・感情表現ワークショップ」は、演劇ノウハウをリソースに、身体を使った感情表現のパターンをいくつかアクティビティとして体感してもらいます。

例えばクラスメイト同士、お互いの良いところを探して褒め合う、感情を身体で表現したり、歌ったり…めいっぱい身体を動かします。「人間は脳と心がつながっているので、身体が動かないと心も動かない。楽しいことを表現するときは、無表情ではなく、イキイキ、ワクワクした気持ちで身体を動かす方が良い」―音楽教師の母の教えがヒントになりました。

感覚をつかさどる右脳、言語をつかさどる左脳、思考、自発性、感情、性格、理性など、前向きに生きるエネルギーの鍵となる前頭葉など、それぞれ脳には役割があります。身体を動かすことで脳が刺激され、活性化してポジティブになれるのです。最初は無表情だった子どもも、繰り返すうちに、朗らかで明るく健やかな表情へと変化していくのがわかります。

 

 

思いを共感しあえる他の団体や企業との連携や、お互いの強みを活かしたサポート

現代社会の背景をふまえたチャレンジなど、今後についてお聞かせください。

一人親の貧困家庭、親の虐待など、すでに表面化し、ニュースで取り上げられているような課題はわかりやすいですが、例えば、一見問題があるようには見えない家庭でも、もしかしたら親の過干渉によって、子どもが、自分自身で考え、判断する力が身に付かない環境にいるとするなら、それも課題といえるのではないでしょうか。実際、その子が将来大人になった時に壁にぶつかってしまう可能性があるかもしれません。

さまざまな要因が絡んで生きづらい社会になっている中でも、大阪は、地域ごとの課題に対応するさまざまな事業や、福祉をテーマに企業・団体と地域が協働して、見守る・支援するといったセーフティネットとなる環境づくりなど、素晴らしい取組みがされていると思います。

今後は、他の企業・団体の方々と何か一緒にできたら、と考えています。例えば、子ども食堂でカレーライスを食べた後に、「心を育む体験」としてゲーム感覚で30分ほどの演劇を行うなど、私たちの強みを活かしたサポートができるのではないかと思っています。

幼稚園、小学校、中学校での出張授業も積極的にお受けしたいと考えています。また商業施設や地域のイベントでは、私たちの演劇を観たことで「家族との交流のきっかけになった」とのうれしい感想もいただきますので、今後も活動を積極的に展開してまいります。

 

 

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