イケてる!市民活動★ミニレポート内容

北区の人口は13万人(2018年4月1日時点)を超え、全世帯の約9割がマンション居住者。地域住民とマンション居住者、マンション居住者同士のコミュニティ形成は長年の課題でした。

このたびスタートした「マンションコミュニティ支援事業」は消防署、社会福祉協議会、企業などと連携する北区オリジナルの事業とのこと。事業実施にあたり、まずは区内にある全分譲マンション370戸を対象に、防災訓練やマニュアルの作成など実施状況の実態把握を行い、その中から実施状況や地域性を踏まえてモデルとなるマンションを選定、防災訓練の実施、地域活動との接点づくりにつなげるとのことです。

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北区地域課が作成したマンション管理組合向けの資料(写真左)と

マンションオリジナルの基本ルール「防災のしおり」(写真右)

 

「防災」をきっかけにコミュニティ形成や福祉につなげる

マンションの住民同士や町内会等の活動を行う地域住民とのコミュニティ形成は、特に防災の観点から重要度は高いものの、行政の防災支援は地域住民対象であることが慣例でした。しかし全世帯の9割がマンション居住者という北区には通用しません。

マンション管理組合の皆様にとって「居住者同士のつながりづくりや地域コミュニティ参画」は、住民の流動性や個々の生活スタイル、価値観の違いなど、さまざまな事情から高いハードルとなっているという現状を知った北区地域課は、まずは「防災」で住民を呼び込む仕組みをつくり、管理組合の皆様の負担を軽減しようと考えました。

そこで開発されたのが「災害時も安心できるマンションに向けた防災活動10のヒント」というツール。防災マニュアルをつくる手順を行政主導で提示し、あとはマンション管理組合がそれぞれのスピード、やり方で進めるという具合に、行政事業としてはある程度自由度があることが特徴です。

地域課担当によれば、「ゆるやかに進めていきたい。これだけのことを1年間でやってくださいと言っても皆様の負担になってしまう。少人数からでもスタートして、少しずつ仲間づくりを増やしていただければいいと考えています。」

管理組合として、常々マンションコミュニティを課題視し、この事業を機にマンション独自の防災ルールづくりと住民との交流に取り組んでおられる3名のキーパーソンにお話をお伺いしました。

 

山崎さん

山﨑 英與さん

大淀西地域活動協議会 会長

大淀西連合振興町会 会長

マンション管理組合 理事

 

「『きちんとやらなあかん』という性格上のことがあって」

山﨑さんのリーダーシップの凄さについて感想を述べるとそのように謙遜なさっていました。

当時勤められていた会社の理解を得て、サラリーマン現役時代から町会長としての役を務め、地域活動協議会、マンション管理、社会福祉協議会などさまざまな立場で活動をされています。なかなか自分の時間が取れないと仰りながらも、地域の高齢者の皆さまとの交流について話される表情からは優しさが溢れていました。

 

既存の防災事業のリソースを組み合わせ、スピーディーにルール、防災キットを整備

「マンションコミュニティ支援事業」の取組みについてお聞かせください。

 

マンション居住者というのは、人づきあいをしたくない方が多いので、マンションコミュニティは解決するのが難しい課題です。もともとマンション管理組合として防災に力を入れていたこともあり、「マンションコミュニティ支援事業」をきっかけに、防災を入口にマンションコミュニティ形成に向けたさまざまな取組みをすでに進めています。

このマンションは221所帯650人が暮らし、マンション丸ごと町会という位置づけです。築38年になりますので、目下の課題は住民の高齢化です。65歳以上が180人、そのうち独居高齢者は40人。万一、甚大な災害が発生した場合、住民の皆様をどう安全に避難させるか、マンション独自の防災しおりをつくって配布したら―いろいろ考えていたところに、北区の「マンションコミュニティ支援事業」が立ち上がって、「防災活動10のヒント」に沿って基本のルール、防災キットなど、いろいろなものを整備していきました。以前から防災訓練に使っていた安否確認用の黄色いハンカチ、ベランダに出て助けを求める笛、北消防署と連携した救急カプセルなど、これらを防災しおりと一緒にキット化して、今月中には全戸に手渡し配布します。

ここは大淀小学校が避難場所となっていますが、300食しか非常食がありません。100人が避難して1日分しかないのです。このマンションだけで650人、大淀西の全マンション居住者を合わせると、4,500~5,000人にものぼります。大きな災害が起きた時は建物が倒壊しない限り、各戸が「最低1週間分備蓄しての自宅避難」ということも、このしおりに押さえています。

このキットはマンション居住者だけに配布するものですが、地域に対しても、いざという時は力になってさしあげたいと考えています。

このマンションは歴史が古く、耐震構造にはなっていないのですが、オープンな共有スペースには誰でも入れるという特徴があります。それをメリットとし、水害が起きた際の一時的避難場所として地域の方々に開放しようということで、防災パートナーとして北区に登録しています。

また私自身、大淀西6町会の連合会長という役を務めている立場上、6町会長に防災講座に入ってもらって、各々の町会で具体的な実践へと波及させる役割を担いたいと思っています。

 

小玉さん

小玉 始さん(写真左)

豊崎地域活動協議会 会長

豊崎連合振興町会 会長

山本 賢二さん(写真右)

マンション管理組合 理事長

 

阪神淡路大震災の時は公務員で上水道事業関係の仕事に従事。当時被災地に足を運び、今でも鮮明に当時の記憶が残っていると仰る小玉さん。

「何かあったら一切通用しないのはわかる。きれいごとじゃない。けど備えてなかったらもっと何もできない。」

過去の経験を伺い、小玉さんの防災への熱い思いが腑に落ちました。そんな小玉さんの思いに共鳴するように深い表情の山本さん。地域とマンションン、お二人のトップの絆を感じました。

 

近隣の他のマンションも巻き込むことによる豊崎地域としてのつながり強化

「マンションコミュニティ支援事業」の取組みについてお聞かせください。

 

地域により差はありますが、マンション居住者同士、地域住民とのコミュニティ形成は長年の課題であります。

まず豊崎地域の課題を申しあげますと、高齢化による担い手不足という課題があります。まずは連合会長として「何かしていかなアカン」との思いで、マンション居住者と地域住民をつなぐために、いろいろ工夫してやっていたものの、なかなか進まないことにジレンマを感じていました。ただ地域のさまざまな事業を行う中、防災や防犯関連事業には参加者が集まることを実感していました。そんな折、「マンションコミュニティ支援事業」を知り、「これや」という感じで乗っかりました。(笑)この企画、クリーンヒットですよ。

「防災講座」開催にあたっては、ネットワークを駆使して複数のマンションの方々にお話をさせていただきました。できるだけ多くの人たちに集まっていただきたい、そうでなければ素晴らしい企画を提供していただいた区役所の方々にも申し訳ないので…。結果、私たちのマンションと複数のマンション住民が集まっての合同45人で講座を受講しました。

今回の「防災講座」に参加された方々の中に、40歳代の若い役員さんで構成されているという珍しいマンションがあるのですが、そこの理事長さんがとても満足されておられました。そして「これを機に人のつながりが出来て、コミュニティができるような気がする」、「他のマンションや地域とも連携しながら、自分のマンションでできる対策から始めたい」などの具体的なご意見をいただきました。

私たちの防災―減災に対する考え方の核となっているのが、「エキスパートエラー」特定の人に任せてはならない、ということです。担当役員や、専門家の指示を鵜呑みにせず日頃から地域住民で考え、訓練を重ねることが地域を「減災」に導くものと思います。

現在、豊崎地域は28棟の分譲マンションがありますが、この「防災マニュアル」を起点として、一人でも地域の活動に参加していただける方が出てくれば。その中から10年先、20年先の地域の担い手として40~50歳代の若手の方々が先頭に立っているような豊崎をめざしたいです。

 

久保田さん

久保田 雅哉さん

マンション管理組合 理事長

 

42歳で介護福祉士としての新たなキャリアをスタート。

在宅介護で高齢者を支えて来られました。

「人の最期の生きざまを支援するのが介護福祉士。

多くの方々を看取って来られ、死生観が変わった」と仰る久保田さん。

 

高齢者の見守り、安否確認。マンションと言えど、コミュニティの重要性を感じ、マンション管理組合理事長として、高齢者のことを常に気にかけ、日々奔走しておられるのにはそうしたご自身の経験がありました。

 

管理組合の負担を軽減する行政の枠組みとスムーズなコミュニティ形成

「マンションコミュニティ支援事業」の取組みについてお聞かせください。

 

確実に命を守れるか、というのは不確定要素です。確実に命を守るには組織化が必要で、生存率を高めるための方法はルールづくりを通じて、しっかり目に見える形にしておきたいです。

ことなかれ主義の中で熱くなっても周囲からは浮いてしまうものです。出る杭が打たれる、ということがないよう活動者の励みになり、守ってくれるのが行政主導の事業の力だと思います。

ここは築42年。高齢化が進んでいますので何かあった時には高齢者がまず優先と考えています。マンションの構造上、水を運ぶのがとても大変で、高層階はまさに陸の孤島みたいなものですが、各々で1週間分備蓄をしていただくことがまず基本。水だけで1週間生き延びられます。

「マンションコミュニティ支援事業」では、早速防災講座を行い、現在、基本のルールづくりを進めています。防災講座は、女性理事のアイデアで非常食をお茶と共に嗜むというオリジナルのアレンジをし、普段顔を合わせない住民同士の交流につながったとして、参加者の方に好評でした。

全戸に配布するものとしては、安否確認を迅速に行うためのマグネットシートを作成し、防災のしおりと一緒にキット化して各戸に配布しようと思っています。住民が自身の被災状況を判断し、安否確認用マグネットシートをドアの裏に貼っておけば、救助活動の際にすぐに安否確認ができるので、迅速に次の行動ができます。

ここは分譲も賃貸もあり、コミュニティづくりの上では「温度差」が課題です。防災ということになれば、自然災害によって近しい人の死を経験した人、経験してない人とで危機意識は違います。経験していない人に実感が湧かないのは仕方ないのです。でも人間は薄情な生き物ではないということ、それは信じています。なにかあったら走る。絶対に何もしないわけがありません。

命が大事というフレーズは誰にも通じることです。自分の命をどう守るかということを各々が考えるきっかけになりますので、北区には背中を押していただき、助かっています。長い人生生きてきて、何もできずに死んでしまうというのは空しいものです。そうならないよう、この事業を機に今後も少しでも多くの住民の方々を巻き込んでいきたいです。