企業×市民活動 コラボのススメ内容

東大阪病院は昭和26年に開設。20床からスタートし、

外来診療のほか救急医療や在宅医療、リハビリテーションも

充実した総合病院として今年で67年目を迎えます。

初代院長の理念が脈々と引き継がれ、「地域の保健室」を

めざして長年地域医療に貢献しています。

今回は、6年前から地域活動協議会と連携して

病院内外での講座やイベントに取り組んでいる

企画部部長 安部慎吾さんにお話を伺いました。

 

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社会医療法人有隣会 東大阪病院

企画部部長 安部慎吾さん

<主な活動>

・乳がんセミナー、高齢者に向けた転倒防止の講座など健康に関する

講座やイベント実施

・応急手当訓練、避難所開設訓練など防災に関する講座や

イベント実施

・職場体験の受け入れ

・イベント時の救護班対応

 

地域活動協議会のニーズに応え、連携して健康・防災活動に取り組む

現在、どのような取り組みをされているかお聞かせください。

城東区には16の地域活動協議会があります。その中の3つの協議会、

聖賢地域、鯰江地域、成育地域と連携しながら、当院から派遣する

活動と受け入れる活動、双方に取り組んでいます。

例えば、「派遣する活動」としては、地域のイベント時に救護班を

出したり、防災訓練に参加、健康・防災に関する指導やイベントを

実施したりしています。具体的には、健康では乳がん、夏は熱中症や

食中毒に関する講座、冬や春先は高齢者の転倒が増えるので

転倒防止の講座など、ニーズを伺いながら季節にあったもの、

住民の役立つ情報を考えて出張ボランティア講座を主に

実施しています。「受け入れる活動」としては、中学や高校の

職場体験の生徒を受け入れており、今後の医療従事者を

育てる第一歩になれば、と思っています。

当院の側から声をかけて実施するケースもありますが、ほとんどは

地域活動協議会からのニーズに応えて対応させていただいています。

 

救護班派遣から始まった活動が口コミで広がる

地域の住民への講座やイベントを始められたきっかけ、

経緯を教えてください。

イベントの時にけが人や救護の必要があるので当院から救護班を

派遣してほしい、と聖賢地区の地域活動協議会から声をかけて

いただい、のがきっかけです。その後、地域活動協議会の活動の

ひとつとして、講演のご依頼もいただきました。地域活動協議会を

通して、このような活動について情報発信されると、ほかの地域からも

声がかかるようになり、口コミで広がっていきました。

現在では鯰江地区、成育地区の地域活動協議会とも連携させて

いただいています。ひとつの地区のご縁から始まり、今では「医療に

とどまらず、介護・福祉・健康・防災面で永続的に地域社会に

貢献してほしい」というご要望をいただくようになりました。

 

住民の人口構成を考え、参加しやすい環境を提供する

城東区ならでは、東大阪病院ならではの活動の特徴や工夫があれば

お聞かせください。

当院のある地域は人口のわりには病院が少なく、連携している

聖賢地域、鯰江地域、成育地域の3地域の人口構成をみると、

国の平均とは違い、若年世代、30~40代と65~80代が

多いのです。つまり働き盛りの人が多く、特に鯰江地区には

大規模マンションがあることから、小さい子供や小中学生も

日本の平均よりも多く、その祖父母世代も多くなっています。

ですから、子供連れでも、親や祖父母が安心して健康講座に

参加したりトレーニングをしたりできるよう工夫をしています。、

安たとえば、射的や輪投げコーナー。トランポリンなど、

子供が退屈しないコーナー作りや当院の取引先企業には

社会貢献としてご協力を仰ぎ、来場記念のお土産を用意して

いただくなど、、本当に伝えたい年代の方に来ていただけるよう、

参加しやすい仕掛けを大切にしています。

 

継続した活動が住民の健康・防災意識を高める

昨年度は講座やイベントを21回実施されたとのことですが、

実績と手ごたえについてお聞かせください。

6年前に救護班としてお手伝いさせていただいたのが活動の

スタートですが、昨年度は職員延べ120名に協力してもらい、

21回の講座やイベントを実施、その参加者数は延べ9,300人にも

なりました。3地区合わせて人口が約4万人ですから、9,300人という

数字は大きいと思います。

いろいろな種類のイベントに関わっていますが、聖賢地区の

音楽文化祭では、認知症予防体操や、骨折する方が多いので

100歳体操を取り入れるなど、予防に着目したものも行っていますし、

祖父母世代に向けた転倒・転落予防の講座は大好評でした。

また、マンションとコラボレーションする取り組みでは20人の

職員に協力してもらい、300人規模の一大イベント「タイムズピース

スクエア健康祭り」を実施しました。秋からは防災訓練が増えますが

1,000人規模になります。人気の出張「骨密度測定会」はすでに

2020年まで予約が入っています。

活動を続けてきたことで参加者も増え、地域住民の健康に関する

興味や関心が高まってきたことも実感しています。例えば、ある

女性部会から依頼があったのは,薬とサプリメントの扱い方についての

講座ですが、「薬とサプリメントを一緒に飲んでいいのか、副作用は

ないのか」「常備薬との相性や漢方との相性や食べ物との関連は」など、

一歩踏み込んだ細かい質問がありました。信憑性はともかく、

テレビやネットで情報があふれている現在ですから、正確な情報を

求める姿勢に変わってきています。意識が高まった結果、知りたい内容が

変わってきているのだと思います。

地域活動協議会の方々も少しでも地域のみなさんの役にたつようにと

動いてくださっていますし、みなさんの意識も、昔とは違って随分高まって

いるとを感じています。また、地域活動協議会以外の団体からも、

講座やイベントをやってほしいという声が増えてきました。一歩踏み出して

実施したことが、徐々に成果を出していると思います。

 

医療の変化に合わせて病院も変化していく

地域に病院が少ない中で、治療以外の地域活動を通して

予防に力を入れているのでしょうか?

ここ5年くらいで病院のあり方が変わってきました。医療は『予防医療』、

『来院治療』、『在宅医療』の3つに分けられるのですが、医療費削減の

ためにも『予防医療』と『在宅医療』にシフトしていくよう、国の方針が

変わってきています。『来院治療』の前と後ろに比重をかけるという

方向性ですので、病院の存在意義も変わらざるを得ません。

予防を全面的にバックアップしていかねばならないと考えています。

病気にならないのはもちろん、これ以上悪くならないように心がけることや

そのための知識を提供する必要性が高まっているのですが、

先の薬とサプリメントのように、情報はすぐに使えるもの、

実際に手に入るもので、実例をあげての説明が求められるように

なりました。医療への考え方の変化に応じた指導や講座内容、

テーマ設定の必要性を感じています。

 

救護=救急 医療=搬送後の治療 病院が防災のためにできることは何かを自問する

活動を続けてこられて、課題と感じておられることはありますか?

ひとつは防災の取り組みです。健康と同じく防災はとても重要で、

必須ともいえる時代ですが、病院が防災の取り組みでできることは

何か、非常に難しく奥が深いと感じています。病院でできることは

基本的には医療ですので、運ばれて来られたり来院されたりして

始まり、救護でできることは、救急で事故などの現場の初期対応、

専門治療の前のところまでです。つまり、救急隊がすることと病院が

することは違うのですが、その理解が進まないのが現状です。

例えば三角巾の結び方や添え木の仕方は知らないより知っている方が

いいですし、病院でも教えることはできます。が、毎年繰り返し

やるものでもないですし、救護が主ではない病院が教える中身の限界も

あります。一般の方がもたれている病院像と実際にやっていること、

やるべきことのギャップがあり、防災の講座やイベントで病院ができる

説明は限られていて難しい面があります。

病院として伝えるべきことは何かを自問しながらで、防災の取り組みに

ついてはまだまだ達成感は感じられせん。先日の水害のような救急の

場面でも、すぐに使える情報をお伝えしたいのですが、すべての要望に

お応えすることは容易ではありません。大きな課題です。

もうひとつは、実施体制です。ニーズに応えるため、時間がタイトな中で

人員を検討して体制を整え、外部との調整を進め、臨機応変に対応して

いかなければなりません。

告知も課題で、マンションでの実施は集客の不安はほぼないですが、

他の地区や公民館を使うイベントは苦戦することも多く、よい講演内容でも

参加者が少ないこともありました。戸建て住宅には回覧板、マンションなど

集合住宅には掲示板での告知が中心で、高齢者には回覧板が有効ですが、

SNSを使った告知は難しいです。コミュニケーションをした数だけ人が

来ますので、年齢や居住地区に合わせた告知が必要だと感じています。

 

「地域の保健室」をめざして…創始者の理念が職員を突き動かす

今後のチャレンジについてお聞かせください。

より多くの人に参加いただけるように、という視点で取り組んでいきます。

ひとつは、同じテーマでも居住地区によって開催を複数に分けることです。

例えば、マンションとのコラボレーションは成功事例の一つですが、

そこには戸建て住宅の住民や独居の高齢者は参加しにくいので、

参加しやすい場所や時間など、細やかに考えていきたいと思います。

場所も重要な要素です。病院内で実施すると、どうしてもリピーターが

多くなり、新しい参加者が増えないので、病院外での実施が有効と

考えています。今後ニーズが増えた時には職員の配置も含めて検討が

必要ですが、できるだけニーズに応えていきたいと思います。

当院の理念は「地域社会との共存・共栄」です。今年で開院67年目を

迎えますが、創始者の思いである「地域住民の健康を支援することで

地域社会に貢献する」という理念を職員が引き継いできました。

これからも「町のお医者さん、赤ひげ先生」として地域医療に取り組む

とともに、地域のニーズに積極的に応えられる「地域の保健室」を

めざしていくことが我々のミッションと思っています。

一人でも多くの地域住民の方に参加いただける活動を継続し、

広げていく、その我々の活動によって、城東区全体に健康意識が

高まり、さらにそれを広げるためのサポートになれば・・・、

ぜひそうありたいと願ってこれからも頑張りたいと思います。