企業×市民活動 コラボのススメ内容

かつて阪神工業地帯として発展し、時代の変遷とともに、まちの姿も住む人も変化し続ける西淀川区が掲げる課題のひとつが「まちのリノベーション(再生)」。リノベーションとアートで、街を活性化する「みてアート」 実行委員会のキーパーソンのおひとり、多田 修さんにお話を伺いました。

 

多田さん

 

みてアート実行委員会

委員長 多田 修さん

(株式会社マルモット 代表取締役)

 

<みてアート>

主催:みてアート実行委員会

共催:西淀川区地域振興会

後援:西淀川区役所

事務局:あおぞら財団

(公益財団法人公害地域再生センター)

 

地域の30近い事業者が特別協賛、協賛、協力など、この活動をサポートしています。

 

 

昨年は2日間で3,000人以上が集結!西淀川区がアートで盛り上がる

「みてアート」とはどのような取組みなのですが?概要をお聞かせください。

 

公益財団法人 公害地域再生センター(愛称:あおぞら財団)が事務局となり、さまざまな企業や団体が連携する実行委員会形式で開催している毎年恒例のまち歩きイベントです。

5年前にスタートし、今年で6回目ですが、年々動員数が増え、昨年は土・日の2日間で過去最高の約3,000人の動員数を記録しました。地域の人たちがアートで盛り上がるまつりとしてしっかり定着していると思います。

この「みてアートMAP」(ページ下部に掲載)の記載にあるように、メイン会場であるここ「もと歌島橋ターミナル」だけでなく、商店や事業所、施設、学校など、あちこちでアートの展示、音楽ライブ、パフォーマンス、ワークショップなど多彩なイベントが開催されていて、まちを巡りながら、改めて西淀川というまちと、まちに根付く人々の魅力を再発見してもらおうというねらいから、スタンプラリーで各所を繋いでいます。スタンプラリーを達成すれば景品と交換できる「お楽しみ」も用意していて、参加者の皆さんはとても楽しまれています。

 

 

西淀川区のリノベーション(再生)モデル地域をブルックリン「ブッシュウィック」にフォーカス

西淀川区を「アート」で盛り上げよう、ということになった動機は何ですか。

 

西淀川区は高度経済成長時代、阪神工業地帯として発展した歴史を持つ一方、「公害」の課題もありました。時代の変遷とともに、移転した工場の跡地などにマンションや一戸建ての住宅が建てられ、まちの姿はどんどん変わってきました。

新たな住民の方々と、昔からここで事業を行ってきたものづくり企業が「地域コミュニティ」という単位で繋がって、この地に暮らす子どもの未来について、共に考えられるまちに変えていけないか―リノベーション(再生)が必要なのではないか、という漠然とした思いを、立ち上げメンバーみんなが抱いていました。

そんな立ち上げメンバーの一人が、たまたまニューヨークブルックリン区にある小さなまち・ブッシュウィックを訪れました。

ブッシュウィックは特に観光名所もなく、治安が悪いまちだったのですが、まちのあちこちがアート化するイベント「ブッシュウイックコレクティブ」をきっかけに、アートのまちとして世界的に有名なまちに変わり、治安も良くなったそうです。西淀川区と似たような規模のまちで、西淀川のリノベーション(再生)を目的とするなら、具体的なモデルとしてブッシュウイックは最適ではないかと考えました。

イメージがあって、そこに理念をもっていけばわかりやすい、目に見える目標があった方がいいということで、5年前に「西淀川を10年でブッシュウィックに!」という目標を掲げました。

 

 

新たな客層の取り込みに成功。人気&新進気鋭のプロアーティストによる作品展実現で内容もさらにレベルアップ

今年の開催ですでに感じておられる手ごたえなど、ありますか。

 

ここの住民はファミリー層が多く、母親同士のネットワークを通じて定着してきた経緯がありますので、これまで参加者は親子連れが多数を占めていました。子どもたちも、自転車でやってきて、スタンプラリーやアートイベントを楽しんでいくといった感じでした。今年はそれに加えて「これまで来なかった層の人たちが来てくださって、層が厚くなった!」と実感できましたね。

というのは、今年はみてアート自体は土・日2日間だけですが、みてアートのメイン会場でもあるバスターミナル跡地を「御幣島芸術祭」と名乗り、アーティストたちの平日も含めた5日間開催とし、時間も21時まで延長しました。思った通り、会社帰りのサラリーマンやOL、ゆっくり一人でアートを鑑賞したい方など、今までにはない客層の方々が来場され、新たなニーズを確信できました。

またここ数年、みてアートとしての知名度は上がるものの、アートイベントと言いながらアート感がないのがジレンマでした。

“本物の芸術”に触れるには、本物のアーティストでなければ説得力がない、と考え、東京を拠点に活躍中の巨大絵本作家の山田龍太さんに総合ディレクターとして全権関わっていただきました。

今年は、山田さんのコーディネートのおかげで「みてアート」本部拠点の「御幣島芸術祭」として全国から65組のプロアーティストを招待して、「みてアート」としては初めての有料展示が実現しました。「これから来るぞ!来年バーン!と人気が出るぞ!」と思われる人気&新進気鋭のプロアーティストばかりです。

お金を払って本物のアートを鑑賞する、当たり前のことではあるのですが、価値あるものに触れる、本物に触れるという貴重な機会を地域の人たちに提供できたことは大きな成果です。

 

 

アーティストとものづくり企業とのWIN-WINな関係づくりやコラボレーション実現。「みてアート」がそんな出会いをつくる基盤となればいい

今後に向けての抱負やチャレンジなどについて、お聞かせください。

 

総合ディレクターの山田龍太さん曰く、単なる展覧会なら、アクセス面でも動員力面でも、アーティストにとっては東京開催の方が合理的だと思うのですが、あえてローカルな「西淀川」でするという意味を持たさないといけない。アーティストとものづくりのまち西淀の企業とのマッチングが大事だといいます。「みてアート」をきっかけに、若手アーティストとイノベーションを起こしたいものづくり企業のWIN-WINな関係性づくり、コラボレーション実現への橋渡しをしたいです。アーティストが、ものづくり企業の技術や製品に着目したり、ものづくり企業がアートに触発される、そんな出会いをつくる基盤となればいいですね。

また、子どもたちの未来を、私たち地域の大人が支えていきたいです。

今年8月に開催された「西淀川ものづくりまつり」では、山田龍太さんが巨大段ボールアートのワークショップをされて、大きな反響がありました。「アート」と「ものづくり技術」。入口は違っても、体験を通じて、感受性を育み、ものづくりの楽しさを体感・理解するという点では、交わる先は同じなのかもしれません。

目標としているブッシュウィックとは、いずれは姉妹都市協定が実現できれば夢はひろがりますよね。通常の姉妹都市協定は「政令指定都市単位」ですので、区単位では前例がありません。残り5年後には西淀川区を日本のブッシュウィックにしたいです。

 

ペイント ペイント2

西淀川区のマスコットキャラクター「に~よん」がたくさんちりばめられた地元高校生のアートです。

西淀川区を上から見るとクジラの形をしているそうです。

 

段ボールアート2 ペイント3

メイン会場の「もと歌島橋バスターミナル」は地域イベントなどで活用される有効なスペースですが、普段は暗いイメージ。そのリノベーションとして、西淀川区の新たなシンボルとしての文化財を創っているとのことでした。今後、ここで行われるイベントでは常設展示として鑑賞も楽しめる仕掛けです。

 

段ボールアート 寅貝さんアート1

「ワクワクをカタチに」を掲げる山田龍太さんの巨大絵本。ワークショップ参加の子どもたちとともに創るアートです。

写真家 寅貝真知子さんの作品。写真家ならではの鋭い視点から、これまでにない新しい視覚効果で表現する「ローレフォト」を考案。

 

安東さんアート 漫画展

スーパーハンコアート作家 安東和之さんの作品。よ~く近づいて改めて鑑賞してビックリ!陰影など、ハンコの密度で調整するまさに匠の技。

新人漫画家21人の書き下ろし漫画を展示。漫画好きなら知る人ぞ知る「トキワ荘」の仕事部屋を再現したセットもありました。

 

工作 足湯

西淀川区社会福祉協議会のある在宅サービスセンター “ふくふく”では、にしよどリンクの主催による「にしよどリンク番外編」を実施。工作を楽しみ、足湯でほっこり。

 

みてアートガイド1 みてアートガイド2

32ページにわたるガイドブックを配布。参加者の皆さんは、これを手にしてまち歩きを楽しみます。