企業×市民活動 コラボのススメ内容

グローバル化の進展、IT化など、急速な社会の変化。日本独自のシステムに守られていた日本の農業もこれからは市場経済の波にのまれる―そんな時代を生き抜く強い農業・農家とは?

「農楽(のら)マッチ勉強会」の理事長  山本 文則さんにお話を伺いました。

 

掲載写真

NPO法人 農楽マッチ勉強会

理事長 山本 文則さん

 

<農楽マッチ勉強会>

  • セミナーやイベントを通じて国民の農業への

関心を高める

  • 農家に対して、コンサルティングや経営情報等

の発信を行う

  • 補助金や助成金等、農家にとって有益な情報を

提供し取得を支援する

  • WEBを利用したブランディングや顧客開拓を

支援する

  • 農産物の生産や加工に有意義な技術や企業とのマッチングを支援する

6.農作業をフォローする人材や手段を案内する

7.新規就農者や農業参入企業を支援する

 

農業を学ぶ・農業を楽しむ・農業でつながる勉強会や体感イベントを開催

「農楽マッチ勉強会」ではどのような活動をされているのか、お聞かせください。

 

私たち農楽マッチ勉強会では、農業や食に関心の高い方々への学びの提供や農家の支援を目的に、勉強会やイベントを開催しています。

1つめは、大阪・梅田で毎月第3日曜日に開催している定期勉強会で、私たちの活動の大きな柱です。

農業の面白さ、可能性についての理解促進を目的に、最新の農業技術やこれまでになかった農業アイデアなど、ユニークな実践をされている農家の方々を講師としてお招きし、農業に対する思いや、就農の経緯、農業の現場などを語っていただきます。農家の方にはとても熱い思いがあるのですが、なかなか多くの人の前で話す機会もないと思いますので、ご自身の農業に関するさまざまなチャレンジをプレゼンテーションできるいい機会にもなっているのではないかと考えています。

参加者層はさまざまですね。すでに農業をやっている方、これから農業をやってみようと思っている方、農家とつながりたい小売業界の方もいらっしゃいます。幅広い年齢の方々が集まってくださいますが、勉強会の参加者に若い女性の方が増えています。

2つめは、座学ではない、体感イベントです。「生産者が栽培した農作物を食べよう!」というコンセプトでレストランを借りて、美味しい料理を食べながら生産者と野菜に関する会話を楽しむ「おいしい会」という催しや、春と秋の年に2回、公園を利用したマルシェ&バーベキューの「ぱくべジマルシェ」を実施しています。体感ものとしては、農作業体験や農作業ボランティアのコーディネートもしています。

大阪の定期勉強会は任意団体だった頃の6年前から始めて以来、継続的に続いていて実施回数は74回を数えます。おかげさまで定期勉強会はいつも盛況で、毎回30〜40人ほどの参加者がいらっしゃいます。知り合いが知り合いを呼び、毎回、新規参加者も増えています。東京でも2回ほど開催しており、今後は3か月に1回のスパンでの開催を計画していますので、活動がどんどん広がってきていると実感しています。

他の農業系のNPOとコラボすることもあります。3か月ほど前に、京都のNPOと共催で京都の大学を借りてセミナーを行い、たくさんの大学生が参加してくれました。こうしたさまざまな活動を通じて、感じるのは現に新規に農業をやりたいという就農希望者は増えているということ。特に女性の方が新規就農者は増えていますよ。女性の方が農業にハマっているように見受けられます。でも実際は昔から「おばあちゃん農業」とよばれているように、地方へ行けばいくほど農業を支えているのは女性なのです。なかなか農地を借りられなくて農業ができないという現状もありますが、企業の農業参入も増加傾向です。

 

10年後の農業を見据えて―農家に求められるイノベーション

「農楽マッチ勉強会」の活動へのこだわり、ポリシーについてお聞かせください。

 

私たちは、有機農業などいわゆる農法や技術にこだわっているのではなく、どちらかといえば経営に重きを置いています。農家の方々に儲かってもらいたいのです。農家がマネジメントできる力をつけ、そのために新しい技術を導入して効率化を進めるという点を推し進めたいです。あと野菜1つにどれだけの付加価値をつけるか、プロデュースや販売戦略も大事ですね。農家でありながら面白い売り方ができるというアイデア。

なぜこういう考えを持っているかというと、「十年後の農業」を見据えてのことなのです。

ひと昔前の農家というのは、あまり表には出てこない閉鎖的なイメージがありましたが、今の農家はJAを通さずに直売をしていくところも増えています。そうなると経営も勉強する必要が出てきます。農業界は変わりつつあります。但し、一概にそれがいいというわけでなく、そこは地域性や農家の事情もあり、例えば地方へいくとJAの重要性が高いところもあります。

これからは「生産」に加えて「販売」が非常に重要になってきます。

たとえば、農業の第1次産業と食品加工業の第2次産業、商業・サービス業の第3次産業、これらを掛け合わせて第1次×第2次×第3次=6次産業となるのですが、これは農家の方が自分で生産した農産物を加工して販売するまでワンストップで行うということを意味します。私は「6次産業化プランナー」という資格も持っているので、6次産業化をめざす農家に対して、国からの派遣ということで、農家の方のところへ出向いてコンサルティングを行っています。

農家も独立し、経営をしていく力が必要になってきました。私たちもそこを支援していきたいのです。農業というのは急激には伸びませんが、胃袋に直結していますからコンスタントに伸びていきます。今も関わりのある若手の農家たちは、年々規模が大きくなっていっています。農楽マッチ勉強会の副理事長の一人古池和弘税理士は、経理が不得意な農家の経営をみてくれています。彼が担当した農家は続々と業績を伸ばし、彼は「農業に強い税理士」として、たくさんの農家の方々から信頼されています。

農楽マッチ勉強会には、他にもメンバーが活躍していますし、若いながら会社経営をしつつ、新たに自分で農業を始めた名倉昂佑理事もいます。

 

継がなかった農家。その後のキャリアを経て考え始めた「儲かる農業」

農業に力を注がれることとなったきっかけについてお聞かせください。

 

私は山口県の農家の生まれで、農家の跡取りです。しかし実家の農家を継がず、一般企業に就職して働き始めました。その間に、中小企業診断士の資格を修得しました。

当時、実家の農家を継がなかった理由として「農業では食えない」という思い込みがあったためです。

だから実家の農業を継がなかったのですが、そういう農家は実際に多いのではないか?

農家が儲かる仕組みを手に入れたら、子どもが跡を継ぐ選択肢を広げられるのではないか。

若い人たちが新しいやり方で農業を継いだらもっと農業が活性化していくのではないか。

「儲かる農業をやってみたい、どのようにしたら農業は儲かるのだろう」、「農家の方々とつながりたい、儲かるように支援していきたい」という思いが強まっていきました。

「儲かる農業」という考えに至ったのはやはり中小企業診断士としての資格や、企業に勤め、積み上げたさまざまな経験もあってのことだったと思います。

まずは自分のために自主的な勉強を始め、もう少し裾野を広げてみようということで、「農業はやっていないが、少し興味のある方」を募った定期勉強会を行うこととなり、現在に至ります。定期勉強会を続けて、一定のニーズが見込めると判断し、5年前にNPO法人化しました。

「農楽(のら)」つまり農業を楽しくマッチングさせようとスタートした会ですが、そのネーミング通りに定期勉強会参加者同士のビジネスが成立していることもあるようです。そちらはご自由にお任せしており、特に介入していませんが、ここからさまざまな新しい縁が広がっていくのは嬉しいことです。

 

めざすところは教育―日本の農業の進化・発展に貢献したい

今後のチャレンジについて、お聞かせください。

 

定期勉強会やイベントの開催以外のところでは、国などの補助事業の受託があります。平成26〜28年の3年間で農林水産省の援農隊マッチング支援事業を受託した実績があります。この事業は、農家に人手が足りない時にボランティアスタッフやアルバイトを紹介するという内容でした。また、平成29年は経済産業省の農商工連携促進事業の近畿広域実施機関にも採択されました。この事業は、農家と商業をマッチングさせるという事業でした。いろいろ補助事業をやってきた関係上、さまざまな情報にはアンテナを張っていますが、農家の方が農業の他にマーケティングから財務などの経営を学んで農業を活性化しようという動きが実際にあります。

チャレンジするなら、私たちのようなNPOがめざすところは、やはり「教育」です。

私たちの強みを活かせると思いますので、将来的には農家の方に経営を学んでいただけるような自主事業を行いたいと考えています。

農業に興味を持った方からよく「農業って儲かりますか」と聞かれることがあるのですが、儲かるか儲からないかは人の基準によってまちまちですから一概には答えようがないのですが、「チャンスはあります」とは言います。製造業は海外へ工場が移転して産業の空洞化が起こっていますが、農業はまだ国内での戦いで、やり方によっていくらでも伸びていきます。若手の農家でゼロから始めて毎年1億ずつ売り上げを伸ばして8億ほどになったところもあります。それが経営の力を付けた農家の強さです。

私たちは経営に強い農家となるための育成支援を通じて、農家の方々の抱えるさまざまな課題解決につなげ、日本の農業の進化・発展に貢献したいです。