昭和12年創業以降長きにわたり生野区に根差して事業活動をされてきた木村工務店。

こだわりの家づくりのスタイルは、「コトバを重ね 紡ぐ暮らし 住まいに宿るクラフト

マンシップ」。

企業としてのそのポリシーにも通じる、生野区持続可能なまちづくり活動支援事業の

ひとつである「まちのえんがわ」のキーパーソン、代表取締役社長 木村貴一さんに

お話を伺いました。

 

 

無題

 株式会社木村工務店

 代表取締役社長 木村 貴一さん

 <事業内容>

 ・各種建築工事の総合請負

 ・企画・設計・監理

 ・建築資材の販売施工

 

 リフォーム・新築注文住宅・建築家との協働を主力に

 店舗・工場事務所・集合住宅を少数手がける。

 

              木村貴一さんは平成14年、社長就任前にテレビ番組「大

              改造劇的ビフォーアフター」に匠として出演される等、

              住む人の気持ちに寄り添った、家づくりへの深いこだ

              わりがうかがえる。

              平成23年12月、木村工務店1階に企業が持つコミュニティ

              スペースとしての縁側「まちのえんがわ」をオープン。

              

 

地元企業が取り組むまちづくり活動を進める中で生まれた「空き家カフェプロジェクト」

『空き家カフェプロジェクト』の活動に取り組まれたきっかけは何ですか。

 空き家カフェは、「まちのえんがわ」という、まちづくり活動を進める中で派生した活動です。

 「まちのえんがわ※」は、事業所の中に家の縁側という機能を持たせたらどうなるだろう?という

発想がきっかけで始めた活動です。住宅の縁側は近所の人との集いの場になるものです。

それを事業所に設けて、地元企業ならではの地域にひらいたオープンカンパニーにしたいと考えました。

 具体的な活動としては、加工場でのものづくりワークショップ開催や、毎月1回の空き家カフェの

開催などを行っています。もともと社会活動の一環で行っていたことですが、3年前、生野区が事業認定制度・持続可能なまちづくり活動支援事業という施策を立ち上げた時に、「まちのえんがわ」が第一回目の事業として認定いただいたことで、行政と連携することになりました。

 自分の住むまちをすこしでも良くしたい…そんな軽い気持ちで始めたのが空き家カフェです。

 

※まちのえんがわ(平成27年 第1回生野区持続可能なまちづくり活動支援事業に認定)

「縁側」という内と外をつなぐ日本の伝統的建築手法を用い、コミュニティスペースの役割やものづくりワークショップで集客によってまちを活性化させ、また、まちにひらき、まちのひととのコミュニケーションを創発し、まちの内と外のひとをつなぐハブ機能となりながら新たなコミュニケーションを創造する取組みを実施。

 

まちのえんがわスペースでの生野区とのラフな意見交換から、空き家問題を知った

空き家カフェは生野区の地域課題にある空き家問題を解決するために始められたのですか。

 空き家問題解決のために行政の役に立ちたい!とか、そんな大層なことを考えていたわけでは

ありません。自分はこの生野の地に小さいころからずっと住んでいますし、ここで企業活動も

しています。先ほども言ったように、自分の住むまちは良くしていきたいくらいの感覚です。

 「まちのえんがわ」が持続可能なまちづくり活動支援事業として認定され、当時の生野区役所の

担当の方々とラフな話し合いを定期的に行っていた際、生野区が抱えている課題のひとつに空き家

問題があると知りました。

 自分が建築に関わる仕事をしているという立ち位置もあり、空き家をキーに人と人が出会い、

定期的に集い、考える場を作ろうと考えて、空き家カフェが始まりました。空き家に関わる

さまざまな立場の人たちがゆるやかに集まってラフな会話を通じて様々な意見が出てくる中で、

いつか何か形になればいいなというくらいの軽い気持ちでスタートしました。

 空き家をテーマにしたことで、家に関わるいろいろな関係者、例えば空き家のオーナーや

不動産関係、建築関係、リフォーム関係、空き家活用に興味がある人など、関心や知識や技能を

持った様々な人が毎月19日の「いくのの日」に集まっています。

 

 

空き家カフェ定期開催を実現可能なものへと後押しした毎月19日の「いくのの日」

「いくのの日」に定例開催することになったプロセスを詳しくお聞かせください。

 空き家カフェを続けるうえでこだわったのは、日時や開催場所を定例化すること。人の記憶に

予定が刷り込まれることでゆるやかにつながっていくことに意味があると思います。

 「まちのえんがわ」が持続可能なまちづくり事業に認定された年には、他にも認定された事業が

あり、そのひとつに「いくのの日・わがまちセレクション※」という事業があったのです。

 定期開催をするなら「いくのの日」である毎月19日にしてはどうか、と区役所の方から

提案され、「空き家カフェは、いくのの日の毎月19日に開催」ということに決めて実施し、

明日の5月19日開催で18回目を数えます。

 

※いくのの日・わがまちセレクション(平成27年第1回生野区持続可能なまちづくり活動支援事業に認定)

町工場の見学会や商店の特売日など、生野区内で行われているまちを盛り上げる活動を「いくのの日」の参画事業として認定し、旗を配布し、毎月19日の「いくのの日」を軸に、それら一つ一つの取組みをつなぎ合わせることで、まち全体を取り上げていく取組み

 

持続可能なまちづくり活動を行政が支援するという枠組みをつくったユニークな生野区

事業連携をされたわけですね。生野区という行政についてどのような印象を持っておられますか。

 生野区持続可能なまちづくり活動支援事業というひとつの枠組みを作ったというのが生野区の

面白い所だと思います。行政との連携事業として関わらなければ、行政とここまで良い関係が

できなかったし、継続、発展はできませんでした。

 その当時の生野区の方々には、本当によい働きかけをしていただき、今もいい関係性が持てて

いると思います。

 

空き家に住みたい「ひとりの人」のために…空き家活用プロジェクト発足と事例の誕生へ

これまでの活動が発展したり、他に波及している実感や事例等はありますか。

 まちのえんがわ事業がきっかけとなり、生野区役所の事業として「空き家コンペ」という取組みが実施されました。具体的な空き家を2軒題材として案件を提示し、その活用アイデアを地域から募るというものです。私は2軒のうちの1軒の長屋の案件を提供しました。

 色んなアイデアが出てきました。もちろん、空き家についてのアイデアが良ければ、空き家を埋めるきっかけになるかもしれません。しかし私の見解では、アイデアコンペは潤滑油的な役割で、アイデアの実現性よりもみんなが空き家に意識を持ったり、興味・関心を持つきっかけとしての位置づけだったように思います。

 でも結果的には2軒のうち、私が提供した案件でない方の空き家に生野区の色んな活動をしている人がリフォームをして住みたいということになり、建築面からのアドバイス、リフォームについてのアドバイス、不動産面からのアドバイス、お金のアドバイス、もちろん行政も絡んで様々な人たちが、空き家に住みたいひとりの人のために、集い、活発な意見交換をしました。

 こうして空き家活用プロジェクトの1件目の完成事例「まちのえんがわ 橋爪事務所」が出来ま

した。

 あと最近、もう2件、別の実例が出来ています。

 

お互いが寄り添いながらつながる。人と人との活きた交流が大切

空き家カフェの定期的な集まりの中でいろいろ話が膨らみ、つながり、空き家問題をひとつ解消したことになりますね。うまくつながったのか、つながるべくしてつながったのか、どちらだと思いますか?

 もともと空き家コンペだけで終わるつもりはありませんでしたが、コンペのアイデアが必ずしも

すぐに活かされたというわけではありませんし、流れに任せ、今の形が出来てきたという感じです。

 こうした実例に携わって感じることは、どんな課題であっても、人と人が出会い、人と人で解決

していくものということです。空き家問題はさまざまな人がステークホルダーとして関わることを

理解したうえで、集い自由に意見交換をする場を持つことも空き家問題解消のひとつの手立てに

なると思います。

 空き家を借りたい人と貸したい人を中心に生野区の建築家チーム、不動産コンサルタント、

行政等、さまざまな立場にある人たちみんなで考える。お互いが寄り添いながらつながって

いくこと、人と人との活きた交流が大切だと思います。

 

事例が人と人をつなぎ、そこからまた新しい事例が生まれる「つながりの連鎖」

他の団体や行政支援団体等、連携・協働されている事例はありますか。

 先ほどお話した「まちのえんがわ 橋爪事務所」が完成した際、お披露目を兼ねて、他のNPO「生野区の空き地・空き家を利用した食と農のプロジェクトをすすめる会」との合同開催を実施し

ました。

 これに参加された方から、空き家を活用して不登校の子どものためのヨガ教室を開きたいというご相談があったのです。

 その後、その方の思いやニーズを空き家カフェで共有、2件目の空き家活用プロジェクトが立ち上がり、チーム一丸となって改装やリフォームを手掛けました。

 連携・協働と言うより、集う機会を通じて人と人とがつながって、新しい事例が生まれたということですね。

 

今までやってきたことのフィードバックとシェアも意識することが大切

今後に向け、どのように先を見据えていらっしゃいますか。

 「流れるままに」です。ここまでやってきて実績も出来ましたが、今までやってきたことを

何かの機会にフィードバックしていく作業をし、みんなにシェアをすることが大切と最近思い

始めています。

 自分たちだけで楽しんでいるだけでは続かないと思いますので、意識して今後も活動を行って

いきます。

 

④えんがわスペース まちのえんがわスペース

 気兼ねなくくつろげる憩いの空間。

 蔵書も美しくセンスが感じられます。

 

 地域の子どもたちにも人気。

 取材日前日も、女子高生たちがやってきて

 おしゃべりを楽しんでいたそうです。

 

 

 

——————————————————————————–

【現場レポート:第18回空き家カフェに参加しました!】

 企業、NPO団体、地域の方々、行政等が集い、30名近くの方が参加され、活気ある集いと

なりました。

 空き家の改装の事例発表を映像を通じてわかりやすくプレゼンテーションされ、空き家を

活用された方から、なぜ住みたくなったのか、動機や思いを熱く語ってくださる場面もあり、

大いに盛り上がりました。また、どの参加者の方も深い相槌でコミュニケーションを取り、

笑顔を絶やさず、とても温かく居心地の良い空間でした。

生野区の空き家物件に興味がある方はぜひ参加されてみてはいかがでしょうか。

毎月19日・いくのの日です!

 

④空き家カフェ2 ④空き家カフェ1