企業×市民活動 コラボのススメ内容

かつてまちの商店、喫茶店、居酒屋には「居場所」としての役割や「温もり」が

ありました。しかし社会の変化と共に、そうした古き良き文化は失われつつ

あります。そんな中、梅田中崎町JR高架下に温かい灯りが灯る情景を蘇らせた

「旬菜鮮魚てつたろう」。「家族愛」をテーマにした「居場所」の創造を

ビジョンに社会課題解決を目指すオーナーの柳川 誉之さんにお話を伺いました。

 

てつたろう3

 旬菜鮮魚てつたろう

 オーナー 柳川 誉之さん

 

 株式会社フォーシックス

 代表取締役/CEO)

 

 旬の野菜と鮮魚、美味しいお酒を提供するてつたろう。地域の居場所として存在し続けることへの強いこだわりがあります。

“大阪を変える100人”会議メンバー。

さまざまな団体や企業と連携し、社会課題
解決に取り組まれています。また、寄付を
                 はじめ、交流ができる場所の提供などを
                 通じて市民活動団体の活動支援にも積極的に
                 取組まれています。

  <貸しスペース>

  14:00~17:00の間、店の一部を無料(お一人につきウーロン茶1杯

  サービス付)で貸出されています。

 

 

居酒屋業界では難しいと言われている障がい者雇用を実現した「てつたろう」

『てつたろう』の行う社会課題解決への取組みと成果についてお聞かせください。

 

【受賞ロゴ】インクルージョン

 

 てつたろうは家族愛をテーマに居場所を創造することをコンセプトとしていますが、この「家族愛」というのは血のつながりだけではありません。社員はもちろん家族、社員の家族も、絆ができて家族になる、大きな枠組みの家族という考え方が根底にあります。だから様々な事情を抱える人たちの「働きたい」思いを実現するために、まずは障がい者雇用から始めました。実は、居酒屋という業態は、障がい者を雇用するには業務が複雑すぎて難しいと考えられていました。そこで障がい者が働ける仕事を分析することから始めました。10分単位で業務を切り出し、障がいのある方でもできる業務だけを組み合わせ、その方の個性にあったスケジュールを作成しました。それでも最初はスタッフとの連携がすぐにできたわけではありませんが、スタッフにも会社の考えやその方の個性を理解してもらい、スケジュールを共有することで、業務の分担がスムーズにできるようになりました。障がいを持つ方の雇用により、スタッフにも良い影響がありました。通常なら、雑なコミュニケーションでも何となく通じてしまうやり取りや仕事の指示が、障がいを持った方といっしょに働く中では通じません。相手の特性や個性を知り、相手に理解できる丁寧な伝え方やコミュニケーションの工夫が必要になるのです。

 例えば「そこにあるグラスを除けて」という指示から、「その机の右側にあるグラスを、10cmくらい左側にずらしてください」など具体的で丁寧なコミュニケーションの必要性に気づき、それが当たり前にできるようになったのです。こうして学んだ丁寧なコミュニケーションは、もちろん接客にも役立ちますので、スタッフのモチベーションアップにもつながります。こういった取組みから、「人には障がい、欠点があって当然だ」という風土ができました。従業員みんなが、新しく入ってくる人の出生や環境にこだわらなくなり、ホームレス支援団体と連携し、ホームレスの方の雇用にもつながりました。そうした活動を積み重ね、一般財団法人日本次世代企業普及機構主宰の第3回ホワイト企業アワードで、障害者雇用等を促進していくことによって、強みを生かし合う先進的な取り組みを評するインクルージョン部門を受賞しました。

 

さまざまな境遇に置かれた子どもたち、生きづらいと感じている次世代を応援

他の団体などとの連携されている事例などがあればお聞かせください。

 

 私は、高校時代に誰とどのように過ごすかで人生は大きく変わると考えています。そのため、不登校等で中退した若者の雇用にも非常に力を入れています。また、高校中退の経歴を持つ従業員をキャリア教育の講師として通信制高校に派遣するという教育支援を行っています。生徒たちと同じように悩み、それを乗り越えた先輩からの言葉は理解しやすかったようで、生徒からも教員からも高い評価を受けました。引きこもりの高校生支援、カンボジア教育支援、病児保育などさまざまな支援団体へのご支援や活動連携を行っています。

 “大阪を変える” 100人会議のメンバーであるNPO法人JAEとも連携しています。里親制度にも強い関心があり、関連団体と連携しています。これは、てつたろうのコンセプトである「家族愛」が示す、家族は血縁だけを指すのではないという考えがあるからです。

 

心のバリアフリーという概念。心と心がうまく行き来できるような世の中にしたい

多様な人たちの積極的雇用を後押しする柳川社長の原点は何なのでしょう。

 

 心の貧困=なにもかも区切りすぎの世の中になっていないでしょうか?と世に問いたいですね。カテゴライズするとむしろ無理がある世の中だと思います。分けないで多様なものを全てフラットにすること、心のバリアフリーという概念、つまり心と心がうまく行き来できるような世の中にしたいです。万物はどんどん分解していくと素粒子とか分子になります。物理学レベルで見ると、みんな同じなのです。だから関わる人はみんな家族という概念のもと、住みよいまち、働きやすい環境、誰もが認め合える社会をつくることに少しでも貢献し、生きづらい世の中に悲観して命を絶ってしまう人を減らしたいと思っています。

 

地域の居場所となるスペースと居酒屋ならではの提供資源を持っている強みを

活かしたサービスを検討中です。

 

今後のチャレンジについてお聞かせください。

 子育ては、親だけではなく、地域も関われる、助けられるということをはっきり示せたらと思っています。「子ども食堂」程ではありませんが、地域の居場所となるスペースと居酒屋ならではの提供資源を持っている強みを活かし、17~18時の時間帯、子どもたちに食事を無償で提供したいと考えています。私は、両親が共働きで忙しかったため、近所の中華屋のご主人に、しょっちゅうチャーハンを食べさせてもらいました。お腹がすいてお店に行ったもののお金を持っていないから入れない。店の外でウロウロするだけ…。でもご主人が明るく大きな声で「お腹すいてんか?」といつも中に呼んでくれたんですね。そのお店の扉はすりガラスで、影の形や大きさでご主人は私が来たとわかっていたのです。これは生涯忘れられない、感謝してもしきれない体験です。私たちが向き合うのは子どもです。どういう経緯で利用があるかはこだわらないつもりです。いろいろな問題も出てくるかもしれませんが、食事の無償提供は、利用条件などは一切作らない、区切らないことに決めました。どんな子どもも、利用してくれる子どもは、受け入れたいと考えています。

 

店名「てつたろう」とキャッチフレーズ「始まりの昔」に込められた思い

店内のメニューなどさまざまな所にメッセージが書かれていますが、

こだわりをお聞かせください。

 

 「てつたろう」というのは父の名前です。親が子を、子が親を殺めるなどという信じられない事件も少なくない世の中、自分たちのルーツをちゃんとわかっていますか?という気持ちを込めて、この店を始めました。まず、自身のルーツを意識することから始めましたが、最終的には「日本のルーツはなんだ?」ということに行き着き、神話で一番初めに生まれた島とされる淡路島の玉ねぎと塩を使う、ということを居酒屋としてのこだわりとしました。

 てつたろうのキャッチフレーズは「始まりの昔」です。正しくは「始まりは昔」という表現になるかもしれませんが、それでは時期が限定されてしまう気がして、日本語としておかしくても、あえて「それぞれの世代の昔」を感じてもらえたらと、このキャッチフレーズにしました。

 

信じたことを実践。一歩踏み出すことが大切

さまざまなことにチャレンジしておられる柳川社長の今後の展望について

お教えください。

 

 “大阪を変える100人”会議メンバーとして活動していますが、このたび、『公益資本主義推進協議会』の大阪支部 支部長を務めることとなりました。この協議会は、企業を社会的存在と捉え、株主の利益のみを優先するのではなく、社員とその家族・顧客・取引先・地域社会などステークホルダー全体への貢献(公益)を重視する資本主義を考える組織です。自分の信念、これまで行ってきたことが、さまざまな人や組織と繋がってゆき、当初は想定もしなかったようなネットワークにも参画することとなりました。ぜひ、これを読む皆さんにも、信じたことは実践する。その一歩を踏み出してほしいと思います。

 

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お父様の名前や若い頃の肖像が店名やキービ    店内にも提灯がたくさん。

ジュアルになっています。お父様に連れられて   梅田中崎町の高架下に温もりと灯りを―。

通った喫茶店や商店など柳川さんのまわりには   出店費用の一部にクラウドファンディングを

常に人の温もり優しさにあふれた「居場所」が   活用。リターンは提灯です。この提灯ひとつ

あちこちに存在していました。          ひとつに柳川さんの思いに賛同する多くの

                        人たちの思いが書き込まれています。