市民活動ワクワクレポート内容

港区のNPO法人南市岡すき屋根んは、安全安心のプラットフォームづくりをはじめ、幅広い事業を展開しています。いろいろな方とのふれあいからハブのような形で情報が入り、そこからまた新しい取り組みや事業が起こり、進化を続けています。理事長の松井信樹さんにお話を伺いました。 

 

 

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港区NPO法人南市岡すき屋根ん

(南市岡地域活動協議会)

理事長 松井信樹 さん

 

<主な活動>

防犯・防災、子ども・青少年、福祉、健康などに関する活動、コミュニティビジネス

 

自立してレベルアップしたい…NPO法人化への道

NPO法人化をされたきっかけについてお聞かせください。

 平成26年度に「いきいき放課後事業」に公募し、受託できました。公募にあたって、「NPO法人緑・ふれあいの家」の久木さんにご相談させていただいてご縁ができました。残念ながら平成30年度は、延長保育の対応を十分に組み込まなかった事で採択されませんでした。

 地域のために魅力的な活動をしたい、という思いが強くありましたが、地域活動協議会で助成金のみで運営していると、助成金頼りになり助成金がないとできないことの言い訳になってしまいます。また、「ふれあい朝市」の取り組みをしようとした際には、任意団体では難しいということもあり、メガバンクとの取引、または消費税処理の関係においても、NPO法人化を目指しました。利益を出すことで協議会自体の活性化も図れ、意識も変わり活動のステージが変わります。利益を地域に還元し、目標である地域の安全安心のために、住民の誰もが生き生きと生活できるサポートができるように、と考えて、組織の自由独活を高めた多様性のある運営をするために法人化(NPO取得)の手続きをとりました。今後も、「緑・ふれあいの家」やほかのNPO法人をモデルに、意識を高め、情報共有や共同しながら我々もレベルアップしていきたいと思っています。

 

地域の安全安心のためのプラットフォームづくり

防災に力を入れているとのことですが、防災への取り組みについて聞かせてください。

 港区は土地が低く、特にこの地域は海抜マイナス1メートル程度ということもあり、以前から防災の意識は高い地区だと思いますが、私たちは「安全安心のプラットフォーム」をつくることをめざしています。港区では地震などの災害時に備え、一定量の備蓄は行っているようです。でもそれでは足りない。海抜が低いところと高いところは、被害の大きさが違うと思うのです。それで、平成27年1月に「ふれあい朝市」を始め、その収益で防災用品を買って、備蓄品を増強しようと考えました。水、アルファ米、簡易トイレや凝固剤、毛布、ブルーシートを買って備蓄しています。場所が足りなくなったので、倉庫も新たに買いました。防災のまちづくりをしっかりやっていくという基礎づくりができました。地域の人に安心してもらえる、地域の人の安全を守る、それが地域活動協議会の一番の目的です。これからも、住む人にとって生活を守るベースになる、「安心安全のプラットフォーム」の充実のために活動したいと考えています。

 

地域の情報を有益な形に… 社会福祉協議会や病院との連携による新たな取り組み

防災以外の取り組みについて具体的にお聞かせください。 

 社会福祉協議会とは密に連携して、情報や課題を共有しています。

 最初に取り組んだのは、南市岡の「マッピング作り」でした。配慮が必要な方、例えば、独居の高齢者、老々介護のお宅がどこにあるか、などが一目でわかるマップです。実は、地域の民生委員はそのような情報を把握していたのですが、民生委員は行政の管轄、ネットワーク委員は社会福祉協議会の管轄、と別組織からの委嘱を受けているため、情報共有がなされてなかったのです。実際には、地域の情報は、その地域全体で把握していないと、災害時には意味がありません。そこで、民生委員とネットワーク委員とが共同で、町会ごとの情報把握の地図を作り、この地区の9町会それぞれで担当を決めて、いざという時に役に立つよう、情報を各町会において定期的に更新しています。

 ほかには、4年前から「ふれあい朝市」といって、豚汁や炊きたてご飯などのフードコーナーや産地直送の野菜や果物、お米、海産品などを販売する活動を行っています。顔を合わせること、ふれあうことで安否確認や見守りにもつながりますし、顔の見える関係づくりで地域の絆も深まります。

 また、今年新たに「特定健診の受診促進」の活動を始めました。港区の統計では、特定健診の受診率は19.5%、平均寿命も短く、健康寿命も低く、平成26年度は24区の中で最下位でした。多くの人は、病気の治療のために病院には行くが、健診のためには行かないのです。病院の待合室に健診の案内を貼っているだけでは、なかなか受診につながらないため、「特定健診受診票を各家庭に配らせてほしい」と区に提案しましたが、個人情報とコストの問題で実現しませんでした。そこで、地域にある「多根病院」に協力してもらい、検診車に来てもらい、ここで受けてもらえるように出張検診「9月9日実施」を企画しました。健診後は、そこで認知症予防の食事もしてもらえるようにしています。地域診療は地域に入って、地域の人を把握してこそできるものだと思います。行政の統計資料を見る目と、それを地域にどう落とし込むか、が大切だと思います。

 

社会的弱者にどう手をさしのべていくか、福祉の貫徹が地域活動協議会の基本

子どもや高齢者を対象にした取り組みが中心なのですか?

 乳児・幼児から高齢者、障がい者、みんなが生き生きと生活する社会、地域にしていくこと、それが福祉のあるべき姿、ミッションですが、まず優先されるのは社会的弱者へのサポートだと考え、さまざまな取組みを行っています。

 高齢者に向けては、一昨年から「100歳体操」も実施しています。

 子どもについては、昨今大きくクローズアップされている貧困の問題、児童虐待の問題に取り組んでいます。貧困の対策はまだ緒に就いたばかりですが、住宅環境で勉強できない子もいますから、「子ども食堂」で食事の提供だけではなく、落ち着いて学習できる学習環境をつくりたいと考えています。また、大阪市は児童虐待の発生が多く、港区では年間100件、3日に1回の通報があるそうです。吉村市長も重点対策として取り組むとおっしゃっていますが、まず虐待に気づくためには地域がアンテナを張ることが必要です。通学時の見守りや、子どもとふれあう機会をつくって様子を見たり、「いきいき放課後事業」でも情報交換をしたりして、地域の子どもを知ることに努めています。親子の問題は難しく、子どもも親も、両方救わなければなりません。学校、地域、保護者、子どもの4者が一体になってスクラムを組んでいかないとできないと思います。

 もうひとつ、社会的弱者へのサポートとして、高齢者や障がい者、 DVを受けているシングルマザーの方たちに向けて、民間住宅をあっせんする(住みサポ事業)があります。保証人のいない高齢者は、住まいを見つけるのは困難ですし、筋ジストロフィーや脳性まひの方の住まいが閉鎖になったことも取り組みのきっかけでした。大阪府からの登録認可と国交省から助成金をもらって、社会福祉協議会にも全面協力してもらい、実施しています。今後は「住みサポ」 に力を入れて、障がい者向けグループホームの対策をしようと考えています。生活保護の方は行政が対応をしてくれますが、障がい者の生活支援の取り組みは、まだまだで、受け皿がないのが実情です。だから私たちがやります。就労支援も考えています。働きたい意欲があるのに働けない知的障がい者や精神障がい者がたくさんいますが、みんな社会の構成員ですから、その人たちのサポートができなければ本当の地域にはなりません。さまざまな取り組みを通して、地域の優しさが出てくることが大事だと思っています。

 

新しいことをやれば新しい人が来る 

「担い手の不足」にはどのように対応されていますか?

 今までに、すでにあることを続けていくだけでは、新しい人が入り込む余地がありません。新しいことをやれば、必ずそこに人が集まります。「子ども食堂」は、昨年3月から始めましたが、少しずつ定着してきて、若いお母さん方が手伝ってくれるようになりました。ほかの活動も含めると70人くらいの方がサポートしてくださっています。新しいことをやれば活動が浸透し、広がって、人がつながっていきます。地域参加が徐々に増えることを実感しています。変わらずに同じことをやっていては、新しい人には巡り合えません。一人でも多くの地域の方に、関心のあることや自分に合うことで手伝ってもらえる、参加したいと思ってもらえるためには、既存の事業に加えて新しいことをやる努力が必要だと思います。

 

継続は力なり …すそ野の広がりを目指してゆく

多くの事業に取り組まれている手ごたえと課題をお聞かせください。

 あらゆる事業を継続できていることが、何より手ごたえです。「ふれあい朝市」は4年目、「100歳体操」は一昨年10月から 2か所で行っています。「子ども食堂」は昨年3月からスタートさせ、「安全安心のためのマッピング作り」も更新して役立てています。手伝ってくださる人が増えてきて、我々の活動が浸透してきていると感じています。今後も継続し、連携をより深めながらすそ野を広げていきたいと思っています。今後も継続していくためには自立していなければなりません。ビジョンを持てるのも自立しているからです。「100歳体操」はすでに自立していますが、会場使用料として1人100円を徴収しています。この使用料も年額で10万円程になり、小さな積み重ねが少しでも地域に還元していく、地域に還元すれば納得していただけるはずだと思っています。人は無料のものには、次第にありがたみが薄れてしまい、やってもらってあたり前になってしまいます。少しの負担をみんなが負うことで、みんなの意識が変わり、みんなのために継続できる、と思います。そのサイクルを続けていきたい。助成金をいただかなくても、この4,5年で完全に自立できるようにしたいと思っていますし、いずれは私の後任になる方ができるようにしていきたいと思っています。

 課題は多々あり、極端に言えば、毎日出てきます。優先順位を考え、今のスタッフでどうできるかを熟慮して、できることからやっていきたいと思っています。

 

チャレンジすることはいくらでもある 地域がつながる場を作る総合施設計画進行中

これからの活動の具体的目標についてお聞かせください。

 この地域の人が「つながる場」をつくりたいと考えています。1階に保育園、2階にはリハビリができる高齢者施設、地域の人が集う場所もあり、防災備蓄センターの機能も持つ、総合施設をつくりたいのです。プランについては区に提案しています。幸い、この建物の前に公園があり、施設の中でも鍵となる保育園の条件にかないます。2階は和室とテラスをバリアフリーにして、テラスでは子どもが水遊びをしているのをみんなで見守れるようにし、お母さんたちが情報交換をしたり、育児の悩みも話せるようなふれあいの場にしたいです。保育園をつくれば若い人が来ますし、住民がそこに集い、高齢者と若い世代がふれあえる交流の場、いざという時の安心・安全の場、そんな総合施設にしたいと考えています。

 地域の課題解決のためにやろうと思えばいくらでもやることがあります。改善への意欲はどんどん湧いてきます。夢には終わりがありません。チャレンジし続けていきます。