イケてる!市民活動★ミニレポート内容

若者が非行や犯罪に陥るひとつの要因としての親からの虐待を課題視し、子どもとの接点活動を通じて、地域で孤立する母親へのサポートをめざす福島区 更生保護女性会。

戦災に遭わなかった地域特性から、昨今、老朽家屋跡や工場跡地に大規模な集合住宅が建設され、子育て層の流入が増加している福島区。それだけに、新しい住民も巻き込んだ地域コミュニティの形成が課題のひとつです。子どもを仲介に地域とその保護者をつなぐ橋渡し的活動を展開する福島区 更生保護女性会の会長 嶋田 敦子さん、副会長 永富 華子さん・菱田 明美さん・玉田 明子さん・榎本 かよ子さんを中心に、子育て支援部長、民生・児童委員一丸で活躍されています。主要メンバーの皆さんに子育て支援活動を中心にお話を伺いました。 

DSCN2872

福島区 更生保護女性会

会長 嶋田敦子さん(後列左)

副会長 永富華子さん(後列右)

子育て支援部長 菅井沙智世さん(前列左)

民生・児童委員 奥林香子さん(前列右)

<更生保護女性会のあゆみ>

戦前から少年保護などの活動を行っていた女性団体が前身となり、昭和24年に更生保護制度が発足したことに伴い、全国に地区更生保護婦人会が組織されていきました。その後、県単位、地方単位での組織化が進み、昭和39年に全国組織である「全国更生保護婦人協会」が結成されました。


 

 

非行、犯罪を未然に防ぐため、「子育て支援活動」から切れ目のない支援を

更生保護女性会について、お聞かせください。

「更生保護」とは、非行や犯罪に陥った人たちが、再び社会の一員として、立ち直るのを助けようという制度です。地域に活動の基盤を持つ「更生保護女性会」は、更生保護への理解と協力を得るための運動を展開しつつ、広く社会の方々に更生保護の本質を伝え、地域に更生保護の土壌を創りあげるために活動をしています。

福島区の「更生保護女性会」の総会員数は現在172名。その中で理事は22名、会長、副会長、書記、会計、子育て支援部長で構成されています。

メンバーのプロフィールは、例えば夫が保護司という女性が私たちの団体に携わっている、というケースが多いです。そして、メンバーは地域の身近な相談相手として必要な支援を行う「民生委員」も兼務しています。それぞれが暮らす地域で活動をしながら、それぞれの情報をここで共有し、「更生保護女性会」としてできること、必要な支援について検討し、サポートを行うスタンスで活動しています。

主な活動としては、「子育て支援活動」、「地域の非行防止活動」、「犯罪に陥った人たちの更生支援活動」と大きく3つの柱があり、関係団体と連携しながら、年間を通してさまざまな活動を行っています。

法務大臣から委嘱を受け、保護観察や犯罪予防活動を行う保護司と連携しているため、更生支援を行うのですが、私たち女性ならではの強みを活かし、例えば、少年院や刑務所を訪問しての誕生日会・成人式・運動会に出席するなど交流活動に力を入れています。

特に誕生日会は1対1で院生とのおしゃべりを楽しみ、親交を深めるようにしています。他愛もないおしゃべりは、とても嬉しいようで、最初はあまり話さなかった子が、次第に打ち解け、家庭のことや悩みなど、いろいろ話してくれるようになっていきます。帰る頃には、とても名残惜しそうにしてくれて、後ろ髪を引かれる思いになりますね。私たちのことを「お母さん」と呼んでくれます。

超高齢社会といわれている今、若い人が減っている中で、10代の子たちはこれからの社会を担っていく大切な存在です。更生した若者たちがスムーズに社会復帰できるよう、受け入れる側の姿勢、社会の仕組みづくりなど課題は多いですが、ひとつひとつ解決され、若い力が発揮できる社会になればと思いますね。

 

 

虐待の芽を摘むために―本当に必要なのは孤立する母親を地域で支えること

子育て支援活動について、お聞かせください。

今までの経験から、家庭環境、特に母親の子どもへの接し方、親と子どもの関係づくりが重要と感じています。あくまでひとつの要因としてですが、私たちが交流してきた若者の中には、母親を「あの人」と呼ぶ子が少なくないのです。ですから、「更生保護女性会」の子育て支援活動は、若者が非行や犯罪に陥ることを未然に防ぐねらいと位置づけ、切れ目のない支援体制の実現につなげたい、と考えています。

3か月の乳児・1歳半の幼児の健診のサポート、幼稚園児を対象とした月1回の「絵本の読み聞かせ」、「子育てサロン」のサポートをしています。特に乳幼児健診のサポートでは母親の様子をみて、何か課題がありそうと感じとった時に区役所に情報をつなぐ、民生委員につなぐ、といった橋渡しができればと考えています。些細な情報がとても大切なので、メンバー自ら積極的に情報収集を行うよう心がけています。

「絵本の読み聞かせ」は近隣の幼稚園と連携し、力を入れている取組みです。絵本は平仮名ばかりでスラスラ読むのが案外難しいので、読み聞かせに行く前にはここでリハーサルをしてから臨むようにしています。イントネーションなど、つい大阪弁になってしまうこともあるので、そこも気をつけるようにしています。今は、さまざまな仕様の絵本が出版されていますので、絵本選びも工夫をしています。読み聞かせのことを家で話してくれる子どももいますし、大型絵本などは、子どもがとても喜んでくれていると実感しますね。

「子育てサロン」は育児に関する悩み、いろいろ内に溜めてしまっていることを話し、共感し合える、子育て中の母親の居場所です。子どもの月齢や年齢の近い母親同士が、買い物や病院などの情報交換をしたり、悩みをシェアしてそれについて話し合ったり、フリートークでゆるやかな時間を過ごしていただいています。

気兼ねなく大人同士おしゃべりに集中できるよう、母親と一緒に来た子どもは私たちがお預かりし、一緒に遊んだり、遊びの見守りをしたりしています。基本的にフリートークのゆるやかな居場所としていますが、親子で楽しむ折り紙遊びなどを盛り込むなど、親子コミュニケーションを深める工夫も入れながら、虐待の芽を摘む活動としてメンバー一同が頑張ってくれています。

 

 

実態が掴めない子育て家庭に対し、いかにアプローチができるか

解決すべき地域の課題とは何だとお考えになりますか。お聞かせください。

2世代、3世代同居が珍しくなかった昔の時代であれば、家事や育児の分担など頼れる人がすぐそばにいるわけですが、今は核家族化が進み、これも地域で母親が孤立する要因のひとつと考えています。最近は、福島区でもマンションなど集合住宅で暮らす家庭、町内会に加入しない家庭などが増え、地域との関係性が希薄になってきて、私たちが活動をするうえでも、顔が見えない親と子ども、つまり実態の掴めない「ブラックボックス」にあたる子育て家庭が増えていることを実感しています。

町内会に入っていれば、地域でさまざまなサポートが受けられますし、顔見知りになっていれば、いざという時に何かと安心です。また町会に入っていれば、親子で遊ぶといった交流機会の情報も、行政や地域からの広報を通じてタイムリーに届けられます。地域の情報をキャッチし参加してくだされば、子育てに関する情報交換や悩み相談などいろいろなケアができます。

しかし町内会に属さず、且つ交流会にも参加されない方へは何もしてあげられない。子育ての悩みを抱えているかもしれないのに、接点がないので確証も持てず、何もしてあげられないということにジレンマを感じています。

(虐待をしてしまう母親は)どうしても内にこもってしまう人が多いです。外と関わりを持たない、ストレスを発散できないので余計にイライラがたまってしまう。外との交流をしづらい親が、育児ストレスを子どもに向けないとは限りません。

地域で孤立する核家族というのは、子どもの側からしても、自分の家庭のルールしかわからない、ということになりがちです。例えば、小さい頃から虐待を受けている子どもは、「それが当たり前」と思ってしまうこともあるのです。だからこそ、豊富な子育て経験を持つ私たちが主体となり、行政やその他組織とも連携しながら、幼稚園での絵本読み聞かせや学校との協働活動を通じて、子どもを見守ったり、子どもとつながりを持つことで、少しずつでも状況を把握していければ、と考えています。

親へのアクセスが難しいなら、まずは子どもから。子どもを仲介に、地域とともに、新しい子育て層をつなぐ橋渡しができれば、と思っています。

 

 

自分の子どもに「あの人」と呼ばれる母親をつくらないためにできることから

今後について、お聞かせください。

「自分の子どもに“あの人”と呼ばれる母親をつくらない」ために、私たち「更生保護女性会」としての強みを活かしてできることを続けていきたいと思っています。

町会にも入らず、実態を掴めない乳幼児を育てる家庭の状況を、私たちが把握し、課題を抱える母親に対してケアができれば、と考えています。子どもが小さいうちに、虐待の芽が摘み取れるうちに、寄り添う、手を差しのべることができたら…。

そのためには地域に入ることの価値をご理解いただき、小さなことからでも共に関わっていきたいと思います。例えば「子育てサロンに参加してみませんか?」とか、「こんな催しに参加してみませんか?」という声かけをするという小さなことから丁寧にコツコツと。

まずはつながること、「頼れる存在」と思ってもらえるようになりたいです。これまで何回もアクションをとってもなかなかサロンに参加されなかった方が、やっと来てくれた、ということは実際にあるんですよ。地道なアクションによって、来てくれなかった方がようやく来てくれた!そんな人を1人でも増やしたいですね。

また子育て世帯それぞれの価値観もあります。地域とのつながりを好まない、「地域のおばさんやおじさんとのふれあいはいらない」という家庭も増えているように感じています。もちろん、個人の価値観は違って当然で、最大限尊重するべきですし、「母親はこうでなければならない」なんて決まりもありません。社交的で行動的な方もいれば、内向的な方もいます。

そういったさまざまな事情もわかったうえで、画一的でない、押しつけでない、多様な価値観に寄り添ったサポートについて、メンバーみんなで新たな活動を企画したり実践したりできればと考えています。