市民活動ワクワクレポート内容

ecoeat(エコイート)

NPO法人日本もったいない食品センター

まだ食べられるのに捨てられる”食品ロス”。その課題に取り組むべく、2019年4月、大阪市内に小売店「ecoeat(エコイート)」がオープンしました。店頭に並ぶのは、賞味期限が近いなどの理由でメーカーなどが廃棄を予定していた商品です。

 

賞味期限が過ぎると食べられない?

ecoeatを運営しているNPO法人日本もったいない食品センター(以下「センター」という)は、食品衛生上問題の無い廃棄(予定)食品を引き取り、施設や生活困窮者へ食料支援をすることにより、食品ロス低減をめざして活動しています。きっかけは、代表理事の高津博司さんが、自身の経営する商社の取引先から賞味期限が近い食品の買い取りを持ちかけられたこと。調べるうちに、賞味期限が近いもの、食品によっては過ぎたものでも販売できることを知り、まずはインターネット販売からスタートしました。当初は、注意書きをしたにもかかわらず賞味期限が過ぎたという理由でクレームがでるなど、なかなか厳しいスタートでしたが、1件ずつ食品ロスについての問題提起、試みについて説明したり、賞味期限前と期限切れのセットで食べ比べをしてもらうなど、試行錯誤するうちに少しずつ理解を得ることができました。実際に購入した消費者からは、「食べてみても味は変わらない」「この値段と品質ならこちらを選ぶ」という声ももらっています。

消費期限は「期限をすぎたら食べない方が良い期限」であり、賞味期限は「おいしく食べられる期限」ですから、この期限をもって安全上の問題が発生するというものではありません。しかし、保管方法によって商品の劣化が早まることもあるのでこの日付だけに捉われてはいけません。匂いや見た目、自分の五感を頼りに食べられるものは食べることが食品ロスを減らすのに大切です。

 

本当は身近にある“貧困”

寄付や食品ロスの啓発活動を続けるうちに、社会福祉協議会を含めいろいろな団体と知り合い、NPO法人化することを勧められました。「当初、企業経営者としては、NPOや社会貢献というのはよく分からないものだった」と高津さんは言います。しかし、当たり前にあるものだと思っている食品を寄付することにより喜ばれたり、寄付先の施設職員から、大阪の食糧難の家庭の現状や、甘いお菓子を食べる機会が滅多にない子どもがたくさんいることを聞き、これまで遠い海外のイメージが強かった”貧困”が日本にも、大阪にもあることに気づかされたのです。

 

継続していくための仕組み、そして店舗展開へ

インターネット販売は啓発活動の一環と考えていましたが、ネットを見ることが出来ない層が、足を運んで購入できる場所を提供できればと考え、店舗オープンに踏み切りました。「貧困層には寄付をする。少しお金がある人には安く購入する場を提供する。消費者に直接、説明ができる場所がほしいと思い、店舗を作りました」と高津さん。「ecoeat(エコイート)」の売上は一旦商社に入り、そこから経費を引いた分が寄付としてセンターに入る形となっています。これには、運営や出店の資金、人件費がセンターにはないという事情があります。「商社の店舗といえども、実質は商社がセンターの資金を立て替えている状態で、利益よりもセンターへの寄付金が上回っている状態です」と高津さん。特に倉庫代、配送料の経費が大きく、商社が負担しているためセンターとしては赤字になっていませんが、決して楽な状況ではありません。

店舗のチェーン展開は当初からの計画でした。「過去に多額の赤字を出した時には、社長である自分自身がセンターの活動に時間を割かれたことが一因でした。危機感を持ち、商社に力があるうちにセンターが自走できるように、店舗拡大を図りました。まずは、従業員の給料が払えるぐらいの黒字を出し、地域に貢献できるようになることを第一に、店舗運営を商社からセンターに移行し継続していくシステムを考えています」と高津さん。

センターでは、商品の仕入先はメーカー、問屋、輸入業者、省庁、自治体など多様。寄付・販売のバランスの調整には、会社経営の経験が活きています。「メディアに取り上げられたことで啓発活動となりましたが、善意を押し付けるようなことはしたくない。NPO法人でも、無料で物をもらうことを当然としたくない。Win-winでありたいという考えから、あえて「仕入先」、「販売先」と呼んでいます。非経済的な活動を否定はしていませんが、それぞれの団体のスタンスで活動すればよいと思うのです」と高津さん。食品の寄付を希望する人の質や収支状況を見極めながら、完全な寄付なのか、送料などの負担をしてもらうのかを決めています。

 

目指すのは、賞味期限と消費期限の違いを消費者に理解してもらい、食べられる状態であるが廃棄される食品を、今一度消費者の手元に届けられるように流通させること。取組みを幅広い層に啓発するためにも、大学生のインターンや、メディアの取材も積極的に受け入れています。「少しでも多くの人に食品ロスへの関心を持ってもらえたら」と、高津さんの活動は続きます。

(記事作成:大阪市社会福祉協議会)