市民活動ワクワクレポート内容

有限会社スマイルプラス×「The男組」

介護事業所の前に並ぶ、大根や小松菜、白菜など、色とりどりの新鮮な野菜。介護センター「スマイルプラス」(平野区)は、月2回11時~13時の間、事業所前のスペースに「スマイル八百屋さん」を開いています。そして、足が悪く重たい荷物を運ぶことのできない地域住民のために、購入した野菜を家まで運ぶお手伝いをするのは、男性の男性による男性のための居場所「The男組」のメンバーです。

 

介護事業所で八百屋さん!?
「スマイル八百屋さん」が開かれたきっかけは、介護センター「スマイルプラス」の居宅介護支援管理者・明野明子さんが、地域住民から「大型スーパーまでは距離が遠く、足が悪いので買い物が不便。おまけに銭湯に行くにも1時間かかる」といった声を聴いたことでした。住民の中にはヘルパーに買い物を頼んだり、デイサービスで入浴したりするためだけに介護サービス認定を受けている人もいました。こうした状況を、介護保険でなく、インフォーマルな形で改善できないものかと明野さんが考えていた矢先に、八百屋の移動販売による成功事例を聞く機会がありました。この取り組みをぜひ平野区でもしたいと考えた明野さんは、平野区社会福祉協議会(以下、「平野区社協」という)に相談。平野区社協の平野区ささえ愛支援員(生活支援コーディネーター)の角田達哉さんとともに平野西地域活動協議会の今岡敏夫会長、坂本環地域福祉活動コーディネーターを訪ねた結果、チラシの回覧やポスター掲示などの協力を得ることができたのです。
3 買い物様子

 

買い物のおかげで認知症の方がいきいきとした表情に
こうして地域の協力によりオープンした「スマイル八百屋さん」。回覧板、掲示板を見た地域住民が次々とやってきて、レジには、この日とばかりカゴ一杯に野菜を詰め込んだ買い物客の長い列ができました。提携する青果店のスタッフも張り切り、「野菜の冷凍の仕方や、おいしい料理の作り方を伝えたい」と笑顔で対応。対面販売ならではの味わいです。地域の高齢者にも「ここなら近いから来ることができます」と大好評のため、2019年4月からは開催日を月2回に増やしました。地域住民をはじめ、近隣の企業に勤める人、スマイルプラスのデイサービス利用者も買い物を楽しんでいます。「自分で選んで買い物をすることで、若年性認知症の方がいきいきとした表情になって嬉しい」と明野さん。このことが口コミで広がり、認知症対応型デイサービスの3事業所から買い物ツアーを組んでやってきたり、認知症初期集中支援の「オレンジチーム」が認知症の人と同行して来ることもあります。

 

シニア男性たちが買い物をお手伝い
そして、この「スマイル八百屋さん」で買い物袋を運ぶ高齢者を手伝っているのは、「The男組」のメンバーです。「The男組」は、”楽しみながら地域社会に貢献する”を理念として、これまで仕事一筋で生きてきたシニア男性の第2、第3の人生を豊かにするため多種多様な活動をしている「男性の居場所」です。「スマイル八百屋さん」に袋いっぱい買い物をしている高齢者の方がたくさん来られていることを平野区社協から聞いたメンバーが自ら「手伝おうか」と声を挙げました。足が悪く重たい荷物を運ぶことのできない高齢者や、妊婦さんなど買い物が不便な人に、買い物かごを持って一緒に買い物したり、自宅まで荷物を運ぶお手伝いをしています。

 

介護事業所も地域の社会資源のひとつ
「スマイル八百屋さん」が定着し、地域の交流の場の一つとなれば、介護の相談もできることを知ってもらえると同時に、認知症の理解を地域に広めていくこともできると明野さんは期待しています。「介護事業所が地域の社会資源のひとつとして、困難を抱えている方々が安心して暮らせるお手伝いをしたい。めざすのは、地域に何か起きたときに一緒に支え合える関係です」と明野さん。八百屋の次は、事業所内の浴室を開放して、介助の必要のない高齢者を対象にした銭湯のような場をつくりたいという計画があります。「人手不足の中、私も含め職員がどこまで協力できるかが課題ですが、『The男組』さんや平野区社協さんとも相談してチャレンジしたい。」と今後の思いを語ってくれた明野さん。介護事業所が地域でも親しまれる存在になるようにと願いながら、活動は続きます。

(記事作成:大阪市社会福祉協議会)