市民活動ワクワクレポート内容

旬菜鮮魚てつたろう×認定NPO法人ホームドア×株式会社サルビア

飲食店オーナーであるご自身がコロナ禍で大きな経済的ダメージを受けながらも「コロナ禍に苦しむ方々に栄養満点のお弁当を届けたい」と認定NPO法人ホームドア(以下、「ホームドア」という)と共に延べ2000人以上の路上生活者や仕事を失った人、食べることに困っている人においしいお弁当を提供、夜回りの日には路上生活者に自ら手渡しもされている “てつたろう”オーナーの柳川さん。その利他の精神の源となる考えや、どのようにしてプロジェクトを進めたのか、お話を伺いました。

コロナ禍真っただ中にソーシャルファンディングプロジェクトを発足
飲食店を取り巻く当時の状況は?
日本で初めて新型コロナ患者が出てしばらくした頃、1月下旬頃から2月にはすでに影響が出始めていた…という感じでしたね。未知のウイルスが日本に入ってきたわけですから、『これから大変なことになるのではないか』と不安を抱いていました。世界的に感染者が増え始め、WHOのパンデミック宣言など、これまで経験したことのない不安や恐怖に世の中が一気に騒がしくなりました。テイクアウトに、Uber Eats…できることは何でもやりましたが、経営の屋台骨をぐっと締めるところまではいきませんでした。
飲食店は、本当にみんな「しんどかった」。
だからこそ店の垣根を越えて、『今だからこそ、みんなで力を合わせて何かできることを!』と近所のホテルや飲食店を回ったのですが、飲酒を伴う複数人での食事を避けよう、といった風潮になって客足が遠のき、どんどん目の前の売り上げが減っていく。緊急事態宣言の頃には、近所の飲食店も休業してしまって。
商売が立ちゆかなくなって自殺を考える人が出てもおかしくない。実際たくさんの会社や飲食店が廃業に追い込まれ、自殺した飲食店オーナーの報道もありました。
倒産や廃業が原因で世の中の自殺者が増えてしまうことはあってはならない、何とかして阻止したい!との思いから、“社会をよくしたい”との思いでつながる旧知の仲間と一緒に経済と社会活動の両立型ソーシャルファンディングプロジェクトを立ち上げました。
もともと私は「てつたろう」を、商売が立ちゆかなくなった経営者の方が『もうあかん、死にたい…』と思った時の駆け込み寺のような存在にしたいとずっと思っていました。その実現化に向けて具体的に動き出したいと思ったタイミングと、コロナ禍のタイミングがいい感じで重なったのではないかと思います。

1食で命を救える可能性に懸ける!
プロジェクトのきっかけは?
プロジェクトの発端は、些細な思いつきでした。コロナには私自身、本当にしんどい思いをさせられましたが『俺より苦しい人はいっぱいおるやろな…自分にできることでその人たちを助けられないかな?』とふと考えて。コロナ禍で今日1日の食事さえままならない人たちのためにできること―そうだ!店に来てもらってご飯をご馳走しよう!そのメッセージを発信するため、Facebookに投稿しました。
『苦しくても死んだらあかん。“てつたろう”に来てくれたら無料でご馳走します!』
投稿して2~3日した頃、私が関西ブロック長を務める一般社団法人公益資本主義推進協議会(PICC)の仲間から電話がありました。
『ソーシャル仲間が柳川さんのSNS投稿に感動して、てつたろうのために何か動きたいと言っている。話を聞いてあげてほしい』と。
そのソーシャル仲間というのが、豊中市を中心に福祉施設を経営している株式会社サルビアの市橋 拓さんという方で、今回のプロジェクトの発起人です。今回の連絡をいただく前からソーシャル仲間の方たちとよくご来店いただき私もよく存じ上げていました。
『自分も経営者なのに自分のことしか考えていなかったことが恥ずかしい!』
『いやいや、飯をおごるから“てつたろう”においで!ってだけの話やから(笑)』
『飲食店は今、一番しんどいはずなのに、なぜそんなに人のために何かしようと思える?』
そんなやりとりがあって、『今、“てつたろう”に一番必要なものは何ですか?』と聞かれたので、『うちには、人もモノも優しい心もある。ないのはお金だけ。』と即、正直に伝えました。そこで、私も市橋さんも旧知のホームドアと連携し、クラウドファンディングで活動資金を募るプロジェクトを発足させようという話になりました。

社会課題を解決したい―同じ思いを持つ仲間の支援の輪をつなぐプロジェクト発足
連携協働はどのようにして進められたのか?
ホームドアは、ホームレス状態や生活保護を利用している方の支援をされていますが、コロナ禍で相談件数が例年の3倍以上という状況に陥っておられました。
つまり私が助けたい人(対象)と接点を持っている団体なのです。
「困っている人の命を救うきっかけを食で!」という私の思いと、「目の前の困った人のために何かしたい!」というホームドアの思い、そして「“てつたろう”のために何かしたい!」という市橋さんの思いがつながり、コロナ禍に苦しむ「こんな人々」を「こんな方法」で支援します、という具合にビジョンがより明確になりました。

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<掲げたビジョン>
① コロナ禍に苦しむ生活困窮者(ホームレス状態にある人、新型コロナで収入源を絶たれている方々 など)に「てつたろう」のおいしいお弁当を届ける。
② コロナ禍に苦しむ海鮮居酒屋「てつたろう」に運営資金を提供する。

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弁当代金約1800人分、返礼品費、郵送費やウェブシステム手数料などを試算し、1stステージは150万円の寄付額目標を設定しました。なんと、わずか2日で目標達成しました。達成目前というタイミングで、児童養護施設の退所者へ支援を広げよう、ということになって2ndステージとしてさらに150万円の目標を掲げ、こちらも目標達成しました。

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<今回のプロジェクトのプロセス>

① コロナ禍で困窮している人の命を救いたい!SNSに投稿
② 投稿に共感したソーシャル仲間が発起人となってプロジェクト発足
③ 旧知の仲間(ホームドア)と連携、ホームレスへ弁当の配食支援
(1stステージ:クラウドファンディング目標金額150万円)
④ 対象拡大・児童養護施設退所者へ弁当配食支援のための2 ndステージを設定
(目標金額150万円)
⑤ 1stステージ、2 ndステージ共に目標達成、連携団体を通じての配布や夜回り活動での手渡し
※クラウドファンディング2020年5月11日~5月25日で集まった金額3,069,000円
(支援者数194人)

飲食店の社会的地位を上げる!廃業を防ぐ!新しいソーシャルビジネスを準備中
今後の抱負は?
社会活動については、今はコロナ禍で生活困窮者への支援に重点を置いていますが、社会課題は常に変化すると思っています。社会課題解決のための仕組み(システム)とは、社会の変化に合わせ、柔軟に対応していけるのがベストだと思っていますので、社会貢献テーマや、支援する対象は多様であればあるほどいいと考えています。だから、これまでにも、さまざまな団体や企業とつながりづくりをしてきましたが、今のプロジェクトの延長で、仲間たちと飲食店の固定収入の安定化につながる仕組み(システム)づくりとしてのソーシャルビジネスを立ち上げる予定です。
簡単に言うと、サブスクリプション(定額課金でのサービス提供)と、社会貢献(寄付)を組み合わせた仕組み(システム)です。
廃業した店のシャッターにはテナント募集の張り紙がおびただしい。私たち飲食業関係者の間では、飲食店は1年で30%が、3年以内に70%が廃業すると言われています。コロナ禍に関わらず、飲食店の成功と継続は難しいのです。それは固定収入が安定しないということが要因としてあるからです。飲食店は先の見通しが立ちにくく、世間の人気や嗜好に大きく依存するゆえに水商売とも言われますからね。
今考えていることを実現化して業界に普及させることで「1年で30%、3年で70%の廃業」を阻止することができるかもしれません。
飲食店が助かる!世の中が助かる!飲食店の社会的地位が上がる!そんな基盤づくりに貢献していきたいと考えています。

 

記事作成:株式会社アクセプト