コラボ事例もいっぱい!市民活動ワクワクレポート内容

第19回にしよどリンク2019.8.21_191017_0037

左:安田真奈さん(映画監督・脚本家)右:福田留美さん(NPO法人にしよどにこネット代表)

※第19回にしよどリンクにて『やさしい花』上映会&しゃべり場カフェ実施時のお二人の交流場面

NPO法人にしよどにこネット×安田真奈(映画監督・脚本家)

 

地域で子育てを広げるプラットフォームとしての「子育て広場」運営を始め、居場所づくり、さまざまな子育て応援団体や支援機関への橋渡しなど、西淀川区の地域連携を担うNPO法人にしよどにこネット代表の福田留美さん。

かつて、メーカーに勤めながら「OL監督」としてオリジナル脚本で映画を撮り続け、退職後、『幸福(しあわせ)のスイッチ』(2006年)でおおさかシネマフェスティバル脚本賞に輝き、劇場デビュー。以後、さまざまな作品を世に送り出してきた安田真奈さん。

全く違う経歴のお二人が、とある勉強会でたまたま出会い、生まれた子育て応援・地域連携の新しいカタチ。

今回はNPO法人にしよどにこネット代表の福田 留美さんのお話です。

 

大阪市域で3年続いた児童虐待死事件がきっかけで生まれたプログラム

 

『やさしい花』上映会をコアとしたプログラムを開発されたいきさつは?

 

私たちは2008年に子育てグループからNPO法人となりました。その年に西淀川区役所との連携事業も始まり、自分たちの子育てを超えて本格的に地域の子育てについて考えていこうとしていた2009年4月、西淀川区で小学4年生女児虐待死事件が起きました。実母と同居人男性らから激しい暴行とネグレクトにより死亡し、奈良県の山中に埋められた…あまりにも凄惨な事件でした。

近隣住民や同年代の子どもがいる子育て広場スタッフも衝撃を受けて、事件を機に区や他の団体と話し合いを何度も持ちました。

でも翌年の2010年、『やさしい花』のモデルとなった「大阪市西区二児置き去り死事件」が起き、さらに翌年2011年、再び西淀川区で小学2年生男児虐待死事件が起きたのです。

ホットラインの開設や、警察とも連携した家庭介入の制度が早急に整えられましたが、3年続けて事件が起きたことで、スタッフみんなが無力感に苛まれました。

「何か私たちにできることを!」いろいろ話し合い、アイデアを出し合った結果、児童虐待をテーマとした映画の上映会とワールドカフェ式のワークショッププロジェクトを立ち上げました。

初年度の題材は是枝監督の『誰も知らない』、次の年は刀川監督の『隣る人』。

しかし、映画は長いのでワークショップまで入れると全体時間がどうしても長くなり、ワークショップの参加率が低くなってしまうことのが、悩みの種でした。

いくら素晴らしい映画を上映しても、ワークで深めなければ、自分ゴトにはなりづらい。

いろいろ悩んでいた時に、NHKの『子どもを守れ!』という特集番組の中で放送されていた安田真奈さん脚本のドラマ『やさしい花』を観ました。観た瞬間、「これや!」と。その時は閃いただけで、すぐに具体的な行動をしたというわけではなかったのですが、「縁」は人を引き寄せることができるのですね。たまたま茨木市の子育てを考える学習会に参加した時に、たまたま参加されていた安田真奈さんと出会ったのです。

『やさしい花』の脚本を書かれたこと、作品に込めた思い、いろいろ情報交換をしました。『やさしい花』はNHKの福祉ライブラリーにて無料で借りることができ、視聴時間も43分と、一般的な映画に比べるとかなりコンパクト。1時間のワークショップをプラスして、最後にキーワードをまとめて、ちょうど2時間程度で収まります。

「これはええわ!」と話がどんどん進みました。さらに、にしよどにこネットが西淀川区から受託している子育てを応援する担い手育成・地域連携事業の趣旨にぴったりということで、「『やさしい花』上映会&しゃべり場カフェ」というパッケージプログラムを開発、以後毎年実施しています。

実施日当日には安田真奈さんをお招きし、作品に込めた思いを直接参加者に語っていただいたり、質疑応答に応じていただいたりしています。

—————————————————————————————————————

<連携協働のプロセス>

①2011年・2012年 児童虐待をテーマとした映画上映会&ワークショップ実施

②2年実施を経て課題分析、課題解決のための活動

・課題:参加率が低かったワークショップパートの有効化

・課題が解決された状態:上映会+ワークショップで2時間くらいの尺とする

・すぐに着手すべきこと:短めの題材を探す、その題材を使うにあたっての許諾を得る

③どういう題材がいいか、さまざまな交流会や学習会参加による情報収集

④脚本を手掛けられた安田真奈さんと出会い、児童虐待に対する思い、両者の連携協働に

より、どのような成果をめざしたいかを共有(ビジョンの共有)

⑤安田真奈さんと調整を重ね、2013年~NHKドラマ「やさしい花」上映会&しゃべり場

カフェプログラムを完成・実施スタート

⑥地域の高校、幼稚園・保育園へ対象拡大、出前授業実施

————————————————————————————————————-

 

緊急性の高い虐待への介入はしないが、一歩前、二歩前のところで防げることがきっとある

 

にしよどにこネットと児童虐待は一般的にイメージがリンクしないと感じるが、どんな動きをされているのか?

 

「児童虐待が疑われる」と、近隣からのご相談を受けることは実際にあり、私たちにできる対応をしています。

なぜなら、いきなりホットラインに通報すると、児童相談所の訪問、警察介入など、かなり大ごとになってしまいます。もし通報者が心配するようなことがなかった場合、通報された側はとても傷つきますよね。ここに居づらくなってしまいます。

そうならないように、私たちが相談者と連絡を取り合って様子を教えてもらったり、区の事業担当職員の方と情報をシェアして様子をみたり、慎重に対応しています。また公式LINEで相談対応もしています。ご本人の承諾を得て、セーフティネットにおつなぎしたケースもあります。

でも、にしよどにこネットとしては、虐待家庭への介入や虐待予防といったワードは、ほとんど表には出していません。

緊急性の高い虐待に直接介入することはないですが、虐待予防の観点から、「家族関係が変わったことによるストレスはないか?」「DVにつながるような片鱗はないか?」…地域の方々と日々触れる中で、些細な日常会話から聞き取れるよう、気配りしています。

一歩前、二歩前のところで地域で支え合える、困り果てる前に平時からつながっておくことのできる居場所があって、そこにふらっと立ち寄って話を聞いてもらえ、わかってくれる人がそばにいるだけで防げることがきっとあるはず。

上映会&しゃべり場カフェでは、子育て支援情報の啓発カード(ふわり子育てよりそい隊)も配布しています。カードから、地域のさまざまな団体や機能についての情報にリンクするようになっています。カードを見て、ちょっと立ち寄ってみようかなと思ってもらえたら、一息つける自分に合った居場所を見つけてもらえたら、と思っています。

本当にしんどくなる前に、喜び、楽しみ、苦しみ…地域みんなでわかち合っていく。

そのつなぎ役が私たち、にしよどにこネットの使命と考えています。

 

当事者も支援者も、地域の方も若者も。みんなが共感ポイントを見つけられる『やさしい花』

 

『やさしい花』は、当事者を応援する立場からどのような意義がある作品?

 

虐待を引き起こす要因は、孤立した中での育児で本人が心身ともに疲れ切ってしまうこと、何が正解かがわからない中で、「自分はダメな親」「ちゃんとできない親」と自己を責めること。

結果、その矛先が子どもに向き、親も子も追い詰められてしまうという側面があると思います。だからこそ、支援者や地域を頼ってほしいと思いますが、簡単なことではありません。「周りを頼っていいよ」と言っても、頼ることができない。「助けて」と言えない。ひとりで抱え込んでしまい、人に助けを求められない方は一定数いらっしゃるのです。

当事者にどんな声がけをしてあげたらいいのか、支援者の適切な対応が求められます。

よく耳にすることですが、子育ての悩みを打ち明けても、「そんなの、みんな一緒一緒!そのうち楽になるから!」そう言われて終わりにされてしまう。支援者は励ますつもりなのでしょうが、当事者はその言葉を求めているのではないのです。ただ頑張っていること、困っていることを聞いてほしい。寄り添ってもらいたくて、わざわざ来られるのですよ。

それなのに、「みんな一緒。そのうち楽になるよ」と言われても、「今、しんどいんです!」という気持ちですよね。多分。でも支援者も当事者同様、何が正解かわからない中で一生懸命やっているのです。

お互いのもどかしさを解消するヒントとして『やさしい花』はとてもいい題材です。

ドラマの中のセリフひとつひとつに共感したり、考えさせられたりする。だから、どんな
シーンが印象に残ったかをみんなでディスカッションする中で、「こんな時はこんな風に言ったら、心を開いてもらえるのかな」と、支援者にとって参考になることがたくさんあると思います。

ドラマの中に、「当たり前ってなんやの!」というセリフがあります。これには参加したみなさんが共感していました。

正解がない中であっても無意識に自分の既成概念だけで型にはめようとしてしまうことで生き辛さが生まれてしまうことってあると思うんです。そのもどかしさを見事に表現したセリフだと思います。だからこそ、やり方を経験した者から伝達するのではなく、同じ素材を見て、参加者がフラットになって一緒に考えていくということが大切だと思っています。

子育てをしている当事者、支援者、地域の方々…どう頼るか、どう寄り添っていくか、どう見守るのか、『やさしい花』にはヒントがたくさんあります。また、児童養護施設に保護されていた子どもの気持ちなども描かれているので、若者にも共感してもらえると思います。いろんな世代を巻き込みたくて、高校でもプログラムを実施しています。

第19回にしよどリンク2019.8.21_191017_0008 第19回にしよどリンク2019.8.21_191017_0042

 

相乗効果が生まれやすい地域連携に効果的なプログラム。他の地域でも根付いてほしい

 

参加された方の反響は?また、今後の抱負は?

 

「子育てをがんばる自分の気持ちを代弁してくれているようなドラマ」という、ドラマそのものへの反響はもちろん多いのですが、にしよどにこネット主催の場合は、民生委員や地域活動協議会の方にも参加いただいているので、立場関係なく一緒にグループワークをすることで、「地域にこんなに子育てを応援しようとしてくれている存在がこんなにいることを初めて知った」という反響がママたちから上がりました。

『やさしい花』上映会&しゃべり場カフェを、親だけの集まりにとどめず、地域連携事業として実施したことで、地域のいろいろな方々に参加いただくことにつながりました。世代や経験値、視点の異なるいろいろな人との出会いを生んで、「頼っていいんだと思えるようになった」という声もいただき、本当に嬉しかったですね。

中には虐待を受けたことのある人が、「自分は子どもに同じことをしたことはないが、子どもとの関わり方がわからなかった。映画を見て向き合い方を気楽に考えていこうと、子どもと一緒に育っていこうと思えた」という声もありました。

どの立場の方々からも反響は大きいですし、地域連携の視点から言えば、いい相乗効果を生んでいるのではないかと思います。

多くの方々が、地域連携の必要性には気づいおられることと思いますので、今後、このプログラムが区を超えて、他の地域でも実施され、それが根付いてくれたらいいな、と思っています。

にしよどにこネットでパッケージ化したものですが、私たちが広域に出張で実施というよりは、やはり、そこの地域の方が地域で根付かせてほしい。

プログラムはそのまま使っていただいて結構ですし、実施にあたっての講習など、ご協力いたしますので、ぜひ他の区で花を咲かせてほしいと願っています。

(記事作成 株式会社アクセプト)