市民活動ワクワクレポート内容

認知症予防サポート協会

代表理事 鳴川 正さん

少子高齢社会において認知症は大きな社会課題。認知症発症率が世界一の日本は今後、どのように進めばいいのか―その鍵となるのが認知症予防概念の普及促進。3年前、認知症予防を理念に掲げる団体を設立され、さまざまな連携協働でプロジェクトやビジネスを展開されている認知症予防サポート協会 代表理事の鳴川正さんにお話を伺いました。

 

認知症はさまざまな社会問題を生む元凶にもなりうるからこそ、早めの予防啓発が重要

 

 認知症予防サポート協会とはどのようなことをされている団体ですか?

根治薬のない認知症は、早めの予防に取組むことが重要です。また軽度認知障がいの段階であれば、適切な対策をすることで元に戻るといわれています。でもそうしたことはあまり知られていません。だから、私は正しい知識と対処法を知ることを通じて、多くの方々の認知症への不安を払拭し、希望を持つことができる社会づくりに寄与したくて団体を立ち上げました。

認知症といえば高齢者の問題というイメージが強いですが、2019年に、カナダの大学の研究で24歳から認知機能が低下していくという発表がされています。

また、四六時中、寝る前までスマホやパソコンを触る生活を続けていると、脳に送られる情報量が多すぎて処理能力が大幅に低下し、物忘れやケアレスミスが起きてしまいます。

そのことを、スマホ認知症=デジタル認知症と呼んでいますが、デジタル化がさらに進むに従って、今後ますます若年層からの認知症が増えることが懸念されています。

今までなら『自分は関係ない』と思っていた20~30歳代の若い方も自分ごととして捉える必要がありますし、40~60歳代の方は、親が認知症になれば介護疲れや介護離職等、生活困窮のリスクが発生します。

つまり認知症は、高齢者だけの問題ではなく、どの世代にもかかわる全国民の問題であり、さまざまな社会問題を生む元凶にもなりうるのです。

事業内容としては、

  • 認知症予防勉強会の開催
  • 認知症予防サポーター養成
  • 認知症予防インストラクター養成(認定)
  • 各地域での認知症カフェの運営
  • 認知症予防において推奨できる商品やサービスの導入サポート等、ソーシャルビジネスの事業展開、啓発イベント等、さまざまな活動をしています。

 

人口が特に多い、私たち団塊の世代がみんな認知症になったらどうすんねん!

 

 活動を始めたいきさつは?

団塊の世代が後期高齢者となる2025年には、軽度認知障がい(MCI)を含めて、65歳以上の高齢者の3人に1人が認知症となる予測されています。そして、2060年には人口が8,000万人台にまで減少、そのうち約2,000万人が認知症(MCIを含む)になると言われています。

生まれたての赤ちゃんから高齢者まで全ての日本人の約4人に1人が認知症ですよ?

「どう支えるねん!」ということをみんなが真剣に考えていかなくてはなりません。また、高齢化率も、認知症発症率も突出して世界一という大きな課題を抱えた日本の動向に世界も注目しています。

こうした動向を無視できず、団体を立ち上げましたが、私自身が団塊の世代でもあり2025年問題が他人事でなくなってきたこと、亡くなった母も最後は認知症になり、コミュニケーションがとれずに辛い思いをしたという個人的な事情も影響しているかもしれません。

団体を立ち上げた3年前は、認知症は「予防」できるという認識がまだ世間には行き渡っていませんでした。ケアマネの方も『えー、認知症って予防できるんですか?』という感じで…。

もともと政府は認知症については、認知症施策推進大綱で、「予防」と「共生」を打ち出そうとしていましたが、「予防」ばかりを前面に出してしまうと、(認知症に)なった人を切り捨てるのか?と、特にご家族からの反発も起きかねないですからね。そういった事情もあり、当時、認知症に関して「予防」の概念があまり普及していなかったのは理解できます。しかし、日本が超高齢社会へ進んでいく以上、もはや認知症も予防をしないと進行は止められないという状況です。

『人口が特に多い、私たち団塊の世代がみんな認知症になったらどうすんねん!』

…ということです。

私たち団塊世代は、日本の政治も経済も動かしてきたという自負があります。だからこそ、団塊世代の一人として、当事者意識を持って世の中を変えなければ!それ以前に、残された世代のために、我々の世代は認知症にならないように頑張らないと!と考え、団体を立ち上げました。

 

「認知症の日」制定を見据え、コロナ禍もリアル、オンラインイベントやビジネスを展開

 

 他の団体との連携協働などは?

9月21日を「認知症の日」に制定する認知症基本法案が国会で審議されていますが、その日を挟んで、9月20日~23日の4日間、空堀商店街全域で大規模な認知症予防啓発イベントを行いました。主催は、私たち「認知症予防サポート協会」で、大阪市中央区社会福祉協議会や地元の商店街の組合、他の福祉団体などが協賛として、そして、地域のたくさんの活動主体にご協力をいただきました。おかげさまで、子どもから高齢者まで楽しめる地域のイベントとして大盛況で終えることができました。

 

合体画像

 

<連携協働のステップ>

ステップ1 地域に根差した活動団体とビジョンを共有

ステップ2 協働団体の持つ資源やネットワーク、ネットワークの持つ資源を棚卸、整理

ステップ3 みんなで話し合い、やりたいことをまとめる(5W2H)

なぜ?(Why)、何を?(What)、いつ?(When)、誰が?(Who)、

どこで?(Where)、どのようにして?(How)、いくらで?(How much)

ステップ4 会場となる場所を管理運営している組織に交渉(組合、振興会等)

ステップ5 広報、当日運営

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また、当団体の理事で、若手の女性が代表の「一般社団法人認知症予防活動コンソーシアム」主催の「ニヨ活フェス~24Hオンライン」というオンラインイベント(大阪府社会福祉基金地域振興助成金の事業として実施)にも協力させていただいています。

「ニヨ活」とは、認知症の「ニ」、予防の「ヨ」、活動の「活」と、それぞれの頭文字を取ってつけた名称です。認知症に関連した活動を行っている団体や個人は全国に多くおられますが、そうした活動主体がつながるプラットフォームを構築し、認知症予防の概念をもっと広げていこうとする取組みです。オンラインイベントとしては、YouTubeにニヨ活チャンネルを開設し、昨年の9月21日に第1回、今年の2月4日~7日に第2回、認知症に関する活動を行うさまざまな団体や個人の啓発動画を一斉配信しました。今も観ることができますので、ぜひご覧ください。年2回の計画で今後も実施していく予定です。

(ニヨ活チャンネルhttps://www.youtube.com/channel/UCm_M6P4lFDmA8IV9f2c4orw)

介護福祉、ホスピス、レクリエーション…認知症の共生や予防には、さまざまな切り口があります。もともと個々に認知症予防や認知症の方のサポートで活動されていた活動主体が、府の事業の一環でもある「ニヨ活」というプロジェクトでつながったという感じですね。

当初はリアルな対面式イベントで準備を進めていたのですが、コロナウイルス感染症拡大という事態が起き、オンライン実施に切り替えざるを得なくなりました。でも逆に、全国規模でさまざまな団体と繋がりができたり、24時間学べる!というキャッチコピーを打つことができたり…と、メリットもありました。

 

ニヨ活チャンネル

 

他にも、高島屋大阪店や伊勢丹新宿本店で長年にわたり店舗展開をされている、フランス式アロマのメーカー様の協力も得られ、ソーシャルビジネスを展開しています。「アロマと認知症?」と疑問に感じるかもしれませんが、認知症の予防方法はメディアでもいろいろと紹介されています。中でも運動や脳トレなどは私たちも推奨していましたが、中々続けてくれなかった苦労がありました。

アロマはバブルを経験されたオシャレ好きの方々にも受けがよく、誰もが日常的に手軽に予防に取り組めるという意味でもフランス式アロマを推奨しています。

メカニズムとしては、嗅神経と記憶を司る大脳辺縁系の中の「海馬」はつながっており、認知症になると物忘れが起こることの以前に臭いが分からなくなることが発表されています。嗅神経と海馬には再生能力があるため、嗅神経をアロマで刺激することで、認知機能の予防にアプローチするということなのです。

フランスでは、ドクターズアロマという概念があり、アロマ関連商品は薬局で取り扱われていますが、日本の薬機法(旧・薬事法)ではアロマは医療用としては現時点で認可されていません。しかし、アロマテラピー(芳香療法)は、家族全員で楽しみながら認知症予防に取り組めます。幅広い世代に対して、予防の必要性を訴求するのに非常に有効なツールと思います。

ソーシャルビジネスとして取り組んでいますので、アロマストーンは、障がいのある方の施設で作られていますし、今後は、軽度認知障がいの方も仕事として関わっていただければいいと思い、話を進めています。

フランス式アロマメーカー様も認知症予防に対する思いが強く、認知症予防啓発において理念をわかち合いました。メーカー様は一緒に活動ができる信頼できるパートナーを探しておられたこと、私たちとしては日常から取り組める認知症予防を推奨したい、という思いがあり、互いに良好な関係ができているのではないかと思います。

 

認知症になって余命宣告を受けたような、絶望するような社会にはしたくない。いろんなサポートを得ながら、認知症と共に生きることに希望が持てる社会づくりに貢献したい

 

今後の抱負は?

以前からつながりのある東大阪や門真の地域団体と、将来的なことについて意見交換をしている中で、関連する団体みんなで2025年の大阪・関西万博で認知症パビリオン等、何か仕掛けようという話が進行しています。

また、私はNPO法人「環境と福祉を考える会」の理事も兼任しており、そこで地域と馴染みが深い寺院を有効活用する企画を進めています。災害時の避難場所として、また高齢者(認知症含む)のグループホームとして、地域の自治会とも連携したモデルづくりを目指しています。

さらに、介護施設や福祉団体、認知症関連団体、地域活動団体に向けての広報支援「24(ニーヨ(認知症予防))PR」のプロジェクトも近くスタートさせます。

ホームページ制作サポートをする事業者は多いのですが、マスコミなどへの広報業務をサポートしたり、関連団体との協業を推進してくれる事業者はあまりないので、プロジェクトを通じて認知症予防を関連団体とともに、全国的に推進したいと思っています。

私たちは認知症に関しては、「予防」のジャンルに軸足をおいて活動していますが、認知症の家族を持つ「家族の会」や若年性認知症の家族の方ともつながりがあります。ご家族から生の声を聞くことを通じて、“認知症になっても、その人の尊厳と今までの生き方・あり方を尊重し、当事者も、家族も安心して暮らし、生きることができる社会”の必要性をさらに強く感じるようになりました。

認知症になって余命宣告を受けたような、絶望するような社会にはしたくない。もし認知症になってしまったとしても、いろいろなサポートを得ながら、認知症と共に生きることに希望が持てる社会づくりに貢献したいと思っています。