市民活動ワクワクレポート内容
大阪市中央区島之内地域は外国ルーツの親子が多く、地域における孤立が懸念されます。
13年前に起きた悲しい出来事をきっかけに、島之内地域では子どもと親の孤立を防ごうという機運が高まり、子どもの居場所づくりが進められました。その中のひとつ、「こどものへや しま☆ルーム」代表の福井 潤一郎さんにお話をうかがいました。
学習支援や遊び、みんなで一緒にご飯を食べる…島之内地域初めての子ども食堂
しま☆ルームの主な活動内容は?
しま☆ルームは2017年に子どもの居場所としての学習支援や食事支援をすることを目的に活動を開始、通常は毎週水曜日、15:30から17:30は学習支援の時間としてボランティアと宿題をしたり、遊んだりし、17:30から18:30は食事をみんなで食べ、その後19:30までは高学年の学習支援といった活動を続けてきました。
ここはたくさんのボランティアのスタッフで支えられています。
特に募集などはしていないのですが、関わっていただいた方の口コミや紹介など、人づてで集まってきてくれます。老若男女、さまざまな職種の方々が自分のできる範囲でもできることをしようということで支えてくださっていて、とてもありがたいですね。
現在は新型コロナウィルスの影響で、一時的に学習支援は中止、ここでみんなで一緒に食事という形式はお弁当の配食に変更され、子どもたちに取りに来てもらったり、ご家庭へお届けする活動となっています。
過去に起きた悲しい出来事、地域の小学校校長との出会い、周囲の後押しで始められた
しま☆ルームの活動を始めたきっかけは?
私はもともとリタイヤ後に、何か地域に貢献できることがしたいと考えていました。たまたまテレビで子ども食堂のことを知り、これならできるかもしれないと思いました。
いろいろ調べたり、勉強をする中で、この島之内地域は海外から飲食店等に働きにきている人が多く、小学校も外国人の子どもの割合が他と比べて多い地域で、学習不安や、子どもの孤立・孤食の課題を抱える地域ということがわかってきたのです。
海外から来られた方は地縁やコミュニティがなく、困っていてもなかなか声を上げづらい状況にあると思います。
2008年に、この島之内でフィリピン人母子の無理心中があったのですが、同じ地域にある南小学校の当時の校長はその事件に心を痛められ、なんとか子どもたちの助けになることはないかと考えておられました。
その校長と後に知り合うことになり、交流するうち、何かあった時に相談できる人がいる居場所、子どもたちが安心できる居場所づくりを通じて孤立をなくしたい!というビジョンがどんどん膨らんで、校長を始め、周囲の方々の後押しもあり、しま☆ルームを始めることになりました。
コロナ禍のピンチを、同じ地域の他の団体との連携・協働で乗り切る
他の団体様との連携・協働についてお聞かせください
現在、新型コロナウィルスの影響でしま☆ルームでは学習支援は行っていませんが、近くのMinamiこども教室では学習支援が行われており、学習支援が必要な子どもたちにはそちらへ通ってもらい、逆に、Minamiこども教室で食に関する支援が必要な子どもは、しま☆ルームで配食という協働関係が成り立っています。Minamiこども教室と、しま☆ルームとはきょうだいのようなもので、Minamiこども教室も先の校長が関連して設立された団体です。
また、「中央区子どもの居場所連絡会」(事務局:大阪市中央区社会福祉協議会)では子どもの居場所づくりにかかわる団体が加盟、情報共有や子どもの支援を広げるための話し合いを行っています。
内部的な連携では、配食にかかわる飲食店や企業のご協力ということがあります。
コロナ禍によって職を失った親御さんやご家族にもお弁当を配っているため、例えば今日のお弁当は126食。100食を超えることは珍しくなく、他の子ども食堂と比較してもかなり多い方だと思います。
費用は基本、団体側で賄うので配食のみだと大変ですが、様々な飲食店や企業からの寄付が人づての紹介で集まったりなど、一部費用が賄われるケースも多くあり、助かっています。
例えば昨年の国民全員に配られた10万円の給付金を「僕は今、困ってないから」と全額を飲食店経由で差し入れ、寄付をしていただいた方もおられました。またその飲食店さんが「そういうわけならうちも」と差し入れていただいたり、こちらから1回の配食に足りない分を注文したら、別の機会に以前注文した飲食店さんから差し入れをいただいたりと、コロナ禍で苦しい中でも人の和から支援の動きが生まれてきています。
そうやって配られたお弁当の累計は、一万食ほどになります。
コロナは大変だが、子どもたちが安心して過ごせる居場所を守り続けたい
今後の抱負についてお聞かせください
しま☆ルームは食べることや配食がメインなのではなく、子どもの居場所づくりがメイン。食事は孤食対策と同時に、コミュニケーションのひとつの手段です。
ここに通ってもらっていろいろ話をして、一緒に勉強したり、遊んだり…人の温かみを感じられる活動をすること、これがしま☆ルームの本来の姿なのです。
でもこの1年くらい子どもたちとじっくりコミュニケーションがとれない状態が続いています。以前、通ってくれていた子どもで最近、全く顔を見ない子もいます。早くコロナが収まって、元のような活動に戻せたら…。
でもコロナが収まったとしても、家庭の状況がコロナ前くらいに落ち着くのは先になるでしょう。
それまで大変ですが、他の居場所と連携した島之内全体での子ども向けのさまざまな支援を行い、子どもたちが安心して過ごせる居場所を守り続けたいと思っています。そして、いつか人の温かみを感じられる本来の活動を再開したいですね。
<取材を終えて>
取材中、お弁当が用意され配達に向かうボランティアさんが出発したあと、ばらばらとお弁当を取りにくる子ども達がいました。
そんな子たちに福井さんは声をかけ、ちょっとした会話をされていて、応じている子ども達の表情を見ていると、ご近所付き合いの少ない昨今、気軽に声をかけられる存在って大事だなと感じました。