コラボ事例もいっぱい!市民活動ワクワクレポート内容

およそ日本人の男性20人に1人が色覚少数派で、多くの人とは色が大きく違って見えます。色覚多数派の見え方で創られてきた社会で、不便な思いや苦労をしている人がいることは、あまり理解されていません。色覚少数派の人たちにも優しいインクルーシブ社会をめざし、学校などを中心に啓発活動を実践されているNPO法人True Colors理事長 高橋紀子さんにお話を伺いました。

 

広告代理店時代に知らなかった「色の見え方の違い」

知った限りは、社会にお返ししたくて啓発活動スタート

 

色覚少数派の方への取り組みを始めたきっかけは何ですか

 

私は以前、広告代理店に勤めていました。広告の仕事ではたくさんの色を使います。自分が携わってきた広告に使った色が、自分が思っていたようには見えていない、例えば赤が茶色や黒っぽく見える人が20人に1人もいて苦労されているということを知った時はショックでしたし、自分が知らなかったことで不便な思いをさせてしまったと後悔しました。だから「色の見え方は、みんな違う」を啓発することで社会へお返ししようと思ったのです。

色覚少数派は障がいではなく、近視や遠視と同じように、その人によって見え方はさまざまということ。異常ではなく特性です。色覚少数派の中でも人によってそれぞれ見え方が違っています。

以前は小学校のころに色覚のテストがありましたが、2003年度に廃止されました。その後、自分が色覚少数派であることを知らないまま成長し、進学時や就職時に望んでいた進路に進めないという悲劇が多々起こりました。それを受けて2016年度に文部科学省の通達により、各学校で条件を整えて色覚検査が出来るようになりました。

色覚検査がされなかった間に色覚について正しく知っている人が少なくなっていましたので、それを補うことにつながれば、という思いで活動しています。

 

色の見え方が人によって違うのは個性

 

主な活動についてお聞かせください

 

色覚について、さまざまな見え方がある事を広めるために、学校や公的機関、企業団体を対象に、色の見え方の理解を広めるための講演と体験研修会を行っています。

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色覚少数派の人の見え方を多数派の見え方に近づける機能性色覚レンズがあります。人によって見え方はさまざまなので、その人にあった機能性色覚レンズを体験した時に「アッ!赤だ」「きれい!!いろんな色が見える!」とニッコリと笑った顔は忘れられません。選択肢の一つとしてこのレンズの存在をお知らせし、色覚少数派であっても諦めないで!!を伝えたいと思っています。
これとは逆に色覚少数派の人の色覚を体験する逆特性体験レンズもあります。例えば学校教員の方等は、受け持つ色覚少数派の児童や生徒の見え方がイメージでき、子どもに寄り添った指導に当たることが出来ます。また色覚少数派の子どもの保護者は、子どもの色の見え方を共有できます。それにより、子どもの見える色が理解できるし、日常生活の不便も解消できます。
体験は思いを共有する近道です。人は顔も、声も、性格も、背の高さも何から何まで違います。だから色の見え方がそれぞれ違って当たり前なんです。ともすればネガティブに伝わってきた色の見え方の違いですが、そうした偏見を子ども社会から払拭する為、ドコモ市民活動団体助成事業に応募しました。その結果、3年間助成金を頂き、小学生向け絵本、主に中学生向けDVDを制作することができました。絵本とDVDではどのように色覚少数派の人が色の見分けがつきにくいか、また、分かりにくい時の対処法などを具体的に掲載し、これらを使って子どもたちにも色覚少数派の特性について理解してもらえるようになっています。助成金の3年目にはそれらを披露するイベントを東京・大阪で実施することが出来ました。

今でも絵本、DVDは人気商品です。

 

色覚少数派は色の見分けがつきにくいこともありますが、逆に彩度で見分けることがとても得意という利点があります。商業デザインは多くの人にわかりやすい表現をすることが必要ですが、アートは違います。色覚少数派であることで独特の色の見え方ができ、強みになっていることも多いのです。ドコモの助成金で作ったDVDをデザインしてくれたデザイナーは色覚少数派です。

 

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クラウドファンディングや、YouTube講座への挑戦

 

新たに始められたことについて、お聞かせください

 

『「知る」ことは「寛容」と「智恵」を生み、幸せの糧になる』を基に、それまでの活動を見直してみました。

色覚少数派についてもっと広く知ってもらうにはどうしたらいいだろうと考え、私たちと同じ価値観、同じビジョンを持つ人々を触発し、共感できるものとしてクラウドファンディング「差異を楽しむ!ありそうでなかった、ダブルビジョンTシャツを制作!」に挑戦しました。クラウドファンディングはやったことがありませんでしたし、中でも特に苦労したのはダブルビジョンに見えるデザインでした。

このTシャツは色覚多数派には怪獣が、色覚少数派には大波が見えるようデザインし、一緒に赤と緑のシートがセットしてあります。赤と緑のシートを通して見ることで、擬似的に色覚の体験ができます。

 

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ある支援者が4人でこのTシャツを着て歩いていると、向こうからやってきた母親とお子さんの言い争う声が聞こえてきました。「波が見える」「イヤイヤ怪獣に見える」。

支援者は、なるほど!!と思いTシャツの特徴の説明をしてくださったそうです。ダブルビジョンTシャツは他にもいろんなエピソードが生まれています。私たちと接触したことも無い人々にまで共感を頂き、多くの人々のご支援のおかげでクラウドファンディングは成功しました。

クラウドファンディングを行うには1年半かかりました。True Colorsの事務所からすぐ近くに「コンセントカフェ」というスペースがあるのですが、そこがクラウドファンディングを成功させた事例としてテレビで放映されていたのを偶然見て、それ以来、コンセントカフェで会議をするようになり、協力もお願いしながら進めました。

コンセントカフェは現在のコロナ社会において試行錯誤しながら情報発信をしています。その一環としてTrue Colorsも「コンセントカフェZOOM店-生配信チャンネル」で2021年5月~7月まで10回にわたり、色覚について「COLORFUL WORLD 〜知らない色を楽しむ社会へ〜」の生配信をする機会をもたせてもらいました。私自身、配信をするにあたって、あらためて様々なことを学び直すよい機会にもなりました。生配信の様子はアーカイブとYouTubeで見ることができますので、ご覧になってくださったら嬉しいです。

https://www.youtube.com/watch?v=5To1OpV_iS4

 

それぞれの個性をお互いに理解し、誰もが生きやすく、共生できる社会づくりの一助を

 

今後の抱負をお聞かせください。

 

色覚少数派の人に今まで楽しめなかった絵の色の世界を楽しんでもらえるよう簡易な機能性色覚レンズを用意して、美術館でイベントをやってみたいと考えています。色覚多数派の方には擬似的に色覚少数派の色覚を体験できるキットを作り、体験してもらうことで意識を変え、色覚少数派の方が困らないよう、カラーバリアフリーな社会が広まっていくように、違いを楽しめる社会にしていきたいです。

子ども世代には「色覚」について不便が無いような、よりよい社会が誕生していることを願い、自分の色覚を知ることの大切さ、それぞれの個性をお互いに理解し、誰でもが生きやすく、共生できる社会づくりの一助となればと思っています。

 

<取材を終えて>
今回の取材で、色覚少数派の方の視界を体験できる逆特性レンズを試させてもらいました。実際に見てみると想像していたよりもずっと世界が違って見えました。色覚少数派は不便なことばかりでなく、その特性を活かすこともできるというお話もうかがって、知っているようで全然知らなかった色覚少数派の世界、もっといろんな人に知識として知ってもらって、いろんな人にとって幸せに生きることのできる世の中になるといいなと感じました。

 

大阪ローカルメディア ぼちぼち 今井きょうこ