市民活動ワクワクレポート内容

2001年に設立、今年20周年となる認定NPO法人トゥギャザーは、「障がい者と社会の架け橋に―」をモットーに、障がい者の自立・社会参加の支援活動を展開する中間支援団体で、大阪府から認定を受けた最初の認定NPO法人でもあります。

常務理事・事務局長の別府一樹さんにお話を伺いました。

 

全国社会福祉協議会主催の福祉販売会で福祉事業所が直面する課題を知り、団体を設立

 

事業の立上げと経緯についてお聞かせください。

 

トゥギャザーの初代理事長は、もと積水ハウス株式会社で営業部門を率いた故・中條桂です。積水ハウス退社後、積水ハウス梅田オペレーション株式会社の代表取締役社長をしていた20年ほど前に、管理する梅田スカイビルで障がい者の手作り商品の大阪大会が開催されるにあたり会場の提供を行いました。

開催に至るまでの過程、福祉事業所の皆様とのさまざまな交流を通じ、中條は、障がい者の皆さんは頑張って色々なものを作っても、なかなか売れない(売る機会に恵まれない)ということ、それも影響し、障がい者の方の収入があまりに少ない現実を知りました。

そのような課題を解決し、障がい者の自立・社会参加のための手助けをできないだろうかと考え、福祉作業所の販路開拓や、共同受注・生産のネットワーク構築を目的に当団体を設立しました。

 

課題にぶつかってはアイデアを出し合い、事業の付加価値を高める工夫

 

事業の内容についてお聞かせください。

 

現在の事業の柱としては、1.販売支援、 2.啓発活動、3.住環境コーディネートの3つになります。

 

▽販売支援

トウギャザーが繋ぎ役となって、障がい者福祉事業所や企業や行政など、さまざまな関係者と連携して販売の支援をしています。具体的には、障がい者福祉事業所で作られた商品を、企業のノベルティとして採択いただいたり、市民の皆さんに買っていただく機会を作ったりしています。

当初は、雑貨商品を企業のノベルティへ繋ぐことを主として活動していましたが、お菓子や食品を取り扱う福祉事業所が増えたことに伴い2014年に、大阪・梅田スカイビルの滝見小路に「パティスリーとっと」をオープンしました。

これまで全国で約300を越える障がい者福祉事業所と取引させていただき、その中からピックアップした商品を企業に提案したり、販売品として扱っています。

以前は年70回を超える販売会を開催してきましたが、最近は新型コロナウイルスの影響で、あまり出来ません。

商品の付加価値をより高めるため、例えばお菓子の場合は、大阪の辻学園調理・製菓専門学校ご協力のもと、お菓子作りを障がい者の人や事業所のスタッフに教えていただきました。プロから学んだおいしいお菓子は間違いなく売り上げの向上に繋がっていると言えるでしょう。

また、クラウドファンディングにも挑戦し、「プロと一緒に売れる逸品・モノづくり」として、いろいろな障がい者福祉事業所とともに、チーズケーキやエコバッグづくりを行っています。さらに、「ホームメイドセレクション」として、全国各地の食品などを、毎年取扱品目を更新し、2ヶ月に一度定期便として届ける頒布式事業も行っています。

最近では、布製マスクづくりも行い、百貨店が主催した「マスクマルシェ」のイベントにも参加しました。また、忘れ物の傘や、使わなくなった傘をリユースして新しい商品を作る企画にも参加しています。

ユニークなところでは、SDGsの木製バッジ製作があります。国連より、許可を取得して製作・販売しています。その話を耳にされた大阪ガスの野球部から、SDGs木製バッジの材料として、折れたバットの木を寄贈しますとのお話もいただき、北海道の事業所さんで作っていただいています。

 

トゥギャザー1

 

お菓子の写真

 

 

▽啓発活動

障がいのあるなしに関わらず、平等に生活できる社会を実現させる「ノーマライゼーション」の考え方を普及させるための啓発活動を行っています。

毎年、障がい者週間協賛行事の大阪実行委員会のメンバーとして、手づくり作品展示・販売会などを梅田スカイビルで開催してきました。今年も、イベント事務局をトゥギャザーが担当する予定になっています。

また「チャレンジふれあいフェスティバル」も、トゥギャザーが主催、積水ハウス株式会社協賛で企画中です。

イベント写真2

 

 

▽住環境コーディネート

障がい者グループホーム建設のサポートを積水ハウス株式会社の協力を得て、行っています。

現在、障がい者の高齢化問題が顕著化してきています。

障がい者福祉のカテゴリーから高齢者福祉のカテゴリーへとは、なかなかうまく移行しにくいのが現状です。また、障がい者の高齢化に伴い、グループホームも必要とされる時代になってきています。そこで、土地運用を考えている方々等に、グループホーム建設を提案し、建築後は運営する福祉法人が一括で借り上げ、家賃として事業所が支払っていく仕組みを考えました。双方にメリットはあると考え、セミナー等を通じて、説明し、ご提案をしています。

セミナー写真

 

 

障がい者の方々の課題に対して同じビジョンを持ち、向き合っていただける方々と連携

 

今後の抱負についてお聞かせください。

 

障がいのある人たちの願いである「まちで普通に暮らしたい」を実現するには、私たち中間支援組織の役割は重要だと思います。だからこそ、さまざまなことを事業化し、展開してきました。でも最近、ふと思うことは、福祉だからやってあげなくてはならない、と考える時点で、差別や区別になるのではないかと。そして福祉事業所のさらなる自立を考えると、本来は、それぞれの障がい者福祉事業所が独自でノウハウを蓄積し、販売などで利益をあげられるのが理想であると考えます。

現在、販売品の売れ筋をデータ化して事業所にも還元していますが、それを分析して活用し、しっかりと売り上げを確保できている事業所もいくつかあります。事業所の役に立てる支援を引き続き継続していきたいです。そして、今後は、これからの障がい者の方々の課題に対して私たちと同じビジョンを持ち、向き合っていただける方々と連携し、共に事業を展開したり、協働することによる事業発展事例をもっと増やしていきたいと考えています。

 

取材・記事作成:認知症予防サポート協会  鳴川 正