市民活動ワクワクレポート内容

毎年大阪市では区単位で区民まつりが開催されます。しかし2020年初頭からの新型コロナウィルスの流行でどの区も開催を見合わせる中、浪速区は、日本初のオンライン区民まつり「ON祭」を開催、大きな盛り上がりをみせました。その仕掛け人であり、クリエイティブの力でまちを盛り上げよう!と、さまざまな活動をされている株式会社KASIKA。代表 藤原聖仁さん(写真右)と、共同代表でKASIKAが運営するクリエイティブスクール「CREA/Me」代表を兼務されているコバヤシタカシさん(写真左)からお話をうかがいました。

 

区民まつりをオンライン生配信!浪速区の魅力を発信し、他地域からの流入も視野に

 

日本初のオンライン区民まつりはどのようにしてできあがったのでしょうか?

 

地域活性、行政と区民、区民同士がつながるために、区民まつりはまちづくりにおいて、重要な役割を果たします。何とかして区民まつりをやりたい!そんな思いから、まちづくりセンターも含めた「区民まつりオンライン配信」の企画が立ち上がりました。

オンラインだと安全ですし、全国から見ることができます。浪速区の魅力が全国へ発信でき、他の地域の人に浪速区に住んでみたいと思ってもらえたら、という思いもありました。

バラエティ番組のようなノリで浪速区の持つ「おもろい大阪」なイメージを出しながら、コロナ禍でも負けずに明るく、いろんな人ががんばっていることを伝えられるように、全体のプログラムを考えました。

どうやって誘導するかという点で、広報はとても重要です。ホームページや広報誌、ポスターなどの紙媒体は、「おしゃれ!」→「面白そう!」と、目にした人に感じてもらえるよう、デザインを工夫し、TwitterやFacebookなどのSNSも活用、実際に街に出て告知もしました。

 

人を巻き込む、人がつながる、そして広がっていくツールとなった「ON祭」

 

「ON祭」の成果としてはどんなことが挙げられますか?

 

最初は年配の方などから「オンライン?よく分からないなぁ。無理無理。」などと言われたりもしましたが、友人やお子さん、お孫さんなどが「ON祭」に出演されると、分からないなりにもどうにかして見てくれました。これを機にネットにつながる経験をし、ネットへの抵抗が軽減され、自分なりに学習するなどネットリテラシーの向上にもつながったようです。それは今後、災害などでタイムリーに情報を受け取るうえでも役立っていくことだと思います。

出演者側も体験してみてオンラインへの敷居が下がったのでしょうね。一度やってみたら、どのようなものかが分かったようで、こういうのなら出てみたいという人が増えています。また、日本で初の試みでしたし、「ON祭」動画自体もアーカイブとして残しているので、イベント後も多方面からアクセスがあります。オンライン区民まつりのフォーマットとして他の自治体にも活用いただけているようです。自分たちが関わったことで行政サイドに、クリエイティブな表現がまちづくりに活かせること、可能性を感じていただけたなら、嬉しいですね。

「ネットを使えない人もいるから」という意見は、まちづくりにおいて、必ず出てくる課題です。でも私たちは、「区民みんなが見られないとだめというのではなく、面白いからやってみましょうよ!」と少しずつ周りを巻き込んでいきました。できない人に合わせるより、「まずはやってみよう!」と思う人と一緒に、最初の一歩を踏み出すことですね。実行することで、少しずつ浸透し、次の一歩へとつながっていくように感じます。

 

自分たちが事務所を構えたこのまちをもっと良いまちにしたい!だから行政とつながる

 

行政とお仕事をするにあたり、どのようにしてすすめましたか

 

行政の仕事は予算や制約が多いイメージがあるので、なかなかクリエイターにとっては参加しにくいと思われているところもあります。ですが、3年前にこのまちで事務所を構えるようになって、浪速区をもっと面白く良いまちにしたいと思い、区長さんへ、クリエイティブを使ってまちを明るく、安心安全にするアイデアを提案したことがあります。その場ですぐに話が進むことはなかったものの、その後は行政のイベント「ごみゼロ大作戦」などに参加・提案をしたり、地域に関わることが増えて、信頼を得られるようになってきたと思います。そんな折、新型コロナウィルスが蔓延しはじめ、「ON祭」を実施、成功しました。

もし、新型コロナウィルスがなければこのような機会はなかったでしょうから、ある意味、オンラインに舵を切るきっかけだったともいえます。

 

恒例行事「ごみゼロ大作戦」の進化、子どもたちの居場所づくり…さまざまな活動展開

 

他の活動についてお聞かせください。

 

まちの清掃活動の「ごみゼロ大作戦」ではアートで彩ったごみ箱代わりのバケツを設置するなどし、単なる清掃活動ではなく、みんなが楽しめるイベントにしました。また、地域の子どもたちの第三の居場所を作るためのクラウドファンディング「わになれなにわプロジェクト」も行い、プロジェクトは無事成立。子どもたちへのワークショップや社会見学などさまざまな活動を行っています。

 

KASIKA1

 

また、まちを明るく、面白くしたい!との思いから、事務所近くの南海電車 単線ローカル駅 汐見橋駅のレトロな駅舎の壁面にアートを描きました。ここを通る人が見るたびに元気になってもらえたら。今ではここは撮影ポイントにもなっています。

その他には天神橋3丁目商店街を盛り上げるイベント「天3CREATIVE STAND」を行いました。商店街にクリエイターが屋台を出したりなど、いろいろ仕掛けました。自分たちがクリエイティブな活動を行うだけでなく、クリエイターを育成する学校「CREA/Me」も運営していて、ここからもさまざまな活動が生まれています。

 

KASIKA2-2

 

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クリエイターには、これからどんどん社会に混ざっていってほしい

 

今後の抱負として

 

これからの日本を強くするひとつの方法として、クリエイティブが行政などに入っていくことが有効だと思っています。残念ながら現代の日本はクリエイティブやアートの価値が理解されにくいと思っているので、クリエイターの価値を上げたいです。そのためには身近な暮らしの中でクリエイターの力を発揮できれば、もっと社会は住みやすく面白くなると思うんです。だから、クリエイターには、これからどんどん社会に混ざっていって欲しいです。行政とクリエイターが連携するとなると、価値観の相違や、対話が少ないせいでうまくいかない時もあるかもしれません。でもあきらめず、いいものを作るためにコミュニケーションを密にして対話を増やし、いいものを作る努力がお互いに必要だと思っています。

自分たちは、これから活動するクリエイターの水先案内人であるために「クリエイティブというのはこんなふうに使っていくんだ」と示せるようにいろんな事をやっていき、自分たちから発信する活動もどんどん行っていきたいと思っています。

 

取材を終えて

 

行政とクリエイティブというのは、なかなか繋がりにくいのではと思っていましたが、以前からじわじわと行政に働きかけ関わってきたKASIKAのお二人のお話からは対話の重要性と人とのコミュニケーションの大切さ、まずはやってみる行動力の重要性を感じました。それと同時にアートやクリエイティブな活動の可能性はまだまだ大きく、これからの日本が面白くなるために必要なものだと実感しました。今後のKASIKAやCREA/Meの活動はどんなものになるのだろうと思うととても楽しみです。

 

次回の浪速区オンライン区民まつり「ON祭」

2022年1月23日(日曜日) 11時から開催予定

https://naniwaku-matsuri.com

 

 取材・記事作成:大阪ローカルメディアぼちぼち

今井 きょうこ