市民活動ワクワクレポート内容

●開催の経緯
日本基督教団 南大阪教会は、大阪市阿倍野区阪南町にあるキリスト教の教会で、2026年に創立100周年を迎えます。
建築家村野藤吾さんが設計・監督した建築ということで、ファンの方には知られています。
また、隣接する南大阪幼稚園には童謡「サッちゃん」の歌碑があります。
南大阪教会は、創立100周年に向けて、老朽化した教会施設のリニューアルや、地域に開かれた教会をめざしたいと考え、阿倍野区役所に相談に訪れました。 この相談をきっかけに阿倍野区でまちづくりに関わる増田簡さんが関わることになりました。
その増田さんからの依頼を受け、歴史ある教会建築の保全と市民活動のネットワークづくりを目的としたハイパーセミナーを開催することになりました。
ハイパーセミナーの司会は、増田さんにお願いしました。
●ハイパーセミナーの内容
①教会の歴史と現状
まずは、南大阪教会の尾島信之牧師から、南大阪教会の歴史と現状についてお話いただきました。
約100年前、畑ばかりの場所に初代の礼拝堂が建てられたことや、村野藤吾さんのエピソード、耐震診断を受けることになったことなどについて語られました。
②建築の専門家による講演
続いて、建築の専門家のお二人による講演です。
京都工芸繊維大学准教授の笠原一人さんは、村野藤吾研究の第一人者で、京都モダン建築祭の実行委員長や神戸建築祭の実行委員も務める建築史家です。
笠原さんから、村野藤吾が設計した南大阪教会の建築について、初期のコンクリート建築からの影響と独自のアレンジ、1981年に献堂された礼拝堂の複雑なデザインなどについて詳細にご説明いただきました。
近畿大学教授の高岡伸一さんは、古い建築の改修工事に多く携われておられる他、生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪(イケフェス大阪)の事務局長も務めておられ、大阪を代表する建築の専門家です。
※イケフェス大阪は、毎年10月末頃に開催されているオープンハウスイベントで、日ごろ内部を見ることのできない建築を自由に見学したり、見学ツアーに参加することができるイベントです。今年2025年も、10月25日(土)、26日(日)に開催され、南大阪教会もプログラムに参加しています。
高岡さんからは、南大阪教会と関わることになったきっかけや南大阪教会の耐震診断についてご説明頂きました。
耐震診断の結果は、「思ったよりも悪くなく」、現行基準を満たさないものの補強すれば基準をクリアできることが判明し、基礎もしっかりしていることです。
今後の課題として、具体的な補強設計、資金調達、そして国の登録有形文化財(※)としての外観や価値を維持しつつ、狭い内部空間や上階へのアクセスをどうするかという問題があることをご説明いただきました。
※南大阪教会は、2025年3月に国登録有形文化財(建造物)として登録することについて文部科学大臣に答申されています。
その後の高岡さんと笠原さんによるクロストークでは、あらためて村野藤吾建築の特徴や南大阪教会の建築の魅力について語って頂きました。
笠原さんからは、階段が構造補強になるような付け加え方ができないか、という提案もありました。
お二人ともとてもお忙しい方なので、貴重なトークセッションになりました。
③クラウドファンディングと地域との関わりの提案
続いて、桃山学院大学特任教授の伊澤映子さんから、教会施設の保全に関するクラウドファンディングの資金調達と返礼品の事例紹介と、今後の教会で行う市民活動や地域貢献活動について提案をいただきました。伊澤ゼミの4人の学生も一緒に登壇していただきました。
コンサート、講演会、寄席などの会場としての役割、子育て支援団体や地域との連携・交流、村野藤吾建築に関する施設、などのご提案をいただきました。
④ワークショップ
最後に、これまでの先生方の説明を受け、参加者が4つのグループに分かれてワークショップを行いました。
クラウドファンディングの返礼品案を考えるグループと、地域における教会の活用法について考えるグループに分かれていただきました。
オンライン参加の方からもご意見を伺うことができました。
みなさん、熱心に意見を出していただき、様々な案があがりましたので、今後の教会での活動の参考になったのではないかと思います。
●むすびに
今回のハイパーセミナーは教会の礼拝堂での開催で、いつものハイパーセミナーと趣が異なり、特別な雰囲気がありました。
参加者は、他の教会関係者、建築関係者、村野藤吾などの建築ファン、まちづくりに関わる人など計52名でした。
オンラインでも10数名の方がご視聴いただきました。
建築の専門家、地域活動について学ぶ大学のゼミ生と先生、そして参加者が一同に会し、南大阪教会の今後について考える貴重な場となりました。
シミポタ運営事務局では、引き続き南大阪教会の今後の活動について注目して参ります。
シミポタ運営事務局




















