社会課題と市民活動内容
令和5年度 老人保健事業推進費等補助金
「認知症及び軽度認知障害の有病率調査並びに将来推計に関する研究」によると、2022年の認知症高齢者数は約443万人、軽度認知障害(MCI)の高齢者数は約559万人と推計されています。
また、令和6年度障害者白書によると身体障害者(身体障害児を含む。) 436 万人、知的障害者(知的障害児を含む。) 109 万4千人、精神障害者614 万8千人となっています。
日本の認知症高齢者や障がい者が
どうすれば意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けることができるのか
その課題解決のヒントになるのではないかと
今回、年齢・体格・障がいの有無に関係なく誰もが楽しめるスポーツ「ミニらいとモルックⓇ」の普及に取り組む、一般社団法人ミニらいとモルック協会理事・歌丸和見さんにお話を伺いました。
ミニらいとモルックⓇは、フィンランド発祥のスポーツ「モルック」をもとに、道具を小型化してアレンジしたものです。木の棒(モルック棒)を五分の一サイズにし、木製ピン(スキットル)に向かって投げ、倒れたピンの本数で得点を競います。誰でもすぐにプレーできる手軽さが特徴で、高齢者にも、子どもにも、障がいのある方にも大人気です。
「ただのレクリエーションじゃない。社会を変える力があるスポーツだと思ったんです」
そう語る歌丸さんは、一般社団法人認知症予防活動コンソーシアム代表理事でもあり、認知症予防活動に取り組む中で、「高齢者と子どもをつなぐスポーツが必要だ」と感じていたと言います。あるイベントでミニらいとモルックⓇを導入したところ、これまでのどんなプログラムよりも参加者の笑顔があふれ、「これが未来のスポーツだ」と確信。2023年3月、正式に協会を設立しました。
予想のつかない未来に、心がひらく
このスポーツの本当の魅力は、「支援される側」「守られる側」といった固定観念を、自然と取り払ってくれることにあります。
「認知症の方や障がいのある方が、時に周囲をリードすることもある。勝敗が運や偶然に左右されるからこそ、誰にでも主役になれる瞬間があるんです」と話す歌丸さん。
実際にミニらいとモルック大会【オレンジリンピック】に参加した筆者も、まさにその光景を目の当たりにしました。年齢も障がいも関係なく、初めての家族連れが経験者に勝利する場面もあり、会場は歓声と笑顔に包まれていました。
木の棒が倒れた瞬間、笑い合うだけで心がつながる——それが、ミニらいとモルックⓇの力です。
地域とともに、企業とともに広がる輪
ミニらいとモルックⓇは、地域イベントや企業研修にも活用されています。ある企業が主催のイベントでミニらいとモルック大会【オレンジリンピック】を開催すると、なんと350人を超える集客に成功。
スポーツが企業の認知度アップや新人研修にも活かされるなど、ビジネスシーンでもその価値が認められつつあります。
参加者同士が協力し合い、障がいのある方とも自然にコミュニケーションが取れるため、社員教育にも最適だという声が上がっているそうです。
世界へ羽ばたく、ユニバーサルスポーツを目指して
「オリンピックは健常者、パラリンピックは障がい者。だけど、本当に分ける必要があるんでしょうか?」
事故や病気、老いは誰にでも訪れる可能性があります。それでも、どんなステージの人生でも楽しめるスポーツがあれば、それは「生きがい」になり、「文化」になっていく。
そのツールの一つとして「ミニらいとモルックⓇ」が社会に役立つのではと語る歌丸さん。
このような社会活動の輪が広がっていくことを願っています。
取材・記事作成:シミポタ運営事務局(大山 智現)
引用文献
・令和5年度 老人保健事業推進費等補助金
「認知症及び軽度認知障害の有病率調査並びに将来推計に関する研究」
https://www.mhlw.go.jp/content/001279920.pdf
・内閣府令和6年度障害者白書
https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/r06hakusho/zenbun/pdf/ref.pdf