社会課題と市民活動内容
●社会課題:子どもたちの交通安全
警視庁ホームページ「各種交通事故発生状況(令和6年中)」の「小学生の交通人身事故発生状況」によると、コロナ禍の時期を除くと毎年1,000人前後(コロナ禍の時期を除く)の小学生が事故に遭っており、令和6年度も1,003人が事故に遭っています。残念ながら毎年数名の死亡事故も発生し、痛ましい事故が繰り返されています。
出典:警視庁ホームページ「各種交通事故発生状況(令和6年中)」P1
令和6年の事故についての状況を考察してみましょう。
・道路形状別発生状況
出典:警視庁ホームページ「各種交通事故発生状況(令和6年中)」P6
交差点での事故が48.6%、交差点付近での事故が6.5%となっており、過半数の事故は交差点や交差点付近で発生しています。
・歩行中の発生状況「事故類型別発生件数」
出典:警視庁ホームページ「各種交通事故発生状況(令和6年中)」P9
横断歩道での事故が33.7%、横断歩道付近での事故が3.7%となっており、3分の1以上の事故は横断歩道や横断歩道付近で発生しています。
・歩行中の発生状況「違反別発生件数」
出典:警視庁ホームページ「各種交通事故発生状況(令和6年中)」P9
30%弱に何らかの違反があり、飛び出しが16.3%と一番多くなっています。
・歩行中の発生状況 「通行目的別発生件数」
出典:警視庁ホームページ「各種交通事故発生状況(令和6年中)」P10
登下校時の事故が過半数を占めています。
つまり、小学生の事故は、登下校の時間帯に、交差点の横断歩道で大人が見守り活動をすることで、多くの事故が防げる可能性が高まると言えます。
実際にPTAや保護者や町会などの地域住民が横断歩道等での見守り活動を行っているところもありますが、少子高齢化や共働き世帯の増加により、子どもたちを見守る目が少なくなる中、企業の組織力を活かした継続的な活動が期待されています。子どもたちの安全な通学路の確保は、社会全体の重要な課題です。
出典:警視庁ホームページ「各種交通事故発生状況(令和6年中)」
●市民活動の事例:企業による事故防止への取組
上記のような状況に対し、地域社会の一員である企業が、その資源や人材を活用して見守り活動を行うことは、子どもたちの安全確保に大きく貢献するだけでなく、企業の社会貢献活動としても意義深いものです。
企業による交通事故防止見守り活動の現状、意義、一般的な活動内容について考察し、最後に具体的な取組をされている住之江区のタカエスオートの事例を紹介します。
①企業による見守り活動の現状と意義
一部の企業では、CSR(企業の社会的責任)活動の一環として、地域貢献や次世代育成の観点から、通学路での見守り活動を自主的に行っています。従業員がボランティアとして、出勤前や休憩時間、退勤時などに、学校周辺や危険な交差点などで子どもたちの登下校を見守る活動は、地域住民や学校関係者からも高く評価されています。
②企業による一般的な活動内容
企業による見守り活動は、企業の規模や業種、地域特性に応じて様々な形で行われています。
活動の事例をご紹介します。
・通学路での旗持ち・声かけ
従業員が通学路の要所や危険な交差点に立ち、旗を持って子どもたちの安全な通行を促したり、「おはよう」「気をつけてね」と声かけを行ったりします。
・交通安全教室の開催
企業の会議室や研修施設などを活用し、専門家を招いて子どもたちや保護者向けの交通安全教室を開催します。自転車の安全な乗り方や歩行時の注意点などを教えることで、事故防止に繋げます。
・危険箇所の情報提供
従業員が通勤途中や業務中に気づいた通学路の危険箇所(見通しの悪い交差点、歩道の損傷など)を学校や自治体に情報提供し、改善を促します。
・ドライブレコーダー映像の提供
運送業など車両を多く保有する企業では、事故発生時の状況把握に役立つドライブレコーダーの映像を、学校や警察に提供することが考えられます。
・啓発グッズの配布
企業ロゴ入りの反射材や交通安全に関する啓発グッズを作成し、地域の子どもたちに配布することで、交通安全意識の向上を図ります。
・地域イベントへの参加
地域のお祭りやイベントなどにブースを出展し、交通安全に関するクイズやゲームなどを通じて、子どもたちに楽しく交通ルールを学んでもらう機会を提供します。
③タカエスオートの取組
新車・中古車販売のタカエスオート(住之江区)では、見守り活動、車販やサービスの売り上げの一部を交通事故の防止活動や被害者遺族への支援に充てるプロジェクトを展開しています。
専務取締役の髙江洌 将さんにお話を伺いました。
・交差点での下校時の見守り「おかえりデー」活動
毎週金曜日の下校時間帯にタカエスオートのスタッフが立ち、旗振りや声かけを行っているそうです。
一緒に活動しませんか?と呼びかけたところ、2社が活動に賛同してくれるようになったのが嬉しい、と髙江洌さん。
特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人健正福祉会は月曜日と木曜日を担当し、外食産業向けの業務用卸売業の尾家産業株式会社は水曜日(火曜日)を担当してくれるようになり、一つの交差点では交代で見守り活動を実施できるようになりました。
別の交差点を担当してくれる企業さんを募集しているそうです。
・Everytimeプロジェクト~整備する度に、街に笑顔を増やしてく~
Everytimeプロジェクトとは、車の販売や車検を扱う会社だからこそ交通事故防止や交通事故の遺族支援に貢献したい、という髙江洌さんが考えたプロジェクトです。
「経済活動が繰り返される度に、誰かの助けや希望ある未来へと還元される仕組みを創っていきます。
世の中に混在する様々な社会課題に対して取り組むことで、地域企業が連携しながら地域を支えていく。
また、関わってくれるお客様が、それぞれの社会課題に触れ、少しでも『自分事』として考えていけるような社会になればと願っています。
参画企業やお店が増えていけばいく度に、優しい社会へと変わっていくはずと信じて。」
1台販売する度に、1台車検をする度に、1台オイル交換する度に・・・一定金額の寄付をすることに決め、半分は遺族支援に、半分は事故防止に充てるそうです。
遺族支援は、交通事故被害者遺族への支援として公益財団法人大阪交通災害遺族会に寄付され、事故防止は、小学生向けの交通安全講演会の講師料や、トラックドライバー向けの講師料に使われる予定だそうです。
このプロジェクトは車の販売会社だけではなく、いろいろな業種の企業や店舗も関われるそうで、参画企業を募集しておられます。
参画企業が増え、定期的に集まって情報共有や交流会を行えるようにしたい、というのが髙江洌さんの当面の目標だそうです。
最後に髙江洌さんの思いのこもったメッセージをご紹介します。
5%が変われば、社会は変わりだす。
私たちは微力であるが無力ではない。
髙江洌さんの、交通事故で悲しむ人をなくしたい、という思いが広がりますように。
シミポタ運営事務局
尾谷伸也