市民活動ワクワクレポート内容

地域の一等地での商売ができる商店街は地域活性化の担い手、地域コミュニティを形成する「場」として地域に貢献してきました。しかし、時代の変化と共に、衰退する商店街も少なくありません。そんな地域課題を解決する一大プロジェクトが西淀川区で行われている「商店街にぎわい再生事業」です。国際色豊かな地域ならではの工夫とは?「インターナショナル出来島きら★きら通り(出来島商店会)」会長の小西明さんにお話を伺いました。

 

 

小西さん

 

インターナショナル出来島

きら★きら通り(出来島商店会)

 

会長 小西 明さん

 

株式会社ゆうせい薬局

代表取締役

 

薬剤師

 

西淀川区薬剤師会 会長

大阪西淀ライオンズクラブ 会長

 

 

外国からの移住労働者が多い地域性を活かしたフェスティバルの開催

出来島商店会ではどんな取り組みをされているのですか?

 

ちょうど1年前になりますが、商店会のアイデンティティを打ち出し、地域とのコミュニケーションを深めようということで、「出来島商店会」から、「インターナショナル出来島きら★きら通り」という名称に変更しました。西淀川区は工場が多いので、外国、特に南米からの移住労働者が多いんですよ。新しい名称に「インターナショナル」と入れているのは、そうした国際色豊かなまちの特色をうまく打ち出せると考えたからです。

11月23日(祝)に、「西淀川区の魅力発見」をテーマに西淀川区商店街にぎわい再生実行委員会(西淀川区商店振興協議会・大阪市漁業協同組合・西淀川区役所)主催の「商店街にぎわい再生イベントin出来島」と、私たちが主体となって行う「インターナショナル出来島きら★きらフェスティバル(通称:きら☆フェス)」を開催します。「商店街にぎわい再生イベントin出来島」は地域活動協議会や企業、商店、地元の高校など、さまざまな組織と協働して実施しています。きら☆フェスでも「インターナショナルと打ち出し、ワールドグルメの出店、ラッフル(景品抽選会)、南米のダンスや歌などを楽しめるイベントなど、盛りだくさんのプログラムとなっています。

あと、今年は台風の影響で中止となってしまいましたが、「にしよどワールドフェスタin 出来島JULINA & PERUANA」というブラジルの伝統的なまつり「フェスタジュニーナ」を模したイベントも実施しています。もともと、外国人の子どもの学習支援教室が母体となり始まったチャリティイベントが形を変え、年々規模を拡大してきた経緯があります。今年はブラジル、ペルー、モンゴル、フィリピン、日本ならではの催しもあり例年以上に多国籍なまつりになる予定でした。

いずれの催しも、西淀川区在住の外国人やその友人が中心となって行います。ここで暮らす外国人は繋がりがとても強く、フェスタの開催が決まると積極的に友人に声をかけて集客に協力してくださいます。今年は日本人より外国人の方が多いまつりになるかも知れません。

 

 

商店街を活性化させたいという共通の思いを持つ仲間が集まることが大事

「商店街にある薬局」という枠を超え、他者と協働しながら活動を拡げてこられたきっかけは何ですか?

 

商店街を活性化させたいという気持ちがあるからです。

昔と違い、今はスーパーやコンビニができて、商店街の名前だけは残っているものの、営業している店はわずか…というところもあります。地域の結びつきが希薄になり、お互いにあいさつもしなかったり、誰が何をやっているかも知らない。例えば、電気屋さんをやっているのは知っているけど行かない、せっかくコミュニティの基盤があるのに勿体ないと思いました。

どうすれば、昔のようなにぎわいを商店街に取り戻せるだろう、と思っていても一人の力では何もできません。同じ思いを持つ仲間同士が自然な流れで合流したのを機に、積極的に交流をもつようにしました。「考えを共有し、共感し合うことで協力し合うことができる」と今では強く実感しています。スタンスとして、まずはできることから始めることですね。

商店街のどこに何があるのかがわからない。―じゃあ、わかるようにしよう―目にする機会を増やせばいい―そういう発想で小さなことから取り組み、改善していきました。案内掲示板を出来島やその周辺で10箇所くらいに増やしたり、その際、いろいろなイベントの告知も併せて行うなど、人に来てもらうための広報を積極的に仕掛けました。

 

 

些細なことでも、すぐに始められることからスタートする。

そういった活動を約4年されてこられて、感じておられることをお聞かせください。

 

さまざまな催しを通じて、外国人や地元の高校生たち、担い手としての地域のさまざまな組織との絆ができ、地域住民の方に商店街がにぎわいを取り戻すためにさまざまな活動をしていることを知っていただいて、応援していただけるようになりました。

しかし、課題もあります。こうした活動を積極的にしているからといって、商店街にある個々の店を元気にすることは難しいです。ただ、横の繋がりをつくる機会になっていることは確かです。今後、商店街にぎわい再生への思いを同じくする担い手がどんどん参画してくださり、多様な考えに触れ、互いに刺激を得ながら、さらに活動を充実させることにつながるといいと考えています。

地域の課題として、外国人との円滑なコミュニケーションがあります。外国人の立場に立って、孤独感、疎外感をなくすことは、商店街のいち薬局としてできることがあるのではないか?

私の薬局では、外国人向けの処方箋を扱っています。言語の不安は、もともと多国籍、異文化に馴染みの薄い日本では、大きな孤独感、疎外感にも繋がります。私どもの薬局でも多国語に対応したカルテや、どこがどう痛いか、具合が悪いのかを指差しして相手に伝える表を作成したり、外国人が困った時に頼ることのできる簡単なガイドブックを作成したりしています。私のところだけではなく、商店街の店ごとに、多文化の言葉で「ウエルカム」という気持ちを伝えるような表示を心がけています。

 

案内版1 案内板2

 

 

外国人、定年後男性…多様な人たちが活躍できるまちにしたい

今後の展望などございましたら、教えていただけますか。

 

最近では大阪に外国からの観光客が多く訪れますが、ホテルでも素泊まりが多いと聞きます。今度、出来島にホテルができるのですが、その宿泊客を商店会に呼び込めないかと考えています。ただ、どれぐらいの人が来られるかは想像できないので、しばらくは様子を見ながらになると思います。でも、中国語の表記を商店街でも取り込んでいこうという動きはあります。店にそういった表記をしているということは、お客様が慣れない日本語で話しかけなくても、こちらが「ウエルカム」であることが伝えられますからね。

また、商店街の店舗情報を掲載した「グルメガイド」を製作しています。これも多国籍に対応できる外国語表記をしています。外国に行ったら、何を食べればいいかわからない方も多いですよね。お店探しに苦労せず、悩まずお腹いっぱいに食べることができる、出来島で気楽に食を楽しんでもらうという試みです。その店ならではの名物料理を味わってもらうことも良いかもしれません。薬局に来る外国の方からも、「地図をください」「どこか良い飲食店はありますか?」といったことは頻繁に質問されますので、このアイデアも具体的に検討していきたいです。

また、私は西淀ライオンズクラブの会長を務めていますが、定年後の男性が孤独感や無気力感を感じずに第二の人生を楽しながら、社会人の時とはまた違ったことにチャレンジできるようなコミュニティを形成しようと考えています。特に団塊世代の男性は、仕事優先で生きてきた人ばかりで、地域活動には一切参加したこともなく、PTAも参加したことがないという人も少なくありません。そういう人ほど、定年後にいきなり自由な時間を与えられても、何をしたら良いかわからず途方に暮れる方が多くいらっしゃいます。そうした方々に居心地の良い場所を提供したり、これまで培われたご自身の経験や能力を活かして「よっしゃ!やったろか!」と地域活動に自然に取り組んでいけるような流れを、つくれないかと思っています。担い手として地域活動に新たに加わってくださることで、また多様なアイデアが増幅され、まち全体の活性化につながっていくと思います。

 

 

<商店街にぎわい再生イベントin出来島&インターナショナル出来島きら★きらフェスティバル当日の様子 平成30年11月23日(祝)>

 

出店1 出店2

 

出店3 ダンス

 

 

マリネラ1 マリネラ2

スキンケア大学

 

南米の歌やペルー舞踏マリネラはとても情熱的で圧倒&魅了されました。いずれも地域在住の外国人の方々によるパフォーマンス。西淀川住みます芸人「スキンケア大学」は漫才を披露。その後、旧出来島商店会から、新たに名称変更された「インターナショナル出来島きら★きら通り」のブランディングについての説明を始め、商店街活性化のためのさまざまな活動紹介が参加者に対して、丁寧に解説されました。飲食はワールドグルメとして、ペルーのお菓子やインドのタンドリーチキン、日本は九州のラーメンやだんご汁が販売されていました。そのほかにも、協力団体による出店がたくさん並んでいました。