市民活動ワクワクレポート内容

住民の流出入が多いことから集合住宅世帯が多く、人口の12%は外国籍住民という多様な人々から成る浪速区の課題はコミュニティ形成と、近年の観光ブームからのごみ問題が課題となっています。しかしこれらの課題解決につながるユニークな動きがありました。

「まちの美化活動」を切り口に、お二人のキーパーソンにお話しを伺いました。

 

ごみゼロ写真

 

 

「まちの美化活動」を通じ、浪速区が抱えるさまざまな課題を解決!

 

浪速区の人口は約7万人、その中で1万人が流出入を繰り返しつつも緩やかに人口は増えています。しかし、マンションといった集合住宅世帯が多いということ、人口の12%は外国籍住民ということが特徴に上げられます。

そんな浪速区が抱える課題は大きく2つ。

ひとつが、マンション住民や外国籍住民といった多様なひとたちを含めた「コミュニテイ形成」。

もうひとつが、ポイ捨てごみをなくすことを始めとした「まちの美化」。

浪速区では区民参加型の美化活動「ごみゼロ大作戦!」を定期的に開催しています。

まちの清掃活動をきっかけに、知りあいを増やし、コミュニティ形成につなげることをねらいとしていますが、この活動以前に、自主的にコミュニティ形成と美化活動を両立させ、継続して活動している任意団体が浪速区に存在するとのことでご紹介いただきました。

新世界で商売を行う若手の集まり「新世界援隊」のメンバー岸野 友和さんと、自分の関心ごとや経験を活かし、チャレンジ精神を輝かせている「ひとしごと館」のメンバー長澤 幸男さんに活動についてお話しをお伺いしました。

 

 

浪速区

 

新世界町会連合会「新世界援隊」

岸野 友和さん

 

<「新世界援隊」とは」>

観光の活性化により、明るく元気な街に生まれ変わりつつある新世界。今後、新世界がますます発展を続けてほしい、との思いから、地元商店主らの手で、何か街の活性化に向けた行動を起こそうと、新世界援隊が結成。

新世界の最高決定機関である新世界町会連合会の青年部としての役割を持つものの、若手商店主有志の自発的運営を目的に組織化され、自主的な活動を推進。

 

若手商店主有志で結成された任意団体「新世界援隊」による美化活動

「新世界援隊」について、ここで行われている美化活動についてお聞かせください。

 

私はこの新世界で生まれ育ち、親の代から続いているこの店を継ぎましたが、「新世界援隊」は、私同様、店を継いだ若手商店主の有志を中心に組織化された任意団体です。

既存の新世界町会連合会とは異なる組織として100周年を機に「新世界一帯を盛り上げよう」と

2012年7月に結成しました。

比較的若い人たちが多いからか、ここで新しく営業を始められた事業所にとって地域コミュニティに入る入口としてのいい連携ができているのではないかと思います。

「若手ばかりのコミュニティをつくろう」というのは、もともと連合会の先輩方の発案で、発足への基盤を整えてくださったという経緯があります。先輩方が見守りつつ任せてくださっているおかげで、私たちは自分たちがやりたいことを楽しみながらすることができていると感じています。

現在力を入れて取り組んでいるのが、新世界一帯の美化活動です。

毎週水曜日の朝に、この一帯の店舗や宿泊施設が一緒になって約1時間ごみ拾い活動や落書き消しの活動を行っています。清掃活動に必要なごみ袋やごみばさみ、落書き消しに必要な洗浄剤などは無料で浪速区から貸りることができるうえ、区の職員の方、まちづくりセンターの方々と共同で作業を行う時もあります。

道具や人手を行政からフォローいただけるというのはありがたいですね。

 

インバウンドが今は熱い。大阪を代表する観光地としてできることはたくさんあるはず

今後のチャレンジについてお聞かせください。

 

「新世界」というと、どうしても俗に言う“ガラが悪い”といった誤解をされがちです。それで実際に、あちこちにごみが落ちていたり、落書きがあったりすると治安が悪いイメージが植えつけられてしまっても仕方ないですよね。だから美化活動は意義があり、それを行うのは必然だと思っています。このまちで商売をさせてもらっているからには、できることから地域貢献をしようという“思い”に共感してもらえるより多くの人と連携したいですね。

ここは営業時間が店舗によって異なるため、人の様相が時間帯によって変わる特殊なまちでもあります。夜間営業の方々と私のような早朝から営業をしている者とは顔を合わせることがあまりありません。今は昼間営業の事業所の方々と一緒に活動していますが、夜間営業の方々とも連携したいですね。「大阪を代表する観光地・新世界一帯を盛り上げよう!」というアプローチであれば、新しい方、若い方を巻き込みやすいと思います。インバウンドの波を受け、 “おもてなし”として商店店主手作りの折鶴のプレゼント、「びりけんさん」に奉納する餅つき大会を観光客にも楽しんでもらうなど、インバウンドに関する活動も行っています。新世界の人間一丸パワーで、今後もさまざまなチャレンジしていきたいと思います。

 

浪速区2

「ひとしごと館」会員

長澤 幸男さん

 

<「ひとしごと館」とは>

ひとしごと館は、大阪市浪速区を拠点に仲間づくりや助け合いのサポートをおこなうコミュニティサービス。
就職や出産、定年退職などのライフイベントをきっかけに自分の“とくい”を活かす場がなくなった方とちょっと困ったときになかなか近所へ助けを求められずにいる人とをマッチングしひとりひとりが輝く社会の創造を目指す。

 

たったひとりの社会貢献活動から仲間と協働する市民活動の輪を広げる

「ひとしごと館」で行われている美化活動についてお聞かせください。

 

「ひとしごと館」は浪速区からの委託事業で始まった取組みで、仲間づくりや、自分の得意なこと、やりたいことが仲間と一緒になってできるという、非常によい取組みと思います。

「美化活動」そのものは、個人的にごみ拾いの活動を始めたことがきっかけです。

私は74歳で会社を退きました。まだ働いている頃、通勤途中に車窓から見える橋の汚れが気になって仕方がなかったので、75歳で橋のごみ拾いを始めました。1年近く一人で行っていたのですが、町内会の回覧板で「ひとしごと館」の存在を知り、すぐに会員登録をしました。

そうして今、大国町駅周辺、国道26号線中心に「ひとしごと館」の仲間と共に清掃活動を一緒に行っています。橋もまちも、綺麗にしていくことで、「今度は汚さないようにしよう」という思いが芽生えるのですよね。継続して清掃活動を行うことにつながります。

こうした活動は徐々に口コミで広まり参加者はどんどん増えています。道路の清掃で目につくのはタバコのポイ捨てですね。ポイ捨てごみは、自分の家の前でない限り、どうしても放置されがちになってしまいます。でも誰かが片付けないといけません。そのためには仲間は多ければ多いほど助かります。

「ひとしごと館」で自分の思いに共感してくれた仲間もでき、改めて社会にとって必要なことだと感じたので、私の所属する町会でもみんなで協力しあって行うごみ拾いを提案させていただき、毎月第4土曜日がごみ拾いの日とする仕組みができました。できれば、仲間それぞれの地域でこうした美化活動の輪を少しずつでも広げられたらいいと思っています。

また「歩こう会」という企画が昨年4月に立ち上がりました。正しい歩き方を学ぶことによる健康増進、友達づくり、まちの魅力再発見などさまざまな効果が期待できます。

市民活動は、社会性と持続性が大切です。

だから「まちをきれいにする」というテーマを加え、最近では「ながらごみひろい&簡単健康チェック」という活動を行いました。ごみ拾いの後はふくらはぎまわりの筋肉量が落ちていないかなど、理学療法士による健康チェックを行いました。ごみ拾い後にはみんなで集い、楽しく交流されていました。

地域の介護施設や病院からひとしごと館へ仕事の依頼も来ており、活動の輪が広がっていると実感しています。

 

人生はチャレンジによって輝くのだと実感

今後のチャレンジについてお聞かせください。

 

「ひとしごと館」のメンバーになって良かったと思えることをもっとたくさん生み出したいですね。美化活動と他の活動との組み合わせもありますし、それ以外の地域のお困りごと解決などもそうです。

私がもっと若かったらいろいろな活動にチャレンジできるのですが、その分、次世代に期待しています。地域コミュニティのひとつなので、どうしても日中時間の融通がきく高齢者が多い傾向がありますが、最近は20代の若者も増えているのですよ。人生誰しもライフイベントを経験します。ライフイベントを機に、「何か始めたい、いきいき活動したい」という方に、ここに来て輝いてほしいと思います。

自分のお困りごと解決、自分が楽しむ、仲間作り、ずっと思い描いていた夢を実現する―

「ひとしごと館」に行けば何かある、誰かがかいるというイメージがしっかり根付くよう、活動を続けていきたいです。

かつて車窓から見えていた景色を変えたいと思った―だから一人で活動を始めました。

例え誰からも評価されなくてもやり続けることが大事です。でも「世のため、人のため」などと綺麗ごとを言うつもりはありません。全ては「自分のため」にやってきたことなのです。地域や社会のためになる活動というのは最終的には「自分のため」であること。これが持続の秘訣だと思います。この信念は変わってはいませんが、「ひとしごと館」によって、私と同じように地域を、社会をよくしたいと考える仲間に出会えました。今、多くの仲間を得て気持ちがとても充実しています。

あの時、回覧板によって「ひとしごと館」の存在を知り、会員登録をした―その行動をしなければ今はありません。

人生はチャレンジによって輝くのだと実感しています。