市民活動ワクワクレポート内容
浄土真宗本願寺派 須原山 正福寺
個性的な店舗や若者が集うカフェも数多く点在する西区。新なにわ筋の東側、マンションやオフィスビルが立ち並ぶ街の一角にある「正福寺」で、毎月第1火曜日 14時~16時に開催されている「よろず寺カフェ”シャラナム”」 は、地域の立ち寄り処のひとつです。
お寺の原点は、地域の人々が集う場
シャラナムの主催は、21代目の住職を務める須原正好・悦子さんご夫妻です。シャラナムとは古代インドのサンスクリット語で『休息地』という意味があります。「お寺には本来、人が集い、おしゃべりを楽しむ井戸端会議の場のような役割があります。地域の方々に改めてお寺を開放することで、お寺の原点を取り戻したい」と須原さん。そんな思いから、開設に向けては、西区社会福祉協議会(以下、「西区社協」という)と何度も相談を重ね、平成30年5月15日にシャラナムがオープンしました。ほかにも大阪市西区役所、地域の役員や女性会の人たちなど、たくさんの人たちの協力により、今も続けることができています。
お寺という非日常の空間だからこそできること
本堂に入ると、仏さまのお姿が醸し出す厳かな雰囲気に包まれます。シャラナムは1階の広間ではなく、あえて2階の本堂で開催しています。その理由について須原さんは、「非日常の“お寺感”を感じてほしいからです。気持ちをリフレッシュし、自分を見つめ直したい時は、環境を変えるのが一番。お寺に足を踏み入れるのには勇気がいるかもしれませんが、その勇気が少しで済むように、心の敷居をフラットにしていくのが私たちの役目です」と話します。その言葉の通り、シャラナムでは、写経やフラワーアレジメントなど、毎回多様な催しを開催し、初めての方でも参加しやすい雰囲気をつくっています。
シャラナムでお茶を飲みながらおしゃべりに興じている人たちに話を聞くと、「心が洗われる時間です」「実家のお寺には行くけれど、近所のお寺は新鮮」などの声が聞かれました。ある人は、「ご住職と気軽にお話しでき、焼香の作法、仏具や飾りの意味など、日頃なかなか聞きにくいことを丁寧に教えてもらえました」と喜ばれていました。
地域のために、さまざまな居場所を
西区では、平成23年度から地域の空き店舗等を活用し、地域支援者と西区社協が協働して、高齢者の居場所や地域包括支援センターの出張相談の拠点としてさまざまな立ち寄り処を立ち上げてきました。平成30年度には4か所、平成31年度には1か所増え、令和2年1月現在10か所で展開しています。
住職ご夫妻は、シャラナムをオープンすることで、さまざまな人が出会い、その感性や感覚を受け入れ、多くの人と気持ちを分かち合えたらと願っています。「お寺になじみのない人や、ここで何かやりたい人など、いろいろな人に来てほしい。みなさんと関わりながら、心地よい居場所づくりのために、人々をつなげていくことが私たちの目標と思っています」と話します。
地域に暮らす人々が、心の拠り所として古くから大切にしてきたお寺。そのお寺によるカフェという形での新しい居場所づくりは、末永く人々の新たな縁をつないでいきます。
(記事作成:大阪市社会福祉協議会)