市民活動ワクワクレポート内容
自分の健康について、知ることを恐れるのではなく、知りたくない、面倒くさいという自分の気持ちに危機感を感じて欲しい―。
楽しみながらの健康づくりの発信拠点になることをめざし、体成分分析測定や骨密度測定、血流測定、糖化度測定など12種類ほどの測定器を用いて、セルフ健康チェックを行い、管理栄養士や薬剤師が、市民と一緒に、自分に合った健康づくりの方法を考える取り組みをされている認定特定非営利活動法人・健康ラボステーション 理事長の浦田千昌さんにお話を伺いました。
病院に行くほどではない体の不調をキャッチし、予防観点のアプローチ
医療機関が行う検査との違い、すみわけについてお教えください。
私の主観ですが、一般的な健康診断、人間ドックは病気を「探しに行く」位置づけにあると思っていて、CやDの判定が出ると「精密検査に行かなきゃ」となりますが、そうじゃなければ、日常の行動を変えてまで「健康にならなきゃ!」という心理にはなりにくいと考えているんです。
でも、それでは生活習慣病の根っこを断ち切ることはできない。健康に無関心な人、関心はあっても後回しになってしまう人、仕事や子育てに忙しい人、一人ひとりが自分のことを、家族のことをもっと大切にして欲しい!と思っています。
例えば疲れやすい、眠りが浅い、食事の好みが変わった、お酒があまり飲めなくなった…健康診断の結果は悪くないんだけど本人が感じる不調。
逆に結果はあまり良くないけど、不調を感じないというのもあります。例えば悪玉コレステロールは、数値が上がったからといって途端に具合が悪くなるわけではありません。だからつい「まあいいか」と放置してしまう。その両方をキャッチし、アプローチしていけるのが健康ラボステーションの強みと思っています。
健康づくりも、仲間と競争を楽しむ
具体的にお話いただける事例はありますか。
ある時、企画会社の方から、私たちの行っているセルフ健康チェックや管理栄養士の取り組みについて取材をさせて欲しいとのお話をいただきました。
私たちの取り組みについて、話を聞いていただくのもいいですが、体験していただくのが早いと思い、体成分分析測定と糖化度測定、血流測定、血管年齢測定を受けていただくことにしました。
測定したのは、企画会社の方(Aさん)と記者(Bさん)のお二人です。たまたま、お二人は同い年の働き盛り世代でした。<体成分分析測定結果(InBody)Aさん67点、Bさん80点>
Aさんから、「健康ラボステーションの取材をきっかけに、日々の体重(体脂肪等)をはかっていたので、ある程度予想していた結果だったのですが、同い年のBさんに、InBody点数で負けたことが予想外でした。もし自分ひとりで測定に行っていたら、『まぁこの年代なら、これくらい良くない数値で普通でしょ』と、自分自身に変な言い訳をしていたと思います。しかし横で、同い年の80点を見たら、言い訳のしようがないんです。女性心理はわかりませんが、男性の方へおすすめしたいのは、ぜひ『同世代の友人・知人』と測定に来てみてください。数字(数値)で負けると悔しいです! 現実を受け止めると、やる気が沸いてきます。ライバル心という感じですね。出来ることから生活習慣を改善します。そして取材後に来月の予約も入れました」とコメントが寄せられました。
そして、この日から数か月が経った1月の半ばのこと。別の取材で、私たちが出張測定会をしている会場にAさんが来られました。
ひと目でわかるほどスリムに!そして、若々しくなられていてびっくりしました。
聞くと、管理栄養士のアドバイスをもとに、食事の見直しをされ、ずっと続けているとのこと。
今回のことで気づかされたのは、健康への気づきのスイッチも、続けることができるモチベーションのスイッチも人それぞれだということ。
今回の場合、同い年の方に負けて悔しいという思いから行動変容のスイッチが入り、80点をめざすことを目標にしたことで継続のスイッチが入ったのだと思います。
心と体の健康のためにも、あえてオンラインには舵を切りたくない
コロナによる影響、工夫などお聞かせください。
高齢者の方のリピーターが多いだけに、コロナの影響は受けましたね。
もともと健康意識が高い方が多いので、なかなか出てくることができないと思います。
オンラインカウンセリングもやっていてウェブの使い方、つながり方などもレクチャーさせていただいていますが、オンラインを使いこなせない方が多いので、ご相談対応も難しく、
リアルで戻ってこられるのを待ちたいですね。
あえてオンラインを増やす方向には舵を切りたくないという思いがあります。
認知症予防が今、叫ばれていますが、外出しなくなってそれが当たり前になると、そのうち人と会うのが面倒くさい、となってしまうのではないかと思います。人と会わずにいると、心が停止する、そんな感じがして嫌ですね。
誰かに会うために、雨でも風でも外に出る!電車がもし止まっていたら、「違う方法で行かれへんかな?」とか、外出って、いろいろ考えますよね。カレンダーめくったら、「あ、今月はこんな予定があったんや」とか。
やっぱり、リアルで人と会い、話すことは大事です。できる限りリアルな対面を大事にして、「人に会うことをあきらめない」。その代わりに、感染対策を万全にする等、安全を守る。コロナで止まっている間、密を避ける工夫として、予約システムを整えました。
大学、社団法人とのコラボ、企業依頼の受け皿として研究に特化した法人設立
他の団体等との連携協働事例などはありますか。
大阪市立大学と、運動分野で一般社団法人日本姿勢と歩き方協会、そして食の分野で、私たち認定特定非営利活動法人健康ラボステーションとが協働して、毎月第三水曜日、「健康測定会」を実施しています。
会場は、グランフロントのタワーC・9階の大阪市立大学のサテライト「健康科学イノベーションセンター」です。
コロナで活動が止まっていましたが、完全予約制にして測定機器も減らして、2021年11月に再開しました。
また、企業対象に、健康増進のための商品づくりの開発支援をさせていただいています。
8年間、活動をやり続け、「測り上手」という評価をいただくようになり、企業から新しい商品やサービスを生み出すための研究系のお仕事のご相談をいただくようになりました。
非営利の活動では枠組みが違うので、収益事業として一般社団法人プレシジョンヘルスケア研究機構を立ち上げ、企業からの依頼を受け入れやすくしました。
楽しみながら健康づくり、健康管理の大切さを一人でも多くの方に知ってほしい
今後の抱負についてお聞かせください。
健康関連市場は大きく、マスコミにも話題にされやすいですが、ひと昔前、リンゴダイエットが流行ったり、納豆やヨーグルトが体に良い!とテレビ番組が取り上げると、翌日のスーパーの棚は、すっからかんになっていましたよね。
でも、よく考えると、年齢や性別、活動量や病歴など、人それぞれなのに、すべての人に同じ効果があるわけがなく…。
最近は、一人ひとりにあった健康法をという流れがあり、パーソナルトレーニングが流行っていますね。
私たちも測定結果に対して、管理栄養士が本人とコミュニケーションしながら、健康のために、どうしたら続けられるかの観点からアドバイスをさせていただいています。
明日から、「これやったらできるかな」というのを雑談の中から、一緒に見つけていく。
健康のためには例えば食事、例えば運動。やらなきゃいけないことはある程度決まっています。でも、そこに落とし込むまでのプロセス、一人ひとりと向き合うことを大切にしています。楽しみながら健康づくりができること、健康管理の大切さを一人でも多くの方に知っていただき、大阪市民の健康増進に貢献したいです。