市民活動ワクワクレポート内容

地域活動で必ず課題として挙がる「担い手不足」の課題解消に加え、

大きな社会課題のひとつである「高齢者の孤立」問題も解消する

ユニークな新事業を推進している晴明丘地域活動協議会。

会長の石橋 一昭さんにお話を伺いました。

 

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 晴明丘地域活動協議会 会長

 晴明丘地区社会福祉協議会 会長

 晴明丘連合町会 会長

 石橋 一昭さん(写真中央)

 

 阿倍野区社会福祉協議会

 地域支援担当副主幹

 木村 謙太郎さん(写真右)

 

 生活支援コーディネーター

 土居 夏子さん(写真左)

 

60歳代から90歳以上の方まで。男性限定の居場所「晴明丘地域の男の集い」

男性限定のユニークな取組みをされているとのことですが、

詳細をお聞かせください。

男性に限定した「男の集い」を毎月第2日曜に地域の拠点である晴明丘会館で

開催しています。時間は10時から12時。100円の会費で、日本茶、コーヒー・

紅茶などソフトドリンクを楽しみながら、ワイワイ賑やかにやっています。

ただ雑談するのではなく、地域の課題や、地域を盛り上げるための議題を

提示し、それに対して2時間、グループでたっぷり話をします。

意見を出し合い、最後に全体で共有して、結論を出すワークショップ形式です。

平成30年1月に始めた当初は飲み物の準備の仕方から手探りで、3回目までは

女性ボランティアの方に手伝ってもらいましたが、4回目から男性だけで運用、

桜の名所でもあるこの会館で花見をしました。酒と肴をみんなで楽しみながら

話に花を咲かせる、そんなゆるやかなつながりとしています。

 

河内長野市 南花台地域の「男談」をモデル事業として、晴明丘地域に導入

活動を始められたきっかけについてお聞かせください。

「後継者、担い手がいない」という声をよく耳にしますが、そんなことは

ないと思います。

晴明丘地域では、盆踊りや子ども祭り、ハロウィン秋まつり、もちつき大会

など、子ども中心の大きな事業を年4回行っていますが、親や祖父母なども

参加されますので、一度に2,500人くらいの人が集まることもあります。

地域にはこんなに沢山の人がいるんだ、という現実を目の当たりにし、

中には地域活動に関わりたくても、なかなか関われない方々もおられるのでは

ないか、地域活動に関わっていただくにはどうすればいいだろう?と感じ、

まちづくりセンターに相談。薦められた活動を見学しに行った先が、

河内長野市の南花台で行われていた「男談(だんだん)」でした。

いわば井戸端会議の男性版みたいなものです。「男談」の参加者たちは、

ワイワイと楽しそうに意見交換をし、些細な話から、地域の活動につながる

発展的な話し合いへ。とても盛り上がっていました。これを晴明丘で出来たら―。

4~5人くらいでもいいからやってみよう、ということで、「男の井戸端会議」

という名称でスタートしました。予想に反して初回は何と40人もの地域男性が

集まりました。その後、「男の集い」と名称を変え、今は25人くらいが常に

参加してくれて、活発に意見を出し合っています。

 

定年退職をした男性の地域デビューの第一歩。誰もが気兼ねなく

参加できる居場所として機能

「男の集い」への思いやこだわりについてお聞かせください。

あくまで一般論ですが、団塊世代は仕事一筋でやってきた人が多いと思います。

家庭を顧みない一面があった人も中にはいるでしょう。地域との関係性が

希薄だった分、定年退職した途端、居場所がなくなってしまう、家で居場所が

ない、地域でも居場所がない、しかも団塊世代は人口が多いですから、

「高齢男性の孤立」が社会問題としてますます深刻になると思います。

だからこそ、「この日、この場所に行ったら誰かがいる!」という居場所、

人とのつながりを作りたかったのです。

「男の集い」のこだわりとしては、個人の職歴に関わる事は明かさないと

いうこと。例えば過去勤めていた会社名や役職などです。明かすのは

名前だけです。これまでさまざまな分野の第一線で活躍してきた人たちが

集う場ではありますが、晴明丘の地域住民として、平等な立場でいたいのです。

何かあれば、その時々で知識、経験を活かしていただければいいと思います。

 

新しいことを始め、地域が変わっていくさまを見られるのが嬉しい

(阿倍野区社会福祉協議会 木村さん)

 昨年の9月に「男談」を石橋会長が見学され、同年11月にはキックオフ

ミーティング、年明け1月には「第1回 男の集い」が開催されています。

これはかなり早いテンポで進んでいますが、これまで協働で歩んで

来られた阿倍野区社会福祉協議会としては、秘訣は何だと思われますか?

石橋会長はアイデアマンです。会長自ら企画を手掛けられ、実現までの

準備を本当に丹念にしてくださいます。

秘訣のひとつには、資料づくりがあると思います。何をするのか、いつ、

どこで、どんな体制で…条件を明確に決めて可視化する、それによって、

ノウハウが蓄積され、特定の人に依存しない、次の世代に引き継がれていく

持続可能な事業となっていきます。

 

また、区役所との連携、まちづくりセンターとの情報共有に加え、

阿倍野区社会福祉協議会の生活支援体制整備事業「生活支援

コーディネーター」をうまく巻き込んで、適材適所を考えたマネジ

メントをしておられる点がすごいと思います。

「男の集い」参加メンバーからさらに人のつながりが広がっていく、

それに地域もついてきてくれる、前向きに取り組んでくれる。

もともと決めたらやろうという気骨のある人が集まっている地域だと

思います。新しいことを始めることで、地域が変わっていくさまを

見られるのが嬉しいですね。

 

やってもらって当たり前ではなく、「担い手」として地域の役に立てたら

最近の変化、具体的な成果についてお聞かせください。

「男の集い」が軸になり、そこからサークル的なものができたらいいな、

という発想で、「男の料理」という新しい取組みがスタートしました。

買い出しから調理、試食、片付けまで一連のことが家族に頼らずとも

できるスキルを身に付けること、学んだことを今度は地域の行事などで

還元したいです。例えば、来年の花見の時は「男の料理」で作った肴を

提供できたらいいですね。

また「地域を学ぶ・研究する」歴史講座の取組みも始めました。

90歳代の方もいらっしゃるので、ためになる話が聞けて盛り上がります。

地元の地域の歴史や文化を学んだり、防災の視点を入れたりして、

発展してきています。先日は、「なぜこの地域の防災訓練が始まったのか、の

原点に戻ろう」という話が出ていました。地域への愛着も、防災も、まずは

「地域をよく知る事」が大切だと思います。

 

人が集い、話をすることで心はつながっていく。それで解決できる社会課題は

たくさんある

最後に今後の抱負とメッセージをお願いします。

毎月第2日曜の定例開催ですが、あくまでも参加は個人の意志。ゆるいつながり、

ある程度自由度を残すことも大切なポイントだと思います。

少子高齢社会、今後も増えていく定年退職者に、ぜひ参画いただけるよう活動を

継続・発展させていきます。女性限定の「女の集い(女子会)」もスタート

しました。地域の子ども、大人、高齢者みんなで助け合える地域にしたい。

人の心と心がつながって、解決できる社会課題はたくさんあると思います。

 

<「男の料理」現場レポート(2018年6月28日)>

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徹底してレシピに忠実に作られていました。初めてだからこそ、

基本はしっかりと、とのことです。また、印象的だったのは

片づけまでをきちんと啓発されていたこと。何事も「次に

使う人のために」を考えることは大切だと気付かされました。

メンバーの方にお話を伺うと、「今まで殆ど料理はせず、

妻任せだった。いざという時に役に立つ。これからは男でも

料理はできなあかん!」と力強く語ってくださいました。

私たち取材陣にもご用意くださり、美味しくいただきました。

みんなで輪になって、食事をしながら、ふりかえり、次回の

運用ルールやメニュー案などが話し合われました。

また「男の料理」という名称で皆さん合意のもと、ボランティア

グループ発足の記念すべき日ともなり、その場に立ち会うことが

できたのが光栄でした。

今後ますますのご活躍が期待されます

 

<「男の集い」現場レポート(2018年7月8日)

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本日2時間で結論を出す「話の種」は以下の3つ。各グループごとで時間を

管理しながら話し合われ、最後に、案を全体で共有して皆さんの総意で

決めるというスタイルです。

石橋会長はアイデアへのアドバイスや議事を務められ、グループからの

意見をまとめるファシリテーターは阿倍野区社会福祉協議会の木村さんが

担当されました。

①「晴明丘納涼盆踊り」に何か出店しませんか?

②「8月例会は、納涼ビアパーティ」をしませんか?

③「大阪北部地震」もし!上町断層で起こったら?

3つ目の話の種である「大阪北部地震」もし!上町断層で起こったら?に

話し合いが進んだと見られるグループに、iPadを駆使し、昔の晴明丘地域の

地図やどこに断層があるか、どんなリスクがあるかなど、写真や図を用いて

メンバーに丁寧に説明をされている男性の姿が。インタビューで石橋会長が

「地域を学ぶ・研究する取組み」と仰っていた「晴明丘の歴史を知ろう」活動の

リーダーの方でした。歴史を学び、晴明丘への愛着心を育むと同時に、

地域を知ることは、防災、もし災害が起きた際の迅速な行動に欠かせないと

仰っていました。聞けば、防災リーダーの役割を担われていたとのこと。

なるほど、納得です。「男の集い」では、各グループごとにワイワイと

話し合いが行われ、とても活気ある光景を目にすることができました。

進行する人がいて、みんなで意見を出し合い、それを記録していく人がいる。

そして確実なタイムマネジメント。3つの「話の種」についてグループメンバー

総意のアイデアを限られた時間でまとめていく一連のプロセスが効果的に

機能していると感じました。基本的には多数決制で決めているということ。

案を採用する理由、逆に案を採用しない理由については、社会福祉協議会の

木村さんからきちんと説明がされ、皆さんが理解し、同意して次のステップに

進むというこの集いから、次々と新しい活動が誕生していくのがよく理解

できました。