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NPO法人ノーベル(中央区)

大阪市を中心とした今注目のコミュニティビジネス(CB)/ソーシャルビジネス(SB)の事例を順次ご紹介していきます 。事業者の想い・取り組んでいる課題とその解決方法・今後の展望など事業のヒント、そしてCB/SBの魅力が満載の取り組みの記事を楽しんでください♪
 

 

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出産しても働き続けられる社会を!

子どもの急病に100%対応する病児保育を提供

 

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▶お母さん達の苦悩に発奮。孤軍奮闘の末に起業

 

深夜に子どもが発熱した。でも、明日はどうしても仕事を休めない。
頼れる人も近くにいない。どうしよう……。

 

仕事と子育てを両立する人の多くが体験している「子どもの病気」という緊急事態。
保育園では37.5度以上の熱があると預かってもらえないため、近くに協力者がいなければ、「子どもか仕事か」の究極の選択を迫られる。
そんな時に頼りになるのが、NPO法人ノーベルが展開する病児保育サービスだ。

 

 

団体設立は、2009年11月。
きっかけは、代表の高亜希さんの周囲で友人や同僚の女性が次々に会社を辞めたことだった。
理由のひとつに、子どもの病気があった。本来、子どもは強い体をつくるためにたくさんの病気をする。
だが、急な休みや早退が続けば、周囲の目が気になり、会社にも居づらくなる。涙ぐましい努力と苦悩の中で、
彼女たちは仕事をあきらめ、退社を余儀なくされていた。

 

「お母さんたちは、ただ仕事と子育てを両立したいと思っているだけ。そんな当たり前のことが、どうしてかなわないのか」。
子どもを産んでも当たり前に働き続けられる社会にしたい――。

 

その想いがノーベルの出発点だった。

 

実は、病児保育を行う施設は以前からある。
しかし、その数は当時、大阪市内でもわずか6施設と圧倒的に不足。
施設の定員(1施設4名)を考えれば、キャンセル待ちは当たり前の状況で、とても緊急時に頼れなかった。
親たちの多くのニーズがありながら、病児保育が増えないのは、施設運営の困難さにあった。

 

突発的で予測できない子どもの病気に保育士や看護師を配置すると人件費ばかりがかさみ、施設運営が安定しない。
そのため、ほとんどの施設は行政から委託を受けて運営されていたが、補助金を受けると、料金設定などさまざまな規制に縛られ、黒字化できない矛盾した仕組みとなっていた。

 

そうした中で、ノーベルは施設型ではなく、保育スタッフを自宅に派遣して子どもの急な発熱にも100%対応する病児保育を展開。
事業運営では会員の月会費を積み立てて経費をまかなう共済型を採用することで、補助金に頼らない自立的かつ安定的な経営を目指した。

 

ビジネスモデルは東京のNPO法人フローレンスで1年間修行して学び、大阪に戻ってからの起業準備では孤軍奮闘。
カフェを事務所代わりに、協力してくれる医師や保育スタッフ探しから資金集め、ビラ配りに至るまで1人で奔走する日々だった。

 

 

▶会員は約500名。寄付を財源にひとり親家庭も支援

 

ノーベルの病児保育事業は、まず大阪市中央区・西区を対象に2010年2月よりスタート。
当初は病児保育そのものの認知度が低かったこともあり、利用者がなかなか増えなかったが、ノーベルの存在価値を伝える広報活動に力を入れることで、会員数が徐々に増加。
サービスエリアも順次拡大して、現在では大阪市と吹田市の全域とその他一部地域を対象に約500名の会員が利用している。

 

サービスの特徴は、子どもが慣れている自宅という環境で、独自の研修を受けた保育スタッフが1対1のきめ細やかなケアを行う「おうち保育」であること。
自宅のため、インフルエンザなどの感染症でも預ってもらうことができる。
また、親に代わって病院への受診代行も可能で、保育中にはスタッフから経過報告のメールも届くことから、安心して子どもを預けられる。

 

なにより当日の朝8時までに予約すれば、100%対応してもらえるため、「仕事を休めない、頼れる人もいない」という親たちのいざという時の心強い保険として機能している。

 

ただ、みんなで事業を支えるノーベルの病児保育は会員制で、サービスを利用するには入会金のほかに毎月平均6000円程度の月会費を積み立てる必要がある。
その利用料は決して安いとは言えず、経済的に厳しい世帯へのサービス提供は大きな課題だった。

 

このため、事業基盤が安定した2013年春からは、子どもの病気が親の失職や生活苦に直結しやすいひとり親家庭を支援する「ひとりおかんっ子応援団プロジェクト」をスタート。
法人や個人の賛同者から寄付を募り、これを財源にすることで、ひとり親家庭に月1000円の低価格で病児保育を提供できるようになった。

 

 

現在、約40世帯が同サービスを受けているが、まだ寄付待ちの希望者も多く、また大阪はひとり親家庭が全国一多いことから、今後も同プロジェクトの拡大を図る予定だ。

 

また、2014年春からは大阪市淀川区とタイアップして、同区民であれば通常の半額以下でノーベルのサービスを利用できる取り組みもスタートさせた。
これは行政が利用料金の約半分を負担して区民の病児保育を支援する初の試みだが、民間企業でも従業員の福利厚生の一環としてノーベルの病児保育を利用する例が増えているという。

 

 

▶「病児保育なんて必要ない社会」を目指して

 

最近でこそ、行政や民間企業でも病児保育に対する関心は高まってきたが、ノーベルが事業を始めた当初は社会の認識が低く、取り組みもひどく遅れていた。
そのため、ノーベルでは病児保育事業を行うと同時に、子どもを産んでも当たり前に働き続けられる社会を目指して
問題の現状と解決に必要な情報を発信する「ソーシャルプロモーション事業」を積極的に行ってきた。

 

講演活動やセミナーの開催はもちろん、ノーベル会員へのアンケートをもとに子どもの病気を明るく乗り切るノウハウを冊子化した
『働く!! おかん図鑑』の発刊など、その活動は多岐にわたる。
また、ノーベルの職場においても、普段からひとつの業務を2人で担当する「1タスク2パーソン制」を敷くなど、
スタッフの誰かが急に休んでも組織が回るように、業務の見える化とマニュアル化が徹底している。

 

 

「そもそも子どもが急に発熱したとしても、問題なく会社を休めることができれば、病児保育なんて必要ないんですね。
だから、企業のマネジメント層などにもっと働くお母さんの現状を知ってもらって、そのために動き出してもらう意味でもソーシャルプロモーションはとても大事。
私たちの願いは、いつか『ノーベルの病児保育なんて必要ない』と言われる日が来ることなんです」

 

 

 

■団体概要 NPO法人ノーベル

子どもを産んでも当たり前に働き続けられる社会を目指して、2010年に関西初の共済型・地域密着型「病児保育事業」をスタート。大阪市内を中心に、当日依頼にも100%対応で保育スタッフを自宅に派遣するサービスを提供している。また、メディアや講演などを通じて病児保育問題を発信、社会の価値観を変えるソーシャルプロモーション事業も行う。

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