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家やマンションを賃貸で借りる時、何を重視するだろう?
一般的には、駅や職場からの距離・間取り・築年数・駐車場の有無・家賃の価格などの条件をもとに検討をして、自分に合った物件を探すだろう。
そこにもし、建物の持ち主である大家さんのおすすめポイント!なんていう情報があったら、どうだろう?
「ちょっと面白いな」と思ったなら、大家comサポートに集まる大家さんが持つ物件に心奪われるかもしれない。
大家comサポートは、顔の見える関係を大切にして、本来あるべき姿の大家さんをもう一度取り戻そうという考えからできたプロジェクトである。
物件のリアルな情報を入居検討者に伝えるために、物件ホームページを大家さん自身が自分で作ることを提案している。
しかし、その目的はホームページを作ることではない。
ホームページを作る過程の中で、自分の物件をもう一度訪れ、そこに住む人の目線に立ってものごとを考え、発信する。
そうすることで、例えば「○○スーパーは木曜日にポイント2倍!」とか、「この区域の学校は吹奏楽部が強い!」とか、「大きな公園が徒歩2分。子供たちが遊んでいます。」とか、住むことを検討している人にとって知りたい情報が集まってくる。
つまり、大家さんが物件の魅力を自分で考え、ホームページで伝えることを繰り返すことで、空室対策はもちろん、住民との信頼関係や、他にはない物件の魅力を作ることができるのだ。
もともと大家comサポートは「JimdoCafe」というコミュニティから派生してできたプロジェクトだ。
JimodoCafeとは、Jimodoというホームページ制作ツールを使って、自分でホームページを作る人のための駆け込み寺的な勉強会である。
大家comサポートを開始したメンバーである河合さんと近藤さんは、4年前から神戸と大阪の2か所でこのJimdoCafeを運営している。
そこでは、Jimdoの使い方だけではなく、ホームページで告知したい商品やサービスのアピールの手法も学ぶことができる。
そして、それを学ぶために重要視しているのが、初対面の人々がお互いのホームページを見て率直な感想を本音で語り合う「意見交換会」だ。
「みなさん伝えたいことがあるから一生懸命ホームページを作るんですよね。
でも、伝えたいことと、実際にホームページを見た人に伝わることとの間にはギャップがあるんです。」と河合さんは言う。
意見交換会は、そのギャップを体感する場として、利用者から高い評価を得ている。
JimdoCafeは単なるパソコン教室ではなく、利用者同士で高め合う場なのだ。
大家comサポートでも、JimdoCafeと同じく、大家さん同士が率直な意見を交わし合う会を何より大切にしている。
そこでは、ホームページだけでなく、いかにして物件の魅力を作るかという話し合いも行われている。
参加している大家さんの中からは、住民参加の花火大会を行ったり、壁画アーティストを呼ぶイベントを行ったりと、バラエティに富んだ企画が持ち上がるという。
時にはうまくいかないこともあるが、河合さんは、それもひとつの成果だという。
「僕たちは常々、どんな小さな失敗もどんどん繰り返すべきだと伝えているんです。
良い評価も悪い評価も、そのまま両方受け止めましょうというのが我々のコンセプトなんですよ。」
なぜ、数あるビジネスの中でも「大家」という業種を選んだのか。
大家comサポートができた背景には、河合さんが西区に対して感じている強い違和感があった。
もともと、河合さんは西区の下町っぽさに魅力を感じてこの地域に引越してきたという。
「当時は隣近所が声を掛け合ったり、挨拶ができない子どもを叱ってくれたり、マンションでも長屋を縦にしたようなつきあいができていました。
例えば共有部分に三輪車を置くような、普通なら苦情につながる事も、お互いの家族構成や家庭の事情を知っていたら、クレームにならないんですよ。
その時の経験で、顔を見てコミュニケーションをとるのは、面倒だけど大事なことなんだと実感しました。」
ところが、それから十数年の間にマンションが乱立し、西区の住民が急増したことで、ご近所との摩擦を避けるために近所づきあいはおろか、挨拶すらしない人が増えてしまったという。
西区の良さが失われつつあるのを感じていた河合さんは、もう一度西区の良さを取り戻すには「顔の見える関係」をいかに作り上げるかだと感じ、近藤さんや、JimdoCafeで出会った大家さんと共に「大家comサポート」を立ち上げた。
そして同時に「西区まちの活力創造プロジェクト」に手を上げ、認定事業として認められた。
事業としては、有料の意見交換会の他に、大家さんが気軽にホームページを作り始めることができるようにと、大家さん専用のテンプレートも制作販売している。
ホームページと聞くと、web上で完結するバーチャルなしくみであり、そこにはリアルな交流は必要ではない、と思ってしまう人は少なくない。
しかし、web制作がメインの近藤さんは、ホームページを作りたいと考える人に対し、常々こう伝え続けているという。
「ホームページさえ作れば、独り立ちする営業マンができると勘違いする人が多いけれど、ホームページは単なるツールでしかないんです。
リアルに人と会う作業をさぼっていたら、成果なんて生まれるわけがありません。」
だからこそ、大家comサポートでは、大家さんが自分の物件や大家業をもう一度見つめなおし、自分自身の力で物件の魅力を生み出したり、どうすればその魅力が伝わるかを考えたりする過程を何より大切にしているのだ。
その根底には、2人がJimdoCafeを始めたきっかけにもなっている、顔の見える関係づくりへの強いこだわりある。
「日本は今、かつてない人口減少を経験しています。
それでもなお、今後経済を成り立たせるにはどうすればいいだろうって考えた時に、これからは“何を買うか”ではなく“誰から買うか”が重要になってくると思ったんです。
だからこそ、コミュニティを作る必要性があると感じました。」
河合さんの言葉通り、大家comサポートでも、大家さん本人がホームページ上で顔を出していることで、マンションに入居する学生の親から「安心できる」との声が実際に挙がっている。
インターネットが普及して、どんな情報でも簡単に手に入る時代だからこそ、人々は血の通った情報こそを求めているに違いない。
「僕たちはブームを作るつもりは全くないんです。じわじわと細く長く愛されるために、顔の見える関係を作り続けていきたいと思っています。」
■団体概要 大家comサポート