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トゥギャザーは障がい者の自立と社会参加を「3つの活動」で支援しています。
1)啓発活動
「共生社会」を築くため、一人でも多くの方に障がい者福祉を身近な問題と考えていただく場として “ふれあいトゥギャザー” を開催しています。
・障害者週間行事:障がい者手作り作品の展示販売会、シンポジウムの開催など
・さわやかフェスタ:ワンダースクエアで福祉フェスタなど
2)販売支援
トゥギャザーがコーディネーターになって施設でネットワークを組んで共同生産をしています。
リサイクル手漉き紙を使ったカレンダーづくり、手作りお菓子の頒布会、レジ袋に代わるエコバッグの製作、ノベルティグッズの製作など
3)住環境コーディネート
確かなノウハウを持つトゥギャザーが、障がい者が自立しながら”まち”で暮らすためのグループホーム・ケアホームの建設をサポートしています。
ディアスひるぜん、三田の家、生活支援センター「あゆ」など
代表の中條さんは積水ハウス(株)の元専務取締役であり昭和36年に積水ハウス(株)を立ち上げた創立メンバーです。
一貫しての営業畑で、「モノを売る」ことに関してのノウハウ、情熱、ネットワークなどを保有されています。
中條さんが積水ハウス(株)退職後した後、梅田スカイビルの社長時代にイベントとしてプレパラリンピックを開催。
参加した各福祉作業所などから「商品を作っても売り先が確保できない」という問題点を聞き、「何とか力になりたい」と思ったのがきっかけです。
積水ハウス(株)は「住宅展示場で粗品を渡したりするので、役立てることができるのではないか」と考え設立構想にこぎつけます。
しかしこの業界で作られるモノは全般的に「品質もよくない、だから売れない、そのため品質もよくならない」という悪循環がありました。
しかし低賃金の内職を中心とした事業構成ではいつまでたっても障害者の自立は困難です。「なんとしても自主製品を柱とした方向に転換してゆく」必要があります。
そこで障害者支援団体である日本フィランソロピー協会から2003年に施設の自主製品のモデル事業をやりたいという話を聞いたことがきっかけにもなり、
企業のノベルティ用卓上カレンダーの分業生産を開始しました。もともと障害者の福祉作業施設の多くは牛乳パックなどを回収し、
手漉きでリサイクルして“はがき”にする事業など、当時から行われていましたが、「作る量も少量で品質にばらつきもあり、
せいぜい地域のバザーで売るのが精一杯」というのが現状でした。しかし、「これではいつまでたってもダメだ」ということで
ネットワークを組んで大量受注可能な体制をつくりました。2003年7月7日に発会式を行いました。
名づけて、「七夕プロジェクト」。スローガンは「みんなで作って、みんなで売ろう!」でした。
こうして卓上カレンダーが軌道に乗り、ついでエコバック、そして菓子の頒布会という3つの製品分野が確立されていったのです。
①量を確保し品質を上げる
課題のひとつは「生産面でのコミュニケーションギャップ」であったようです。各作業所に同じように伝えても認識レベルに「格差があり、一定の品質を維持できなかった」のです。
そこで、分業システムを取り入れ、作業所ごとに役割分担しました。
難しかった「紙の品質の均一化」のため、紙好き交流センター麦の会には紙漉きのプロがいて指導をしてもらうなどの努力を積み重ねました。
マーケティング面で「大きな飛躍となったのは、梅田画廊の野呂会長との出会い」でした。画家の許可を得てカレンダーに印刷したことで、
製品の付加価値を大きく上げ、安定した需要につながる大きな要因になったと考えられます。
②生産面で経営資源の強みを生かす
次に商品化したのはエコバッグでした。「大阪は繊維の町」であったことから、裁断、縫製などの作業を請け負ってきた施設ももともと多かったのです。
そこで積水ハウス(株)の「社会貢献したい」という意向と合致し、「秋の住宅祭で来場者に配るエコバッグを万単位で受注する」事業に仕上げました。
ここでも販売先のニーズと生産側の強みをうまく繋げようとする当団体の戦略性が伺えました。
その後、紙漉き部門、縫製部門、に加えて菓子部門を立ち上げました。各施設では「設備は比較的いいものを揃えやすい」環境にあり、
実際「一般の菓子店に勝るとも劣らない」設備が入っている施設も多いようです。
販売は頒布会方式で一般個人向け販売や職域販売、ホームページでのオンラインショッピングも行っています。
①障害者の自立を促進する自主製品のマーケティング
障害者の自立のためには、自主製品事業が叫ばれるようになったのですが、「各施設は製品を作ってきたものの、
足りなかったのは企業の営業マインドだったと考えています。そのため、当団体が中核組織としてそのようなマインドを
持ってやることで(福祉作業所にできる自主事業の)モデルを提示できるはずであると考え、実践されています。
②企業に具体的な社会貢献手段を提供
当団体は、企業のCSRを対象にして製品を作っています。近年、企業の社会貢献意識は年々高まっており、欧米と比較するとまだ低い水準にあるため、
不況の中でも一定の枠が確保されると考えられます。
また、キャッシュバックのような販売促進策よりも社会貢献型のノベルティの方が消費者、生活者にも受け入れられ、安定した需要が見込めます。
①プロダクト・マネジャー機能
当団体は「プロジェクト・マネージャー」の機能を果たしていると言えます。(プロジェクト・マネジャーとは、「特定の製品ラインやブランド、サービスについて、
プロジェクトチームを設置し、各部門と連携して製品のアイデア段階から市場調査、製品開発、生産調整マーケティングの立案、販売促進のコントロールまでを
担う専門家」と一般的に説明されます。)すなわち「画家の作品をシリーズ化した卓上カレンダーを社会貢献したい企業のノベルティとして紙漉き技術のある
福祉作業所を中心に分業生産し、販売する」という一連のマーケティングを打ちたて、そうした高度な職能を少人数の当団体幹部が果たしています。
②生産分業システム
当団体幹部には福祉施設の元職員が参画していることから、福祉施設の生産の状況に明るく、このことが生産面での分業システムを可能にしたと考えられます。
経営資源としてのそれぞれの施設の強みである設備や技能、経験を生かしながら一定以上の品質と生産量を確保することを軌道に乗せた点は大変意義深いことです。
③販売ネットワーク
代表の中條氏が長年の営業畑で培った人脈やノウハウがあったことは本事業の大きな推進力になったといえます。
そしてさらに現在も障害者週間行事などを通じて数十の大手企業のCSR担当者とネットワークを構築、拡大している点も事業の広がりにつながります。
④ターゲットニーズの絞込み
企業向けのノベルティグッズという切り口にターゲットを絞ったのはひとつの大きな成功の要因であろうと考えられます。
欧米に比べてチャリティの文化が希薄な国内企業の力を借りる上で、ノベルティというのは企業側にとっても非常に取り組み易い位置づけであっただろうと想像できます。
⑤製品の高付加価値化
卓上カレンダーへの著名画家作品の使用許諾が「これならいける!」というレベルに引き上げ、付加価値をつけたと考えられます。
■団体情報 特定非営利活動法人トゥギャザー
理事長 中條 桂
大阪市浪速区難波中3丁目9番3号 学校法人エール学園1号館102
Tel/Fax 06-6646-3380 ホームページ http://www.together.or.jp/
(出典・一部加筆修正:「コミュニティビジネスの明日」)