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磯路地域活動協議会(港区)

大阪市を中心とした今注目のコミュニティビジネス(CB)/ソーシャルビジネス(SB)の事例を順次ご紹介していきます。
事業者の想い・取り組んでいる課題とその解決方法・今後の展望など事業のヒント、そしてCB/SBの魅力が満載の取り組みの記事を楽しんでください♪

 

 

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敷居を低く、垣根をなくして、持続可能な地活運営をめざす

 

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▶ビッグチャンス!地域を変えるなら今しかない!

 

少子・高齢化の進行、人と人とのつながりの希薄化、年々複雑・多様化していく地域課題。一方で、これまで地域を支えてきた地域振興会や地域社会福祉協議会をはじめ、分野別に活動していた、子ども会・PTAなどの多くの組織では、担い手不足や高齢化、ボランティア意識の希薄さなど、いくつもの課題を抱えていた。
そこで大阪市は、従来からの地縁団体をはじめ、企業、NPO、学校など地域のいろいろな団体が協力しながら課題解決やまちづくりに取り組むしくみとして平成24年より、小学校区を基本に「地域活動協議会(以下、地活協)」の設立を促した。

 

磯路地域活動協議会(以下、磯路地活協)も「自らのまちのことは、自らで考え、決めていく」という理念のもと、平成25年2月26日に設立した。
平成24年9月に、区役所からの説明会があり、磯路地活協準備委員会が立ち上がった。
「活動自体が継続されるなら、町会や地域社協の看板を挿げ替えるだけでいい」と主張する現状維持派、これに対し「何事においても今まで通りという古き慣習を変えることができる、良い機会がやって来た」「磯路を変えるなら今しかないのでは・・」と機運に乗じる動きがあった。磯路地活協の立場は、もちろん後者である。
会長の佐野耕司さん(結成当時は副会長、あんしん部会長を兼任)は「磯路のための改革だから慎重にやりたい。まずは地活協の役割を理解するため準備委員会とは別に、コアメンバーで企画委員会を結成し話し合いの場を持った」と話す。
企画委員会は、難解な書類の解読から始まった。
「インセンティブとか、プラットフォームとか、カタカナが多く、意味を共有することが難しかった。1行ずつ丁寧に読み込んでいった」とは書記の古島智枝子さん(結成当時は町会女性部長)。企画委員会は別名「カタカナ禁止会議」だったとふりかえる。
真剣に取り組むほど、会議の数は増える、それに対する不満も出てくる。佐野さんは「来年、2月には磯路の将来が決まる。本年度の補助金280万円がつくのだから、磯路のために時間を割いて欲しい」とここが正念場であることを訴えた。

 

 

▶スムーズな世代交代をねらい75歳定年制を規約に

 

設立規約を創った。オリジナリティを出すため、磯路らしさを感じさせる文言を織り込んだ。特筆すべきは「会長は、定年制を設け、満75歳をもって再任はない」(磯路地域活動協議会規約 第2章第9条より抜粋)。
「区内にも、50代に就任して再任が続き、気がついたら80代になっていたという町会長は多い。病気があっても無理して活動を続けている会長もいらっしゃる。高齢の方に長年、担わせていることは、磯路には人材がないといっているようなもの。連合町会長には相談役として実働者を見守って欲しいと頼んだ」と佐野さん。
説明会から4カ月。企画委員会で練った案を上部組織である準備委員会に承認を得る形で方向性が決定し、平成25年2月26日の総会において設立に至った。

 

 

 

▶地域主導の実際に役立つ避難訓練を実施

 

磯路地活協では「やさしさ部会」(健康と福祉)、「あんしん部会」(防災と防犯)、「すこやか部会」(子どもの健全育成と青少年の非行防止)、「すみよい部会」(環境と文化)と分野ごとに4つの部会を結成し、各部会に部長、副部長、会計、広報、書記の5名を配置した。既存の活動はこの4部会に落とし込んだ。
地活協による改革第一弾は、あんしん部会が担当する避難訓練だ。
港区は、三方を海に囲まれている。区との境界が川。正面が大阪港。南海トラフの巨大地震が発生したら1万人近くの区民が死亡すると想定されている。当初、あんしん部会の会長でもあった佐野さんはこのことに危機感を持っていた。しかし、行政主導の避難訓練では「自宅から避難所に移動したら終了!これでは到底まちを守ることはできない。本音を言えば、地域の人たちに『(避難訓練に)行ってもいっしょやで(意味がない)』と言われるのが恐かった」と話す。
地活協主導で行った避難訓練は、学校に備蓄されている簡易トイレや食料を実際に使用したり、妊婦の安全を考慮し車椅子を使用するなど、より現実に則した内容となった。避難訓練の実行部隊は、地域振興会で活動していた「防災リーダー」の集団を「自主防災組織 磯路風゜(いそっぷ)」と命名し活躍してもらった。

 

 

▶地域をこえての協力で実現した桜まつり

 
「磯路の自慢って何?」と問うとメンバーは「桜通り」と口を揃える。
桜通りは、磯路の南北800mにわたって桜が植えられ、大阪市の都市景観資源としても登録されている。ところが桜の由来については知られていない。
そこで桜通りの桜を維持管理している団体「桂音会(けいおんかい)」会長を招き、現状報告を聞く「桜さみっと」を開催。すると「桜の剪定、落ち葉の清掃、害虫、桜の老朽化・・・」。会長の口から次から次と課題が出てくる。結果、まずは、現状に注視してもらうため「桜まつり」を開くことになった。
古島さんは、地域の役員が出揃う、区社会福祉協議会の「地域福祉活動計画策定報告会」の場を借りて、桜まつりへの協力を呼び掛けたところ、想像以上に他地域の賛同・協力があった。なかにはイカ焼き器を持ち込んでくださると確約してくださった他の地活協役員もいて助かったという。
「磯路では食中毒を恐れて、イベントでの調理は厳禁。食べ物はみな購入したものでした。これをきっかけに変われたら」と古島さん。
2015年春、桜通りでは、磯路地活協が中心となり地域を超えての「桜まつり」が開催された。
お茶席、フラダンス、バルーン、スマートボール、焼きそば・・・・・・そこには、各地域の団体が得意なものがズラリと並んでいた。地域の洋菓子店は、初回には既存の商品の「桜バーム」を出品、3年目にはイベントにちなんで『桜通りロール』と名付けられた新商品を開発。地域経済にも貢献した。参加模擬店も増え、5つの地活協のスタッフ、ボランティアグループ、みなと生協診療所、弁天郵便局などが参画した。来場者は初回で約3000人、毎年その数は増え続けている。満開の桜が綺麗な時期は1週間程度、その裏には365日、花びらや葉っぱの清掃に奮闘し、維持管理している方々がいることを知っていただく機会になった。

 

 

 

▶「情報発信+見守り活動」をセットで

 

平成26年度地域課題解決型「広報みなと」配布業務の委託契約に関わる公募型プロポーザルに応募した。プレゼンでは、地活協の新聞「磯路地域活動協議会通信」と一緒にポスティングすることにより、キメ細やかな情報発信になるだけでなく、見守り活動ができるので地域問題の解決に貢献できることを訴えた。ポスティング業者にはできない地域住民ならではの視点で差別化を図ることで、結果、審査に通り、平成26年4月より、3500枚を磯路地域全戸配布することになった。
配達する人は、高齢者などの見守りを希望するところはインターフォンを鳴らし、挨拶をかわす。周囲にも目を配る。フェンスの老朽化、荒らされた花壇、ゴミ箱をあさる高齢者から徘徊や認知行動を発見することもある。発見後は、それぞれ適切な機関につないでいく。
この事業は、磯路地域だけでなく、今年度からは池島地域も行っている。池島は高齢化が進み、地域では配達を担える方が見つからない地域事情があった。「ぜひ手伝いたい」と手を挙げた子ども会スタッフたちが担当している。エレベーターのない5階建ての市営住宅も階段を駆け上がって1軒、1軒ていねいに。
「汗だくですが、爽快な顔で、リアルな報告をしてくれる。老朽化による建て替えで全世帯がいないはずの棟の階段に、菓子類を食べ散らかした跡があった。中高生の溜まり場になっているのではないかなど、彼らの目線でとらえてくれる。池島地域にはその都度報告をあげ、確認していただく」と古島さん。

 

 

 

▶古紙回収の収益で、老人憩の家のリフォーム費用積立

 

財源は、区役所からの補助金が75%。残りの25%は、事業ごとの参加費(ふれあい喫茶100円の自己負担など)と寄付金だ。寄付金についての一例では、桜まつりで、子どもたちがつくった牛乳パックの提灯の下の短冊に名前を入れるスポンサーを募集。「桜もちセットのお土産券とCafé券」をリターンする。当日会場まで足を運んでもらい、満開の桜とささやかなお土産、一服のお茶のひとときを楽しんでいただく気遣いも忘れない。
以前からの継続事業である古紙回収は、活動主体を2年前より、地活協に移し、平成28年度で約115万円、このままのペースで5年継続できればおよそ600万円になる。この収益は、実際の活動に使用するのではなく、バリアフリーの整備が必要な磯路会館老人憩の家のリフォーム積立金に繰り入れ、誰もが安全で快適に過ごすことができる居場所作りを目指している。

 

 

 

▶担い手をふやすコツとは

 

磯路地活協は、人も団体も問わず、巻き込み上手である。まず、地域の在住者も在勤者も、町会の会員であるかどうかも関係なく、誰でも参加できるルールを敷く。
活動に入ったら、「短時間の活動でいい」「夜がいいなら夜やろう」活動者のペースに合わせる。車座の会議ではいつでも「自分の意見がいえる」ようストレスフリーで自由な雰囲気をつくる。そして、「どう思う?」「それいいね」「一遍やってみたら?」と任せてしまう。陰でがんばっている人、協力している人には、その活動を他の人に「見える化」することでねぎらっている。
「盆踊りのときは、こどもの時から知っていた子が調理人に成長、自発的に『手伝わせて下さい』とやってきて唐揚げをずっと揚げてくれ、これだけ稼いだので売り上げは寄付したいと持ってきてくれた時はうれしかった」と佐野さん。
地活協では、イベントの模擬店をひとつのコミュニティビジネスと考え、場所代や参加費用は一切もらわない。「新たな担い手が地域のためになるビジネスを試せるチャンスになれば」。
佐野さん、古島さん、2人に続く人たちが、磯路に新しい風を吹き込み続けることができたなら、磯路地活協の担い手は確実に増え、活性化していくだろう。

 

 

 

 

■団体概要 磯路地域活動協議会
大阪市港区磯路地域において、既存の活動をより意義あるものに変え、また新たな事業を生み出すことで、地域の課題解決に取り組む。同時に若者、店舗、他地域をも巻き込みながら、組織改革を進行中。「今までどおり」でなく「これからは」を大切にしている。

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