事業者の想い・取り組んでいる課題とその解決方法・今後の展望など事業のヒント、そしてCB/SBの魅力が満載の取り組みの記事を楽しんでください♪
■□—————–■□—————–■□—————–■□—————–□■
■□—————–■□—————–■□—————–■□—————–□■
多岐にわたるKFCの活動の中でも、最も事業性が高いのが介護事業だ。
同事業は現在、総売上の85%を占めるKFCの経済的支柱だが、そもそものスタートは震災後の仮設住宅で暮らす韓国人高齢者を対象にした訪問だった。
貧困問題に加え、日本語が読めない非識字の問題、さらには日本食が口に合わないなど多くの問題を抱えながら、仮設住宅が撤去されて郊外の公営住宅にバラバラに入居したら、この人たちはどうなるのか――。その危機感から、1999年に食事会を開始。
チヂミやチゲなどの韓国料理を作って食べたり、レクリエーションを行ったりする場として6年間活動を続け、2005年に介護保険を使ったデイサービスに移行し、介護事業をスタートさせた。
現在もデイサービス事業を利用する高齢者の約9割が韓国人女性だという。
また、2009年には訪問介護と居宅介護支援事業所の運営を開始。
訪問ヘルパーによる介護サービスも始めたことで、自宅での生活支援が行えるようになったが、金さんはこの時から在日外国人のための終の棲家をつくる必要性も感じていた。
なぜなら、彼(女)らの多くは独居であり、また年金がないという深刻な問題を抱えていたからだ。
このため、3年の準備期間を経て、2012年には念願の入居施設をグループホームという形で設立。
その際、入居費は生活保護の受給額に合わせて設定したため、定住外国人でも生涯住み続けることができる施設となった。
さらに、翌年からは「通い」を中心に「泊まり」「訪問」の3サービスを組み合わせて提供する小規模多機能型居宅介護の施設として運営。
施設建設には1億円規模の借入が必要だったが、高齢者事業は総合的に整備する中で利用者も増えているという。
一方、介護事業以外では、単体では採算をとるのが難しい事業もある。
例えば、60人以上の小・中高生が登録する学習支援は、月4回開催の利用料が1000円と安価なため、助成金を受けるなどしながら活動を継続している。
「NPOでも経済性はすごく大事だという思いでやってきましたが、マイノリティを対象にしているだけに事業収入だけでは難しいものもある。
事業性が維持できなくても、KFCにとっては大切な事業です」
現在、KFCは兵庫県内では1、2位を争う規模のNPOにまで成長。
スタッフもパートタイマーを含めると50人を超え、そのうちの約半数が定住外国人だ。
20年にわたる活動を通じて、多くの定住外国人を支援するとともに、雇用の受け皿としても貢献している。
「事務所を立ち上げてから、あれよあれよという間にこの規模になりましたが、事業をしていて本当に良かったと思えるのは、自分のしたことで当事者や利用者が幸せそうにしている時です。
グループホームを建てた時などは、韓国女性らしい独特の褒め方で『社長、男になったね』と言われ、素直に嬉しかった。
自分がやらなアカンと、ある意味、憑かれたように進めてきた事業ですが、結局、コミュニティビジネスというのは経営収支を合わせることも大事だけど、最終的には心意気みたいなものが必要ではないでしょうか」
ただ、今後はやみくもに事業規模を追うことはしない。
組織の内部に目を向け、スタッフの育成をはじめ事業の中身の充実に力を入れたいという。
「長く事業を続けていると、自分を含め団体設立時の想いがだんだん薄れてくるものですが、誰かの役に立ちたいという気持ちは人間が本質的に持っているもの。
定住外国人のための社会資本を少しでも多く生み出していくことで、みんなが『ここにいて良かった』と思える場にしていけたらと思っています」
■団体概要 NPO法人神戸定住外国人支援センター
在日コリアンやベトナム人などが多く暮らす神戸を中心に、子供から高齢者まであらゆる世代の定住外国人らを支援。
デイサービスやグループホームなどの介護保険事業をはじめ、日本語の学習支援、子供の学習支援、アドボカシー提言に至るまで、日本に生活の場を持つ外国人の権利を守る活動を行っている。