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親の虐待や離婚、病気などが原因で、親と一緒に暮らせない子どもたちは、全国で約4万6,000人に上回っている。
このうち約2万9,000人は、児童養護施設に入所しているが、18歳になると原則、施設からの対処が求められる。
子どもたちは、頼れる身寄りも少なく、十分なお金や知識・技能もないまま、自力で生活していかなければならない。
さらに、一般家庭に育つ子どもの大学・専門学校への進学率が約8割であるのに対し、
施設出身者は、わずか2割(厚生労働省『社会的養護の現状について』平成26年3月)。
施設を出た子どもたちが貧困に陥り、社会的排除の危機にさらされる現実が見えてくる。
NPO法人子どもデザイン教室は、親と暮らせない子どもたちが、
18歳からの厳しい現実を生き抜き、社会から排除されないようにすることを目的に、2007年に設立された。
代表の和田隆博さんは、子どもが自立するには「小さい頃から、自分の将来を設計できる力」が必要だと考えている。
デザインを通じて、必要な資金(外的資本)、生きる力(内的資本)の両面から、子どもたちを支援している。
和田さんは、グラフックデザイナーとして、22歳で独立し、広告業界で活動を続けてきた。
経営する会社は、常に忙しく、数千万の年商を上げていたが、一方で和田さん自身は、
長年、身体を酷使したため、動けなくなり病院に担ぎこまれた経験がある。
「もう少しで死ぬところでしたよ」
と医師に言われ初めて「仕事より健康が大事」なことに気がついたと言う。
この時、41歳。
これからの人生は「人の役に立つために生きる」と決心し、立ち上げたのが、子どもデザイン教室だった。
健康は害したものの、和田さんが仕事を通じ会得したプロフェッショナルな技術や知恵は、
親と暮らせない子どもたちの自立支援に対し、大いに力を発揮した。
学習支援である「子どもデザイン教室」では、親と暮らせない子どもたちに対し、
1年間のデザインレッスンを無償で提供している。
デザインレッスンといっても、絵をうまく書けるようになるのが目的ではない。
子どもの「絵が描きたい」という想いを想像力に変え、創造の過程で努力する心を育む。
これが「自分の人生を切り拓く原動力になる」と和田さんは言う。
1年間のレッスンのうち、前半のカリキュラムは、子どもたちが各自ひとつのオリジナルキャラクターと、その誕生ストーリーを考え、
そこから、ピンバッチ、ポストカード、お菓子、ゲーム、絵本などに商品化していくというものだ。
「創る過程で、失敗ばかりの時も、根気のいる作業の時も、投げ出さず、何度も繰り返すうちに努力する姿勢が身につきます。
『失敗したらやり直したらええ。やり直す限り、失敗ではないのやから』とよく言っていますね。
人生でも大切なことだと思います」
レッスンの後半は、商品を実際に販売する方法を考えるところからスタートする。
ここでは、子どもたちに「第三者の存在」に気づかせることがポイントだ。
「デザインとアートは違います。アートは、自分の好きなものをつくる自己表現です。
デザインには、常に第三者のニーズがあります。
自分がよくても、第三者が満足するものをつくらなければ売れません。
子どもたちがつくりかけの作品を『捨てたる!』とかんしゃく起こすときも、『捨てたら、誰が困る?』とか
『その粘土には、みんなのことを応援するたくさんの人の気持ちがつまっているんやで』などと伝えています」。
出来上がった商品は、年度末のバザーで販売し、売り上げは子どもたちで分けている。
また、1年間のカリキュラムを修了したら「キッズクリエイター認定書」がもらえる。
「子どもデザイン教室」のデザインレッスンには、このほか、一般家庭向け(月4回、5,400円、材料費別)、
おとな向け(月4回、7,560円、材料費別)のレッスンを提供し、年会費(3,000円)は団体の運営費に当てている。
★次回へ続く・・・・
■団体概要 NPO法人子どもデザイン教室
親と暮らせない子どもたちの低い進学率・貧困問題を改善するために、子どもたちの創造力や努力する姿勢を育てる「子どもデザイン教室」、
子どもたちがつくったキャラクターを企業に販売し自立資金として貯金する「子どもデザイン基金」、
養育里親として子どもたちと寝食を共にする「子どもサポートホーム」の3つ事業で支援している。