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滋賀県のJR大津駅近くの商店街にある「マイママhouse」。
NPO法人マイママ・セラピーが運営するこの施設は、
0歳児を持つ母親で、育児や自分麻ライフワークに悩んでいる人たちのための「お母さんのための保健室」「第2の実家」である。
マイママ・セラピーが、産後早い時期の0歳児の母親を支援するのは、理事長を務める押栗泰代さんの体験がベースにある。
幼少時代は看護師になりたいと思い、その夢を実現。
その後、大津市役所の保健師として働いていたが、育児で一時仕事を休んだ時、押栗さんは子育ての難しさを自ら体験した。
それまでは行政の保健師として地域のニーズに合った保健指導をしているつもりだったが、いざ自分が母親になってみると、子育ての毎日は不安だらけ。
だが、そんな不安でいっぱいの母親が頼っていける地域サービスはどこにもなかった。
「健康な母子が行政サービスの対象にならないのは、ある意味、当然。
でも、初めて子育てするお母さんはやっぱり誰でも不安ですし、教科書的な答えではなく、わが子がこれで大丈夫なのかを知りたいと思っているんです」と押栗さん。
復帰後は、悩みや不安を抱えるお母さんたちの力になりたいと、ボランティアでたくさんの相談を受け、
いつでも身近に相談できる保健師が求められていることを痛感した。
そして、母親たちが子育てに関して一定の価値観を持つ前の、もっと早い時期に個々に対する支援を受けていれば、
出産後ももう少し楽しく生活できるのではないかとの想いから、2000年4月に「開業保健師」として独立。
0歳児の母親と対象とした「お母さんと赤ちゃんのための保健室 マイママ・セラピー」を立ち上げた。
とはいえ、公衆衛生を守る保健師の仕事は、一般的には行政が提供する公益サービスである。
その中で、押栗さんは「受益者負担で成り立つ保健師」という新しい保健師像を目指して独立したが、事業の継続は一筋縄ではなかった。
当初はタッチケアという形で母親たちの育児相談を行い、毎回20名ほどが参加してくれたが、低価格(6回シリーズで3,500円)のサービス提供だったため、事業採算は赤字。
しかも、行政からは「保健指導を有料で実施している」との指摘を受け、公益と受益者負担の狭間で悩み続けた。
しかし、その間も悩みを抱える母親からの問い合わせは増え続け、押栗さんの携帯電話は朝から晩まで鳴り響いた。
そのニーズの多さは、行き場のない育児不安を抱える母親が潜在的に相当数に上る証しだったが、
資金繰りが逼迫する中で、サービスの提供ができなくなる危機感も日に日に高まった。
そうした中で、マイママ・セラピーは提供サービスの質向上に努めるとともに、提供価格を段階的に引き上げ(現在は5回ワンセットで15,800円)、事業を継続させることに成功。
その後は、教室の受講生も順調に増えた。
また、教室の卒業生が自立できず、マイママ・セラピーへの相談件数が減らないという課題もあった。
そこで、なぜ自立できない卒業生が多いのかを調べるため、母親がどのような不安を抱えているのかについてのアンケート調査と聞き取りを実施。
その結果、見えてきたのは大きく分けて「子どもについての不安」と「母親自身の不安」があり、
なかでも母親自身の不安に関しては「子育てという初めての経験に対する不安」と「母親自身が女性としてどのように生きていくのか、生き方に対する不安」の2つがあることが判明した。
前者についてはマイママ・セラピーが提供するサービスで解消することができるが、後者についてはカバーできておらず、この不安が自立できない要因となっていたと押栗さんは言う。
そこで、マイママ・セラピーでは、「女性としての生き方への不安」を解消するため、受講生自身が「未来予想図」を描くカリキュラムを導入。
現在は、以下のようなサービスを提供している。
このサービスを開始してから、卒業生のメールでの相談件数が大きく減り、自立する女性も増えた。
こうしてマイママ・セラピーは、0歳児の成長だけでなく、その母親の成長も支援する場として定着していった。
現在、マイママ・セラピーは、有償ボランティア8名(栄養士、保育士、教員など)で、メイン事業である「0歳児親子教室」をはじめ「マイママhousu」の利用サービス、託児サービス、個別相談などのサービスを提供している。
通常、このような子育て支援サービスは行政が行うものだが、マイママ・セラピーのビジネスモデルの特徴は、子育てに不安を抱える母親の中でも特に経済的に余裕のある母親に対象を絞った点にある。
また、民間団体からの助成金も積極的に活用。
特に社会的課題の解決に貢献している団体に助成される仕組みを利用したことで、これまで地域になかった健康な母子への支援サービスを新たに誕生させた。
そして、マイママ・セラピーは、新たな展開に向けての活動も行っている。
それは、マイママhouseに続く「保健室」の設置だ。
これは、広く社会のニーズに対応したもので、すでに地域のショッピングセンターから依頼もきており2014年11月にオープン。
また、企業からは産後女性の復帰支援についての依頼も増えてきた。
今後も地域を拡大しながら個別や集団指導を実施していきたいと考えている。
このように「お母さんのための保健室」を社会に広げていくことが、マイママ・セラピーの大きな目標である。
そうすることで、不安を抱えるより多くのお母さんが、自身をもって子育てに取り組んでいける。
母親が変われば、子どもが変わり、未来の社会も変える。
そうやって、少しずつだが、社会が変わっていけばと思っている。
また、「受益者負担で成り立つ保健師」という新しい保健師を志した押栗さんは、株式会社を設立し全国で改行する保健師とともに(一社)開業保健師協会も立ち上げた。
今後、開業保健師の仲間もどんどん増やしすべての世代にサービスが提供できるような仕組みを構築していきたいという。
■団体概要 NPO法人マイママ・セラピー
子育てに悩む母親の育児不安が社会問題となる中、産後早い時期の0歳児の母親を対象とした親子教室などを展開。
地元の商店街には「マイママhouse」の拠点を構え、独自のカリキュラムで保健施策からこぼれる健康な母子を支援している。