みんなの活動報告内容
Loop Sports Managemenet 合同会社は、バスケットボール教育(コーチング・クリニック)を国際的に展開し、海外の選手を日本に招待したり、日本の選手を海外のチームへ送り出したりする事業のほか、非営利活動としてスポーツ教育を通じて青少年の健全育成に取り組んでいます。コロナ禍での活動や今後の展望などについて、代表の野澤亮介さんにお話をお聞きしました。
今のお仕事をするきっかけは何ですか?
大阪市天王寺区で生まれ育った私は、中学生の頃からバスケットボールに夢中で、本場のアメリカでプレイしたいという目標を持っていました。そして、18歳でカリフォルニアに留学。トライアウトを重ねて、ヨーロッパやアメリカでプレイする夢を叶えました。
ある程度選手としての夢を実現した段階で、「日本人選手が海外でもっと活躍出来る場を設けたい」と考えるようになりました。そして、多くの人の理解と協力を得て、ロサンゼルスでバスケットボールチーム”Los Angeles Loop”を設立し、全米屈指と言われるDrewリーグに、初の日本人オーナーチームとして参戦しました。選手としてのみではなく、人と人をつないでいくコーディネーターや経営者としてスポーツに貢献できるという多面的な自分の可能性を、アメリカでの経験で見出すことができました。
2011年3月に東日本大震災がありましたね。その時に、日本の選手たちを励ましたいという意味を込めて、アメリカの選手を日本に連れてきました。そうすると、かつての中学生の僕と同じように、子どもたちや若い選手が目を輝かせて喜んでくれたんです。
アメリカに行くためには費用も時間もかかりますよね。正直、誰もが僕と同じような経験や実績は作れないと思います。しかし、僕はその経験から気づいたのです。自分が渡米して得た経験や人脈というものには、どうやら価値があるらしいと……。そしてその価値は、バスケットボールというスポーツを通じて、子どもたちを励ましたり勇気づけたりすることができるんだと。そのような思いが団体を設立したきっかけとなりました。
ご自身の経験がそのまま活かされて活動に繋がったんですね。選手とチームを結び付けるコーディネーター(エージェント)として活躍する、何かきっかけがあったのですか?
安藤誓哉選手のケースをご紹介しましょう。彼はまず、Los Angeles Loopの選手としてアメリカで活躍しており、トライアウトを経てNBL Canada初の日本人選手となりました。このことは、日本人でもプロとして活躍できる場は世界中にたくさんあり、アメリカでのトレーニングやトライアウトへの参加など、選手育成を含めた包括的なエージェント業務を展開するきっかけとなりました。
その後、FIBA(バスケットボール国際連盟)のネットワークを活かし、優秀な海外選手を世界各国のリーグへ派遣する事業を開始しました。 日本人選手の留学やチーム契約のお手伝いや、逆に海外選手の日本チームとの契約を支援したりしています。Zack Atkinson選手(大分ヒートデビルズ/2011)、D’Andre Bell選手(千葉ジェッツ/2012)などは、私が選手とチームの縁を結ばせていただいた選手ですね。最近ですと、B-leagueリーグの秋田ノーザンハッピネツ(2018-2019)を経て、ライジングゼファー福岡でヘッドコーチをしているJoseph Pep Carlosさんや、群馬クレインサンダーズのTrey Jones選手、そして日本以外の国では台湾P-league Fubonで活躍しているChares Garcia選手などがいます。彼らの活躍を見ることが、今の私にとっては大きな喜びです。
昨年からのコロナをきっかけに、活動に変化は生じましたか?
大きく変化しましたよ、国際的な往来が難しくなったので。国内でも、体育館が使えず練習ができなくなったり、試合が中止になるなど大きく影響を受けました。
しかし、そのような中でもZoomを活用したオンラインでレクチャーやコーチングを実施するなど工夫を重ねています。たとえば現在ロサンゼルスで活動しているクリスジョンソン(Chris Johnson)トレーナー と業務提携し、日本全国の子どもたちにオンラインでドリブルなどを教えています。トレーナーが本場アメリカのNBA選手たちに指導しているものと同じ内容を、日本の子どもたちと若い選手に届けることができました。参加者は、すごく興奮してくれましたよ。
これからの展望は?
世界ナンバー1の選手を育成することです。コロナ禍がたとえ続いても、オンラインレッスンやバスケットボールアカデミー(教育活動)を展開していきたいと思います。またグローバルな環境を目指し、少しでも日本の子どもたちに海外で行われている練習内容や情報をインスタグラムなどで発信していきたいと思っています。
また、学生アスリートの進路問題についても、啓発をしたいです。スポーツ推薦などで大学へ入学した学生たちは、学業と練習、そして私生活のバランスに悩みます。そういった場合、選手というキャリアのみではなく、私のように色々な活動に結びつくことがあるということを今の学生アスリートに伝えたいです。そのためには、学業も重要です。学校の勉強、私の場合は英語はとても重要ですし、経営者となった今でも幅広い知識が求められています。文武両道を果たすことが理想です。
最後にメッセージはありますか?
私が世界中の選手の成長を見てきた中で、躍進し活躍する選手には、ある共通点があることを知りました。それは一つの目標に対して、情熱をもって毎日それに取り組み励み、何があってもあきらめずに屈しない姿勢を維持することです。これはおそらくスポーツ選手のみではなく、異なる分野で活躍できる人にも共通しているのではないかと思っています。
そして、そのように自分と向き合って闘っている姿を、周囲の人は必ず見ています。毎日、地道にランニングを続け、基礎トレーニングを怠らない姿を、周囲の人は見ているのです。そして、信用を集め結果が実ったときに、成功へと繋がっていくのだと思います。
また、スポーツ教育の意義について、社会全体にもっと理解してもらいたいと思っています。アスリートのみではなくて、スポーツを通じて学びえる内容は、人間の健全な成長にとても重要です。勉強だけでは身につけることができない礼儀作法、人を敬う気持ち、感謝の気持ちを持つことといった精神、失敗した仲間にどう接するか、自分が失敗したときにどう接してもらうかといった点からはコミュニケーション能力やチームワークなど、すべての人々にとって不可欠な学びです。
コロナで大変な時期がまだもう少し続きそうですが、スポーツをしている次世代の方々にそのようなメッセージを届けることができたら、と思っています。
(インタビュー:特定非営利活動法人若者国際支援協会)
※このインタビューは、当法人に所属する大学生・高校生が実施しました。
コロナ禍の中、市民の生活を支えるボランティア・市民活動がどのように課題を克服し、活動に取り組んでいったのかを、団体の生の声からお届けします。