みんなの活動報告内容
ノリで始まった生野将棋名人決定戦
前回の投稿でも触れましたが、昨年、生野銀座商店街さんとのコラボ企画で「生野将棋名人決定戦」を開催しました。
きっかけは、将棋を観るのが好きなメンバーの1人が「自分の周りには全然見当たらないけど、生野区に将棋が好きな人がどれくらいいるのだろう?」とふと思ったことです。
ネットで検索してみても、生野区内の将棋道場や教室など将棋を指せる場所やコミュニティの情報も出てきません。しかし、将棋の競技人口や生野区の人口から算出すると、2,000人くらいはいる計算に。ちょうど地域の(特に男性の)居場所作りに取り組んでいたこともあり、
「一度気合を入れて、生野区内の将棋好きを炙り出してみよう」
というノリで企画したのが、「生野将棋名人決定戦」でした。
タイミング良く、大阪府の商店街等モデル創出事業に採択されて資金が得られたこともあり、プロモーション動画を作成したり
生野区全体の7割くらいの世帯にチラシを配布するなど、当初の想定以上に大規模に展開することができました。
生野区全体を8つのブロックに分け予選会を行い、予選を勝ち抜いた16名で生野銀座商店街どりー夢館での決勝大会を行いました。
計算した2,000人には到底及びませんでしたが、それでも70名近くの参加者がありました。申し込みの段階からLINE公式を使って情報発信や個別メッセージのやり取りを丁寧に行った結果、大会が終わった後に残ったのは、約80名の将棋コミュニティでした。
生野区に待望の将棋コミュニティ。約1年間運営して見えてきた課題
「こんな場所を作ってくれてありがとう。」大会後、特に年配の方を中心にこんなお声をたくさんいただきました。
そんな声に応えるべく、生野銀座商店街を拠点として週3回の将棋教室を開いたり毎週日曜日に将棋を指せる場を提供したりと、大会後も継続してコミュニティ運営や場所作りに取り組んできました。
積極的に参加してくださる方もいらっしゃる一方で、大会後は顔を見ない方も。約1年間コミュニティを運営してきて感じたりお話を伺ったりする中で、いくつかの課題が見えてきました。
- 実力不均衡による参加へのハードル
決勝大会に残った人が中心に最初から熱心に参加してくれた結果、実力的にレベルの高い人が集まる傾向にありました。結果的に、初心者・初級者がその中に参加することに対して、心理的なハードルがあると考えています。 - 拠点への距離的ハードル
コミュニティの拠点としている生野銀座商店街は生野区の南端に位置しています。そのため、生野区の各地域から参加するにあたっては、物理的に遠くて行けない、参加しにくい方もいらっしゃったと思います。参加されている方の中からも、そういう声が聞かれました。
いわゆる「地域」より広域のコミュニティは、人数も多く実力など幅広い人が所属しているなどメリットが大きいのですが、拠点を1か所にすることによる偏りや距離的な問題などもあり、メンバー全体に公平にサービスを提供できてない現状もあるのかなと感じています。
一方で、地域の将棋コミュニティも、持続するのが難しい理由がある
昨年大会を開催するにあたり、地域会館や老人福祉センターなどに挨拶を兼ねてお話を伺う機会がありました。現在将棋を指す場を提供していたり、過去に将棋コミュニティが存在していたがなくなってしまったなど色んなお話を聞けましたが、「コミュニティの持続」という観点で共通の課題があると感じました。
- いつも賑わっている(人数がいる)ことの重要性
老人福祉センターに伺った時、囲碁コーナーは盛況だったのに対して将棋コーナーは閑散としていました。お話を伺うと、理由は2つのゲームの人気の差ではなく、「循環の差」だということが分かりました。いつ来ても対局相手がいる、参加者がたくさんいる→また顔を出そうという好循環と、いつ来ても人が少ない、対局相手がおらず待たされる時間が多い→足が遠のくという悪循環です。地域の趣味コミュニティの一番の課題は、毎回きちんとある程度の参加者を確保することではないかと思います。 - 実力不均衡による参加へのハードル
参加人数と同じくらい重要なのが、自分が対局したい相手がいるかということです。あまりも実力差があり過ぎる相手とは続けて対局しにくいという心理が働き、やはり足が遠のく原因にもなり得ると思います。地域会館の男性開放デーで将棋を指せる場所を訪問した時に、実際にその場に2人いるのに実力差があるという理由で2人とも待っているということがありました。 - 人間関係による参加へのハードル
これも実際に目にした体験なのですが、「あいつとは指したくない」からという理由で2人いるのに待っているという状態がありました。これは仕方のないことだと思いますが、少人数でメンバーがあまりにも固定しすぎていると、却って居心地が悪い状態になることもあり得るという事例ではないでしょうか - 運営が属人的
ある地域では、将棋コミュニティが長い間存在して定期的に開催されていましたが、指導者的な1人の運営者の健康状態が理由で、続けることができなくなりました。やむを得ない理由だとは思いますが、運営が属人的すぎると突然コミュニティ自体が継続できなくなるという事態も起き得ます。
地域の趣味コミュニティは自宅からの距離も近く集まりやすい反面、絶対数が少なくなりがちなので持続して運営していく難しさがあります。地域で現在運営されている方も、同様の悩みを抱えておられました。
地域と連携した新しいモデルへの挑戦
昨年から地域の方とお話してきて、また1年間コミュニティを運営してきて、これらの課題を解決していく方法として、全体コミュニティと地域コミュニティを連携するモデルを実践してみることにしました。
各地域に気軽に通える距離で地域コミュニティを作り、全体コミュニティからも参加者を募集し地域コミュニティへの参加を促します。そうすることで、生野区全体で将棋を指せる拠点を増やすことができ、地域コミュニティの参加人数も確保することができます。また、地域コミュニティ間の連携も積極的に行い、地域に住んでいる人をメインにしながらも、地域外の人との交流も行ってある程度の流動性も持たせたいと思っています。また、地域の参加者の実力に合わせた人を全体コミュニティから派遣するなど、地域の人が参加しやすい環境を全体でサポートしたいと考えています。
新しいモデル事例①元メンバーが集まってコミュニティを復活(南巽:まちかど図書館3388)
前述した、指導者の健康状態で活動休止となっていた巽南地域の将棋好きな元メンバーの方々。昨年の予選大会にも参加していただけましたが、再びコミュニティを作りたいという要望があり、新しいモデルで毎月第3日曜に集まることが決まりました。第1回目の会が、8月20日(日)に開催されました。
地域の方のおおよその実力が分かっていたので、それに近い実力の人を全体コミュニティからも募集。地域の方4名+全体コミュニティから4名の8名が参加し、2グループに分けてリーグ戦を楽しみました。元指導者の奥様も観戦に駆けつけてくださいました。全体コミュニティから参加のうち2名は昨年の大会後初めて参加してくださり、お互いのコミュニティのメリットを感じられる会となりました。
〇まちかど図書館3388将棋倶楽部(仮称)
場所:大阪市生野区巽南5丁目16−30 昌久マンション まちかど図書館3388
日時:毎月第3日曜13時~17時
内容:リーグ戦(自由参加)、自由対局
席料:500円
新しいモデル事例②30年ぶりに将棋同好会を復活(北巽まちづくり協議会)
北巽地域では、約30年前まで老人クラブ連合会の囲碁将棋同好会が存在していました。参加者が少なくなり同好会は消滅してしまいましたが、北巽会館の2階和室には今も当時の会員の名前が木札に書かれたまま残っています。和室には、脚付きの将棋盤が複数残っており、人さえ集まればすぐにでも将棋が指せる状態のまま、時間が経過していました。
昨年この場所で大会の予選会を行いましたが、その後も「またここで将棋指せるんかな?」と会館を訪れる方が数名いらっしゃったそうです。
この度、北巽まちづくり協議会さんと連携して、9月から「北巽まち協将棋同好会」として30年振りに復活することとなりました。私たちが会の運営を担当し、まち協さんが掲示板や回覧板などでの地域への周知・連絡をサポートしてくださいます。
〇北巽まち協将棋同好会
場所:大阪市生野区巽北2丁目4−16 北巽会館老人憩の家
日時:毎月第4土曜13時~17時
(初回は9月23日)
内容:自由対局(予定)
席料:500円
上記コミュニティへの参加希望やお問い合わせは、スキルラボが運営しているIKUNO SHOGI CLUBのLINE公式からメッセージください。