企業×市民活動 コラボのススメ内容
区内外の企業やNPO、任意団体など多様な方々が集まり、日頃の業務や社会貢献の情報交換を通じて企業と福祉のマッチング、コラボレーションを仕掛ける拠点として機能する「にしよどリンク」。コアとなる役割を担う6名のキーパーソンに、企画・運営メンバーとして活躍することになった経緯や思いについてお話を伺いました。
にしよどリンク
前身は、平成27年9月から5回にわたり開かれた異業種交流会。
現在は、福祉をテーマに、区内外の企業・商店・事業所・NPO・地域住民など業種や世代を超えた人々がコラボレーションして新しいカタチを創造していく場であるとともに、第3の居場所「サードプレイス」を目指し、誰もが平等に参加できる「世界一ゆるい異業種交流会」。
(にしよどリンク広報物より)
異業種同士のマッチング、コラボレーションを生み出すプラットフォーム「にしよどリンク」
西淀川区はものづくりのまちとして有名ですが、福祉関係の事業所も多く、「福祉」に関するポテンシャルが非常に高いまちでもあります。
そこで、異なる事業者同士連携して地域に対して何かできないか?そのためにいろいろな人々が集える交流の場ができないか?と発足したのが「にしよどリンク」です。
「にしよどリンク」に参画されているのは、区内外の企業、商店・事業所・NPO・地域住民など業種や世代を超えた多様な人々で、常時20~40団体、多い時は100を超える時もあるとのことで、異業種同士のマッチング、コラボレーションを生み出す実践的な交流の場として他の区からも注目されています。
「にしよどリンク」は、2ヶ月に1度行う定例の交流会として位置づけ、それ以外ではテーマを「福祉」に限定せず、地域課題の解決や、まちづくりの推進につながる情報交換、共有を行い、マッチング、コラボレーションを生み出すことを目的とした「にしよどリンク拡大版“MAIDOにしよど”」、さらに参画団体の強みを活かしたコラボレーションをテーマとした「にしよどリンク番外編」と、大きく3つに分かれます。「にしよどリンク番外編」は「“大阪を変える”100人会議」ともコラボレーションしています。また、「にしよどリンク」で生まれたアイデアをブラッシュアップし、実現させるために「プロジェクト会」を設け、具体的な取組みへと落し込んでいます。
もともと中央区社会福祉協議会に所属されていた担当者が、西淀川区社会福祉協議会へ異動された際、中央区で行われている異業種交流会「中央区フィランソロピー懇談会(CFK)」をモデルに、“西淀川区にもコラボレーションを生み出すプラットフォームを作り上げたい!”という熱い思いからスタートしたもの。企画・運営スタッフ一丸となり、約1年かけて準備をし、実現した取組みです。「にしよどリンク」発足にあたっては、中央区フィランソロピー懇談会(CFK)も、大阪市ボランティア・市民活動センターも協力的にバックアップしてくれたとのことでした。
こだわりは社会福祉協議会として先導するのでなく、フラットな立場で関わること。企画・運営のコアメンバーの方々と同じ「仲間」として同じ目線で一緒にやるスタンスにこだわりがあるとのことです。そんなこだわりから、大切にしているのは、以下の2つの考え方。
・「『(CFK拠点は)中央区で、企業や商業施設などが多いからできるんだ』ではなく、どんな地域にも特色、いいところは沢山あるはず。『地域をよくしたい』という人の思いの強さ、熱さが一番大事」
・「コラボレーション事例を生むには、人と人とが出会って、お互いの人となりがわかって、それから初めて生まれるもの」
これら活動を支えているのは「西淀川区をもっとよくしたい」との思いを持つ参加者の熱い思い。そしてそれを支えるのがコアメンバーによる企画・運営会議です。
実際に企画・運営会議の現場にお邪魔し、お話を伺いました。
コラボレーションでイノベーションを起こす―具体的事例を生み出すことを強く意識
―株式会社マルモット 代表取締役 多田 修さんのお話―
「にしよどリンク」発足に伴い、福祉を柱に置くということはコアメンバーみんなで決めました。福祉に関連した事業は対象年齢が広い、ジャンルもさまざまですから、「福祉に特化した交流会をすれば、いろいろな団体が集まってくれるのではないか?」と考えたのです。
たくさんの団体がいるからこそ、コラボレーションでイノベーションを起こすことができる。そんなコラボレーション事例を生み出すことを強く意識しています。
今日、企画・運営会議にコアメンバーとして初参加のワカタ製作所の渡邊さんは、「西淀川区ものづくりまつり」の実行委員長です。私は、西淀川区をアートで繋ぐ「みてアート」の実行委員長をさせていただいています。どちらも、たくさんの企業や団体が担い手として関わる大規模なイベントで、ここにいる他のメンバーも担い手としていろいろ携わっています。活動のコアになっている人が自然に集まって来てるんですね。
この「にしよどリンク」独特のゆるさ、居心地の良さも影響しているのかもしれません。
自分の中ではここがサードプレイス(第三の居場所)です。
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西淀川区をもっとよくするために、顔の見えるつながりづくりをしていこうという主旨に強く共感
―にしよどにこネット 代表理事 福田 留美さんのお話―
私たち「にしよどにこネット」は、子どもはもちろん、子育て世代や、子どもを支えるさまざまな人たちが地域と繋がり、顔の見える関係性づくりをしていくことをモットーに日頃の活動をしていますから、福祉をコアとし、顔の見えるつながりづくりをしていこうという「にしよどリンク」の主旨に強く共感しました。
企業やNPO、任意団体など組織の垣根を越えて、アイデアを出し合うことは刺激になりますし、マルモットの多田さん同様、ここは、私にとってもサードプレイス的な居場所と思っています。
ここで話し合われることは、日頃の活動に直結しているわけではありませんが、「にしよどリンク拡大版」の内容をどうするか、企画の話し合いを通じて、「にしよどにこネット」の運営課題に関するヒントを得られたり、地域のお母様方のお困り解消に繋がるようなちょっとした発見があったり、コアメンバーのニーズの受け皿としてのマッチングなどにもつながっています。
「これやってみない?」「いいんじゃない?」といったゆるい繋がりでありながら、機動力の凄さを実感しています。
この企画・運営会議も毎回楽しみにしています。大きなことを仕掛ける役割をいただいてはいますが、2ヶ月に1回集まるゆるやかな感じがいいのだろうと思います。
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理学療法士、言語聴覚士…福祉をコアにするなら提供できる強みがたくさんある
―西大阪訪問看護ステーション 次長 理学療法士 日高 憲司さんのお話―
訪問リハビリテーションを展開している会社で理学療法士として働く中、いろいろな方からお声がけいただき、自分たちの活動の場が広がっていることを実感していましたが、もっと西淀川区のことを知りたい、知らなくては、という思いはありました。
企画・運営メンバーに入ることで、西淀川区のことをより深く知ることができるのではないか? またいろいろな方に理学療法士という仕事を知ってもらう機会になるのではないか、と考え、参加するようになって、現在に至ります。
ゆるやかな繋がりの仲間たちと延長線上で無理なく、逆に毎回初参加の人もいて適度に刺激もあり、楽しく活動できています。
最近、「失語症の方々が社会に出るきっかけをつくりたい」という言語聴覚士の資格を持つスタッフも仲間に加わりましたので、私たちらしい強みを提供できるのではないかと思い、新たなコラボレーションに可能性を感じています。
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コアメンバーとしての活動を通じて、ビジネスチャンスを広げ、人間的成長を実感できる
普段出会うことのない人たちとの協働が新たな出会いをつくる
―入浴サービス株式会社 マネージャー 吉見 浩一さん、主任 小浦 圭太さんのお話―
吉見:訪問入浴介護サービスを展開している会社として、
西淀川区で10年以上仕事をしてきましたが、、お恥ずかしい話、介護業界同士のつながりはありましたが、地域のさまざまな事業所とのつながりは希薄でした。「にしよどリンク」のコアメンバーとしての活動を通じて、訪問入浴サービスをキーに、もっと何か役に立てるのではないか、ニーズがあるのではないか、と考えるようになりました。
企業の新たなビジネスチャンスを広げるうえでも、成長の機会を与えてもらったと感じています。
同時に、会社の近隣に住んでいる子どもの見守り活動など、地域の方々と打ち解け合える関係ができ、人間的な成長も実感しています。
小浦:この会議は楽しくて、ずっと参加しています。
個人的なことになりますが、「子育てをする父親として地域に貢献できることはないか」、と考えていた時、ここで出会った「にしよどにこネット」の福田さんから「にこパパネット」の紹介をしていただき、活動をしています。普段出会うことのない人たちとの協働が、また新たな出会いをつくってくれたと実感しています。
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さまざまな切り口からの見方や考え方があることに気づかされた
―行政書士 つくだ法務事務所 代表 横山 光応さんのお話―
「にしよどリンク」の前身となる異業種交流会でのご縁がきっかけで、企画・運営に関わるようになりました。普段、行政書士として介護福祉に携わる事業者様の支援などを行っていますので、介護事業所とは接点がありましたが、「にしよどリンク」に参加するたびに、新たな出会いがありました。業種や職種の垣根を越え、地域の課題に対して参加者が共に考えることを通じて、多様な視点や考え方があることに気づきました。
自分たちとは違った見方や、やり方ということですね。いつも勉強になります。
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ものづくり企業として新しい視点を得る、逆に何かに貢献できる―そんな関係づくりができれば
―株式会社ワカタ製作所 代表取締役 渡邊 貴弘さんのお話―
ものづくりには一定の時間がかかりますが、時間がかかって当たり前ではなく、時代に適応したイノベーションが必要だと思っています。最近、自身が時代についていけていないのでは、とジレンマを感じています。
そんな中、多様な業界をマッチングし、コラボレーションを生み出す仕掛け人としての皆さんの企画力や機動力をものづくりに生かす、西淀川区のものづくり企業として新しい視点を得る、逆に何かに貢献できる、そんな関係づくりができれば、という動機で今回初めて参加しました。
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皆さんそれぞれに熱い思いを語ってくださり、その後、企画・運営会議がスタート。限られた時間の中、てきぱきと当日のサマリーが組み立てられていきます。ただ、これは来月に迫った「にしよどリンク(拡大版)」において、「予告をするためのもの」で、まだ実施までには期間があるにも関わらず、「誰をゲストにする?」「誰にプレゼンをしてもらう?」「タイムテーブルはどうする?」と細かな仕様が決められていく、その発想力、協働力、スピードには驚かされました。
そして迎えた10月24日、第14回「にしよどリンク」には50名近い参加者が集まり、大盛況でした。次回の第15回「にしよどリンク」は12月4日に開催されます。
基本的には
① 告知 ②コラボ事例報告 ③プレイヤーズタイム ④新しい参加者紹介 ④ワーク⑤グループ発表 ⑥参加者情報リレー という流れで行われています。
プレイヤーズタイムとは、外部より講師(プレイヤー)を招き、講演等を通じた情報提供をする時間。
参加者は各々グループに分かれ、得た情報についてディスカッションを行い、その内容を全体で共有するというもの。
この日のプレイヤーは、Office ニコ 代表 藤井 奈緒さん。藤井さんは、上級終活カウンセラー、相続診断士、家族信託コーディネーター、後見人相談士、メンタルヘルスマネジメントⅡ種、福祉関連公的資格等、多数の資格をお持ちです。
テーマは、ご自身も当事者である『“障がいのある子”とその“きょうだい”が笑顔で暮らしていけるよう~知ってほしい『親なきあと』のこと~』。
障がいのある子どもの支援者に向け、子どものことを細かく記録しておくこと、残された人が困らないよう準備をしておくことの重要性をお話しいただきました。この話は終活に通じるところもあり、各グループでは「将来は自身が」、と親として自分ごとに置きかえたり、当事者の思いをくみ取って考えたり、非常に深い議論ができました。
区内外の方も広く参加、どの参加者もフランクに話せる雰囲気で、初参加の自身も溶け込みやすい温かい空間でした。
こうしてつながった人たちを「つながりの樹」としてイメージマップ化し、会場の壁に掲示していたことも印象的でした。