企業×市民活動 コラボのススメ内容
企業に属することで得た経験やスキルを、「企業という垣根を越えて社会に貢献したい」という思いを抱き、異業種、性別、世代を問わず集まったメンバーが、さまざまなアイデアを持ち寄って企画を考案・実施する中央区フィランソロピー懇談会(CFK)。筆頭幹事として活動している石黒修さんにお話を伺いました。
中央区フィランソロピー懇談会
(CFK)
筆頭幹事 石黒 修さん
地域に密着した社会貢献活動を展開するため、各企業等の担当者間で情報交換を行い地域住民との連携・協働を図り、社会貢献活動を区民、市民、企業社員に広めていくことを活動目的としている。
できることに限界のある企業の枠を超えて地域と結びつきたい。
活動を始めたきっかけを教えてください。
20年前、私は機械メーカーの総務部で働いていたのですが、私の会社も一企業として大掛かりな社会貢献活動をしていました。しかし、最初は「組織としてやっていること」と感じてしまい、社会や地域に貢献しているという実感をもつことはなく、他人事のように感じていました。その後、活動を続ける中で、より地域に密着した活動をしたいと考えるようになり、同じ思いをもつ他社の方と一緒に中央区社会福祉協議会へ相談することにしました。そこで、「事務局は協議会がバックアップするので、企業の枠を超えて地域と結びつく活動をしてほしい。」と言っていただいたのです。私も、企業と地域がいきなり繋がって何かをするということは難しいと考えていたので、地区の窓口を担っている社会福祉協議会と一緒に活動を始められたことは、大きな一歩だったと思います。そして、1999年6月21日に中央区フィランソロピー懇談会(CFK)が発足しました。
間接的ではなく、直接働きかけることで活動の幅が広がる。
企業で行う社会貢献活動と、どのような違いがあるのか教えていただけますか?
企業が行う社会貢献活動は、間接的に行われることがほとんどで、できることに制限があります。また、企業としてなにか取り組もう、ということになっても、「寄付」といった金銭的支援の話になってしまいがちです。CFKは、企業や個人に拘らず、やりたいと思って来てくださるみなさんを受け入れることで、様々な人が集まります。そのおかげで、企業としてはなかなか介入、協働しにくいようなNPOや個人、地域、学校と繫がることができ、多様な方々と連携しながら活動の幅を広げることができたのです。「やりたい」と思ったことを即行動に移せることは、CFKのような団体ならではです。
ネガティブな問題を、楽しみながら解決していくことが大事。
具体的にどのような活動をされているのですか?
例えば、NPO邦人まんぼうさんが主催されている「まんぼうショー」にCFKのメンバーも参加させていただいています。まんぼうさんは、障がい者支援施設ですが、このショーは、障がいの有無に関わらず、年齢、立場、国籍を越えて、誰でも気軽に参加できるショーとして公演されています。
まんぼうさんの活動の趣旨は、「ショーを成立させる」ことではなく、「障がいのある方々が楽しみを共有できる場、楽しく自己表現ができる場」をつくることなのだと。障害のある方々が楽しみながら成長していくことが大切なのだと。それは、私たちも一緒に輪の中に入って同じ体験をしないと、なかなか気付くことはできません。だからこそ、なんでも「一緒にやる」ことを重視しています。
また、地域の取組みでは、女性会のみなさんといっしょに、年に1回、2回花を植える作業を一緒に行いその後、「雑談会」をします。この2つの掛け合わせがミソだと思っています。最初に「ぜひ話し合いの場を設けましょう」と企画するのでは、誰もリラックスして話すことができません。しかし、一緒に土いじりをした後で、たわいもないおしゃべりの延長線上にあるような「雑談会」だと、例えば「歩道に放置されたままになっている自転車に困っているんです。」といった地域住民ならではの声がポロッと出てきたりします。集まってもらって、いきなり「なにか困っていることはありませんか?」と尋ねても、なかなか意見は出てこないものです。
住民の方々の思いに共感し、「一緒に課題を解決していきたい」という意識が、我々の活動のベースになると考えています。そして、そのネガティブになりがちな課題を、楽しみながらどのように解決・改善していくかを考えることがまた面白みでもあるのです。
実は、この放置自転車の問題に対し、私達が主体となって何か啓発できないかと考えたのが「カルタ」です。楽しみながら、正しい知識を共有するきっかけになればと、自転車にまつわる体験談などをテーマに自分たちでカルタをつくり、その後、カルタ取りをしてみんなで遊ぶ催しです。困っていると言うだけでなく、その困っていることを前向きに改善する立場に立って、楽しみながら啓発活動する訳です。
多種多様なスキルをもったメンバーの強みを活かした出前講座。
CFKならではの取り組みがありましたら、教えてください。
さまざまなスキル、知識をもったメンバーの強みを活かし、「出前講座」を行っています。例えば、メンバー企業であるポーラさんのご協力のもと、交野の支援学校に出向き、社会へ出る前に化粧の仕方や身だしなみのマナー講座などの授業を行っています。他にも、ホテルの支配人が、さまざまなお客様の対応をしてきた経験を活かし、コミュニケーション能力アップに関するトークを面白おかしくしてくれたこともありました。
また、コーヒーマイスターの資格を持っているメンバーが中心となり、子育て世代のお母さんを対象とした講座も行っています。そこには、講座に参加するお母さんだけではなく、お父さんやお子さんも一緒に来てもらいます。お母さんが講座を受講している間、お父さんとお子さんには、保育士が常駐している保育ルームで遊んでもらいます。「お母さんがいない状況でお父さんとだけ過ごす」という状況が普段少ないお子さんは、最初は「ママー!」と泣いてしまうこともありますが、次第に慣れてきて、講座が終わる1時間後には、リラックスして遊んでいます。そして、最後にお母さんが淹れたコーヒーをお父さんが飲んで、ホッと一息つく、という流れになっています。
このような企画は、普段子育てに奮闘するお母さんの息抜きの時間になるだけでなく、お父さんと子どもが一対一で遊ぶ良い機会になるのではと考えています。
切羽詰った雰囲気からは、良いアイデアはうまれない。ゆるすぎるぐらいがちょうどいい。
楽しい企画を次々と生み出す集まりは、どんな風に行われているのですか?
月に一度、定例会を行っています。毎月第3木曜日15時から17時半までと決めて、人数が集まる、集まらないに関わらず行っています。このような団体活動で、就業後の時間帯でないのは珍しいかも知れませんが、ずっとこの時間でやっています。定例会が17時半に終わった後、そのまま呑み会に移行することも多々あり、仕事が終わってから呑み会だけに参加する人もいれば、逆に小さなお子さんがいる方は定例会だけ参加されたり、また会社に戻って残務をしたりする人もいます。いろんな立場のメンバーがいるからこそ、この時間帯でうまくやれていると思っています。
定例会の様子をご紹介すると、通常20人ぐらい集まるので、まずは口の字型に座り、会が始まります。その後、グループに分かれ、雑談をしてもらいます。短時間ですが、世間話のような軽い話題で良いので、フリートークをして交流を深めます。そして、最後に共通テーマについて話し合い、グループごとに発表してもらいます。このような過程を経ると、最後にはみんなに挨拶ができるくらい交流が深まります。口の字型の会議形態では、どうしても発言する人に偏りが出てしまい、喋る人は喋る、喋らない人は全く喋らない、という空間になりがちですが、グループごとに気楽に交流できるようにすると、たくさんの意見が出ますので、その意見を私たちが整理する流れになります。私たちは、この時間を『真面目な雑談会』、略して“マジ雑”と呼んでいます。“マジ雑”は、本当に面白いです。切羽詰った雰囲気の中から、良い意見は出てきません。このようなやり方は、一企業内ではなかなか難しいですが、地域住民の皆さんやNPOの方々と接してきた経験の中から、私たちに合っていると考えるようになりました。そして、アイデアを出すときは、私たち自身が面白いと感じることが大前提です。そうでないと、継続しませんし、思いが伝わらないです。私たちだけが必死になっても参加した人は面白くないものです。「一緒にやろう」という気持ちが大事です。うまくいかないことがあっても、次回活かそうという前向きな気持ちで活動を続けています。
本当に困っている人たちを救うための居場所づくりを目指す。
今後どのような活動をされたいと考えていらっしゃいますか。
私たちの定例会の場でも、メンバーから「ここに来たら仲間がいる、話ができる、相談ができる、ひとつの居場所になっている」という声を聞きます。「子ども食堂」のように、子どもへの支援に目を向ける団体は多いですが、居場所を求めているのは子どもたちだけではないと、活動をする中で実感しています。また、居場所になるような環境をつくったとしても、決まったメンバーだけが集まる場になってしまい、本当に問題や悩みを抱えている子どもや大人たちがそこに入っていけるのか、という実態もみえます。根深い問題であり、解決するには時間がかかると思いますが、私たちのやり方で、できることから始めたいと思っています。
<活動レポート>
1/19(土)、多彩なCFKの活動のひとつとして、第19回 企業・市民協働セミナー「CFKチャリティーフェスティバル」が実施されました。このイベントは、東日本大震災以降、防災を自分のこととして考え、大阪から元気を届けたいとの思いで開催して来られたものですが、今年は“なにわの少年防災士”坂本紫音さん(関西大学中等部3年)と出水眞輝さん(大阪市立生魂小学校5年)をお迎えしての「防災ボーイズトーク」、大阪市立上町中学校・大阪市立淀商業高校の生徒による詩の朗読(震災公募詩集「明日への記憶」より)の他、大阪市立上町中学校合唱部、NPO法人まんぼう、中央区南老人福祉センター「プルメリア」、大阪オトン・オカンチアリーダーズ、あまゆーずの皆さんによる豪華なパフォーマンスが繰り広げられました。
「大阪北部地震が起きた時間、自分はどこで何をしていたか?」を切り口としたグループワークショップを通じ、防災・減災について改めて自分ごととして考える機会となりました。