企業×市民活動 コラボのススメ内容

異業種コラボレーションにより大学生対象キャリア教育教材を開発。その後、教材提供にとどまらず、教育貢献をしたい多くの中小企業の拠り所となった「ミライ企業プロジェクト」。キーパーソンのおひとりである「株式会社PRリンク」の代表取締役  神崎 英徳さんにお話を伺いました。

 

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株式会社PRリンク

代表取締役 神崎 英徳さん

<株式会社PRリンク事業内容>

・広報の企画・計画の立案、実施サポート

・プレスリリース・社内報などの広報ツール制作
・広報・CSRセミナーの実施、社内教育支援
・メディアへの記事提供

 

子育てしながらの就労を無理なくできるよう6時間就業という制度を導入されています。

また、写真の背景のアートは神崎社長が掲げる「子どもたちが安心して暮らせる社会」をビジュアル化したものだそうです。

 

子どもたちが安心して暮らせる社会の実現をめざす―協働で取り組む社会貢献事業

株式会社PRリンクの事業内容と、代表的な社会貢献事業についてお聞かせください。

 

私たちの企業理念は「子どもたちが安心して暮らせる社会の実現をめざす」ということです。

私自身、子どもを育てる親として「子どもに安心して勧めたい商品をつくっている企業がもっと増えたら住みやすい世の中になる!」という考えがあり、その考えに沿った「本当に世の中に伝えたい企業」への取材を通して商品やサービス、事業活動などの情報をマスメディアに対して提供し、紹介いただくスキームで広報をサポートさせていただく事業を展開しています。

社会貢献事業としては、さまざまな企業や団体が関わるプロジェクトという位置付けで、「ミライ企業プロジェクト」という取組みがあります。

当初は3者協働で2013年にスタートしました。私たちの他に、NPO法人JAE、株式会社シーズクリエイトが連携しました。もともとお互いに顔見知りではあったのですが、プロジェクトとして本格的に進めたきっかけは「大阪を変える100人会議」での協業プロジェクトを生み出す取組みです。

事務局による運営となっており、全国事務局、地域事務局とあり、現在は他にもNPOなどが関わってくださっています。代表はJAE会長の山中さんで、私はブランドマネージャーとキャリア教育教材の編集長を務めています。

この取組みが始まったきっかけは、それぞれが抱いていた課題を解決したり、協働することでミッションを実現できるのでは、と思ったからです。

PRリンクは、大学生が運営する「学生通信社」という団体の運営支援をしていましたが、学生が地域企業やNPOなどへの取材などを通じて社会と関わることで、意識や行動が変わり、成長していくさまを見ていました。「自分も将来は“こんな人になりたい”という目標が活動を通じて見つかった」という学生の生の声を聞いたことがきっかけで、学生たちがリアルな社会とふれあう機会をもっとたくさんつくりたいと、私自身考えるようになりました。

JAEの山中さんは、大学のキャリア教育をもっと充実させたいという目的を持っていました。いざ就職活動のときに初めて企業を知るということでは、遅すぎますしね。もっと早い段階で大企業以外にも素晴らしい中小企業もたくさんある、経営層に近いところでやりがいのある働き方ができる、そうした中小企業ならではの良さがなかなか学生たちに認知されていない、ということへの課題意識も感じていたようです。

シーズクリエイト(当時)の佐々木さんも、いい中小企業はたくさんあるのになかなか認知されていないということへの課題意識と、中小企業の新卒採用が難しい。採用したいのに応募がない…そんな状況に危機感を持っていました。

同じような課題を持ちながら、3者それぞれがバラバラに活動していては非効率ですから、「一緒にプロジェクトとしてやろう」ということで始まりました。それに、それぞれに強みがあります。私たちはメディア、JAEさんは大学ネットワーク、シーズクリエイトさんは中小企業ネットワーク。このそれぞれの強みを掛け合わせると、相乗効果が期待できます。

そうして2015年に、学校の授業で使うキャリア教育教材「ミライ企業図鑑」を発刊しました。魅力的な企業を選定し、取材して記事を掲載したブック教材で、大学や専門学校の講義の中で、実際に学生が手にとって使用するものです。職業観の醸成や、企業研究などに役立ちます。また、取材による生の声で構成した情報ですので、さまざまな業界、職種ごとに、働くことのイメージがしやすく、自分が実現してみたい働き方に気付くきっかけとなっているようで、「働くことへのイメージが変わった」「職業の選択肢が広がった」…など反響が増えました。

 

若者はきっかけさえあればどんどん変わっていく。自分を変えるきっかけがないだけ。

大学生を取り巻く課題や、大学生と接して感じておられることなどについてお聞かせください。

 

働くことに対する漠然とした不安、社会のことがよくわからない…学生が社会に出ることに不安を感じる要因は「知らない」からだと思います。働くことは大変でも楽しいこともある、仕事でのやりがいとは?など、「知る」ことで、不安が解消されることもあると思います。

最新の2019年版は大幅に刷新します。これまでのように経営者ではなく、社員にインタビューすることになりました。社員一人一人をみていくと、目的があって職場を選んだという人もいれば、最初はやりたいことが見つかっていないけれど目の前の仕事を一生懸命やっていくうちにやりがいを感じるようになった人もいます。会社に入ってから自分のやりたいことが見つかることも実際多いですよね。学生の中には自分に向いていること、やりたいことについて、就職活動を始めるまでにガチガチに固めておかないといけないかのような強迫観念を持つ子もいます。そんなに焦らなくても大丈夫だということを2019年版でわかっていただけると思います。社員は経営者と違って、学生たちと年齢が近いということもあり、学生たちの心情に寄り添った話をしてくれるので、より働くことへのイメージがしやすくなると思います。

ゆとり世代など、今時の若者に対する辛口意見もよく聞きますが、若者たちには自分を変えるきっかけがないだけです。

キャリアを考える、働き方を、人生を考える…そんな機会があれば、きっかけがあればどんどん変わっていきます。それが若い人たちの良さです。なかなか良い出会いの場がなく、例えば愚痴ばかり言う大人としか接していないと「働くことは楽しくない」と先入観を持ってしまっても仕方のないことだと思います。

「入社して3年くらい経てば自分はこういう人になれるのか」と思える存在を示してあげることで、意識が変わる学生もいると信じています。

「ミライ企業図鑑」には企業概要も掲載していますので、経営者や社員にゲストスピーカーとして話をしてもらう、といった立体的な取組みもできます。

さまざまな使い方が出来ますので、おかげさまで昨年度は24校の講義に使われ、2,600人の学生に手にとってもらいました。おそらく大学で最も多くの学生たちに使用されているキャリア教育教材だと思います。

 

「若者と共に地域の未来をつくる」―この意志を持った企業に支えられている

「ミライ企業プロジェクト」メンバー企業はどういった基準で選ばれているのですか。

 

「ミライ企業プロジェクト」メンバー企業は独自の指標を持って選定しています。

経済的な急成長や何でも合理的にやっていくことによる規模拡大をめざす企業よりも、例えば働きやすい環境づくりや社員を大切にする社風といった企業の資質を高めていく経営をしている企業を選びます。自分のやりたいことが実現でき、働きがいを持って働くことができ、会社へ行くのが楽しいと思え、企業も家族もみんなが幸せになれるなら、企業規模が小さくても良いのではないかと思います。

一番大事なことは「若者と共に地域の未来をつくることに賛同していただくこと」。この共通認識で「ミライ企業プロジェクト」に入ってくださっています。採用に困っているから―それだけでプロジェクトに入っていただくことはできません。地域の次世代を育てていくのは企業として当然のことだと思って取り組んでくださっています。学校の講義でも自社の宣伝よりも「働くことの尊さや働きがい」について話してくださっています。あくまでも次世代を育てるスタンス―学生のキャリア教育のための支援をいただいている位置づけなのです。

メンバー企業からの反響で最近よく耳にするのが、「自社の社員教育につながった」ということですね。いろいろな企業と同じテーマで学び合ったり、大学に出向いて多くの学生に対して話をすることが社員の成長につながっているようです。

採用には直接つながらなくても、若手社員が今まで出来なかったことに興味を持って一歩を踏み出すきっかけになっている。そこに大きな意味があるという声も実際にお聞きしたことがあります。

 

人が成長し、会社が成長する―そのためのプラットフォームへ

今後のチャレンジ、抱負についてお聞かせください。

 

今後は大学だけでなく、対象年齢を下げて、高校でのキャリア教育教材として普及させていきたいと思っています。それにより進路の選択が変わると思います。本来の大学選びは偏差値や知名度などで選ぶのではなく、「将来こういった仕事をしたいからこんなことが学べる○○大学で勉強したい」となることが理想です。高校で職業を見据え、進路を考える機会があった方がいいと考えています。その教材として使えると思います。

また「ミライ企業プロジェクト」からさまざまな交流が誕生していますので、こうした動きから新たなプロジェクトが生まれるのではないかと期待しています。

例えば「ミライ人材交流」。社会人版インターンです。ミライ企業プロジェクトのメンバー企業の方同士が入れ替わって何日間か働かれるのですが、それによって自分の会社の良さに気付いたり、インターン先の会社の良さを自分の会社へ持ち込む、といった効果が報告されています。

「ミライキーマンサミット」では、それぞれの会社のキーマンの方々に集まっていただき、どのようなプロジェクトを協働でやっていくか等話し合われています。他に社員だけの交流会、学生だけの交流会もあります。学生がイベントを企画することもあります。

学生のネットワークやコミュニティ、企業の経営者ネットワークなどはよくありますが、学生と若手社員との交流や、若手社員と別の企業の経営者との交流など、企業の枠、立場の枠を越えた多様なつながりが生まれています。

経営者も、キーマンも、社員も、学生も。いろいろな人が「こんなプロジェクトをやりたい!」と手を挙げて、それをみんなで実現できるように、新たなコラボレーションが生み出せるよう、事務局としてしっかりサポートしていきたいです。

人が成長し、会社が成長する―そのためのプラットフォームへ。

プロジェクトに関わったメンバー企業の方々にそう実感いただけるように「ミライ企業プロジェクト」は今後も進化と発展を続けていきます。