企業×市民活動 コラボのススメ内容
月1回(第4金曜日)のインターネット生放送番組「このはな放送局」を通して地域の住民に向けた情報発信を続けて3年半。地元企業の株式会社POS建築観察設計研究所代表 大川 輝さんと、このはな放送局のスタッフの皆さんにお話を伺いました。
株式会社POS建築観察設計研究所
代表 大川 輝
このはな放送局スタッフのみなさん
※株式会社POS建築観察設計研究所とは。 「POS」は「POWER OF SITE」の頭文字からとったもので、「場所の力・現場の力」といった意味を持っています。 場所・現場の力を大切に考え、建築空間、都市、街、地域を観察し、まちづくり、建築設計・施工、研究を行い、モノづくり/コトづくりを行うところです。
「このはな」を好きなメンバーが集まり、地元の魅力を発信する「このはな放送局」
「このはな放送局」ではどのような番組を放送されていますか?
月に一回の生放送です。此花を好きなメンバーが集まって、第4金曜日の夜、20:30から1時間にわたり、たっぷりと地元の地域情報やユニークな方々の紹介をしています。メインコーナーは 「見つけたよ、“このはな”の花」で、此花区にゆかりの深い、此花区で人知れずいい活動をしている方を発掘してはゲストとしてお迎えし、活動に関する話をMCとのやりとりを通じてご紹介しています。これまでのゲストはアーティスト、防災リーダー、商店主などジャンルはさまざまです。中学生に来てもらったこともあります。
インターネット番組ですから、若い人にどんどんスポットをあてて楽しい情報を発信してもらい、若い視聴者がもっと地元に興味を持ち、地元を好きになってもらって、情報をICTデバイスに限らず、どんな世代にも届くような口コミなど、さまざまな形で拡散してもらって、このまちが盛り上がっていくきっかけになればいいと思っています。
放送はyoutube(ユーチューブ)やFacebook(フェイスブック)で当日と録画で後からでもご覧いただけます。
ここにゲストをお招きしてのトークを繰り広げる…といったこと以外に、地域のさまざまなイベントに出張し、様子を配信したりもしています。盆踊りでブースをつくって配信したり、地元の子どもが出演する「図工ランド」という子ども向けイベントが実施された時は、子どもにレポーターを務めてもらったこともありました。
イベント中継は非常に盛り上がります。そこで来賓の方にもご挨拶する機会ができ、警察や消防署、行政の方々ともつながりができました。イベント会場で「このはな放送局」の毎月の放送情報の広報を通じて、幅広い方々に聴いていただくきっかけづくりもできました。
企業のバックボーン、スキルを活かした地域貢献。後押ししてくれた人とのつながり
「このはな放送局」を始められたきっかけを教えてください。
私自身、此花区には現在は住んでいないのですが、ここに会社があります。企業区民という立場なので、この地で商売をさせていただいているからには何か貢献したいという思いでこの活動を行っています。
地元企業として、まちづくりに関するコンサルティングで関わらせていただいた背景があります。
地域区分でいうと、ここは梅香地域となりますが、梅香地域活動協議会の総務部長として広報全般を担当させていただいています。地域に入ったきっかけは、青年会組織であるだんじり会の皆さまのおかげです。この地域は盛大な神社の夏祭りが毎年開催され、だんじり会は、50歳〜20歳代の比較的若手の方々が中心になって担い手として活躍され、地域振興を支えておられる組織です。その方たちとの交流を通じて「地域に何か恩返しがしたい」という気持ちが強まっていきました。
地域広報をさせていただくうちに新しい広報の仕方について考えるようになりました。紙媒体の回覧板新聞やWEB新聞をつくっているとさまざま情報が集まってくるので、これらの情報を活かしながら違う形で情報を発信するメディアミックスを実現したかった。地元の土地会社が2008年頃から此花区を盛り上げようという活動を始めていて、アーティストと接点を持ったり、ゆるいつながりづくりをされていたのですが、私自身の仕事も不動産物件をリノベーションしてオルタナティブな場所をつくる活動を行っていましたので、「此花区内の面白情報をこれまでとは違ったやり方で発信して魅力を伝えよう!」と1年くらい作戦を練って3年半前の2016年10月に放送を開始したのです。
以来、途切れることなくずっと放送を続けてきました。この春には番組の内容をリニューアルする予定です。
「このはな放送局」をきっかけに新たな流入、コミュニティができていくのを見てきた
続けてこられてどんな手ごたえを感じていらっしゃいますか?
金曜日の夜はゴールデンタイムですから、この放送を見てもらうにはハードルが高いことはわかっています。しかし休まずにずっと続けてきたことで、少しずつファンが増え、少しずつではありますが認知が広がってきているのを感じています。地味でも続けることに意味があると思うのです。
梅香地域は地域特性上、どうしてもUSJに行く通過点という心象を持たれてしまいますが、面白い人が集まってきています。そんな人たちを通じて地域の魅力を紹介したいというのが当初からの変わらない思いです。だからゲスト出演者がキー。いろいろな方々に出演していただけるよう、常に情報アンテナを張っています。
梅香と四貫島のシェアハウスやシェアアトリエに地域外から住み始めた若い方もいます。その人たちのつながりでさらに関わりができていく、家族が増えていく、コミュニティが育ってゆるいつながりが徐々に広がっていると感じています。
ビュー数の伸びよりも地域の人の顔が見えてきていると実感できることが嬉しいですね。地域のいろいろな人とつながりができたことが何よりの宝です。
多様な番組づくり、チャンネル数増加―もっといろんな方々に放送を見てもらいたい
課題と今後のチャレンジについてお聞かせください。
現在は無償ボランティアでやっていますが、さらなる充実を考えると収益事業化とできればいいと考えています。資金の調達にはいろいろなやり方があると思うのですが、例えば地域活動協議会の「新規事業」とした場合、予算は付いても、この地域以外のことを取り上げにくくなりますし、行政の公認をもらうということは、例えば競馬の話はできない、など放送内容に限界が出てきます。視聴者にとって楽しいものを、という基準でやっていくなら、ある程度自由度は必要だと考えていますので、そうなると行政の助成事とするのは困難だと感じています。番組づくりは、取材、編集、配信と最低3日はかかるので、仕事とかけもちしながらのボランティアではいつか出来なくなってしまうのではないか。せっかくここまで続けてきたのでそれは回避したいです。スポンサードやクラウドファンディングなど、どういう形の収益化がいいか、いろいろ模索しています。
これまで振興町会の方々がいい意味で放任し、温かく見守ってくださっていたからこそ続けられたのだと感じています。新しいことを受け入れてくれた寛大さに感謝しています。だからこそ、番組も進化させないと、と思っています。地域の情報を基本としながら枠を超えてもよいのかな、と検討しているところです。今よりももっともっと多くの様々な人に見てもらいたいですから、例えば中学生you tuberによる学校の友だちに向けた悩み相談のコーナーなど、子どもが発信する番組をつくるとか、主婦向けの番組、アーティスト情報の番組など、「このはなチャンネル」として地域外の人にも響くコアな面白情報を盛り込んで、此花の魅力を伝えて興味を持ってもらいたいですね。
収益事業とすることで、もっといろんな方々に放送を見てもらえるよう多様な番組づくりやチャンネル数を増やすことにつながると思いますので、さまざまな方々に「このはな放送局」を知ってもらいたい。そしてこれからも進化を続けていきたいです。
<写真右上>
取材日は、来る4月21日に服部緑地野外音楽堂にて開催される音楽フェスの紹介で、「学生団体UMF」のメンバーで地元在住の若者がゲストに来てくださっていました。(写真右)「政を祭りに」をキャッチコピーに、統一地方選挙に向けて若者の投票率向上をめざし、投票をしたら音楽フェスを無料で楽しめるという取組みが行われるとのこと。
「このはな放送局」のある建物。元はたばこ屋だった物件をレトロな風合いそのままに、居心地良いスペースとしてリノベーションされています。「このはな放送局」は2階にあり、1階は交流スペース。この日はここでだんじり会の皆様にもお会い出来ました。