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全国で約60万人と言われる「ニート」と呼ばれる若者たち。
世間一般には「働く意志のない怠け者」と思われがちだが、実は彼らの8割近くは就業経験があり、働きたいという強い意志を持つ人も多いという。
NPO法人スマイルスタイルは、そんな働く意志を持ち行動を起こしている若者を「レイブル(lateレイト bloomerブルーマー=遅咲き・大器晩成の意)」と呼び、大阪府や企業共同型で職場体験を通じて就労させる「大阪レイブル超就活」を展開。
この経験をもとに、2013年には職業安定所の民間版とも言えるスタイリッシュな就労支援施設「ハローライフ」を開設して、若者が働くことに希望を持ち、前向きになれる新しい就労支援に取り組んでいる。
代表を務める塩山諒さんは、自身も不登校・ひきこもり経験者。
小学校3年の時、担任の理不尽な体罰に拒否反応を起こすようになり、学校に通えなくなった。
以降、小学校はほとんど行かず、中学校も1日も登校しなかったが、
そんな日々の中で救いとなったのは、不登校の支援ボランティアである「ハートフルフレンド」と呼ばれる近所のお兄さんたちだった。
「お兄さんたちは、町の消防士だったり、吉本興業の若手芸人だったりさまざまでしたが、
心の貯金箱が一杯で溢れ出している感じで、自分も将来は彼らのように子どもたちに良い影響を与えられる人になりたいと思いました」
塩山さんは、子供の頃からずっとモヤモヤした想いを抱えていたという。
もっとこうすれば世の中は良くなるはずなのにと思っても、結局は何も変わらない、あきらめたような社会の閉塞感を肌で感じてきた。
十代後半からは、全国のフリースクールや養護施設などさまざまな支援現場を見て回り、社会の仕組みを知るために政治家のカバン持ちもした。
そんな中で気づいたのは、社会を変えるには企画書が必要ということ。
例えば、ひきこもりの子どもがいる親が政治家に涙を流して訴えても現状は変わらなかったが、
大手代理店などが具体的に企画書で支援策を提案して、こうすれば社会にこれだけの利益があると示して初めて行政も企業も動くといったシーンを目の当たりにしてきた。
「要は、やり方なんだ」と思えたことが、NPO法人の設立につながった。
団体の設立は、2007年。
さまざまな社会的課題を解決するソーシャルデザインカンパニーとして活動を始めたが、
当初はキャリアも実績も資金もない中で、ニート支援や社会を変えたいと言ってもなかなか理解されなかった。
そのため、仲間2人と毎日100円コーヒーで朝から晩まで企画書づくりに励み、片っ端からビジネスコンペに参加。
また、身近なところから活動を広げて行こうと、若者が楽しみながら社会貢献できる「オールナイトごみひろい」を始め、
これが口コミで話題となり、多い時には200人の若者を動員するコミュニティとなった。
そうしたチャレンジを続けるうちに、アイデアを言語化する能力も鍛えられ、次第に企画書は洗練されたものになり、
ひとりの夢をみんなの夢にする地域活性コンテンツの「ユメコラボ」や小学生が問題解決の楽しさを学ぶ「まちときどきカエル」など、
市民・企業・行政協働型のソーシャルプロジェクトを次々に手がけた。
2011年には大阪府より委託を受け、3年にわたり若者の就労支援事業を実施。
初年度は、ニートの中でも働く意志を持ち、行動を起こしている若者を「レイブル」と提唱するとともに、
ニート・ひきこもり状態の若者100人が集結して理想の働き方や必要な就労支援策を検討する前代未聞の「ニート(レイブル)100人会議」などを開催。
当事者たちの声を反映する形で、翌年からは千房など10社の企業協力のもと、
職場体験を通じてエスカレーター就職をねらうインターンシッププログラム「大阪レイブル超就活」を展開して、多くのレイブルが新たに職を得た。
そして、この「超就活」の経験と実践をもとに、2013年5月にはレイブルをはじめ働きにくさを抱える若者が気軽に立ち寄れる就労支援施設「ハローライフ」を開設して、
誰もが仕事への希望を持ちながら新しい働き方や就労モデルを見つけていける「場」を提供している。
スマスタの中核的事業とも言える「ハローライフ」は、“日本茶のスターバックス”をイメージした1階のオシャレなブックカフェ(CHASHITSU for worker)を中心に、
2階には求職者向けのワークインフォメーション、3階にはイベントスペースを配置。
希望すればキャリアカウンセラーによる仕事の個別相談を受けることができ、また「仕事」や「働く」をテーマにしたユニークなイベントやスキルアップ講座も多数開催している。
現在、ハローライフの協力企業は100社以上に上り、求人登録者数は約500人。
これまでにインターン中心の人材紹介で約60人、求人広告による応募で約100人が仕事を得たという。
また、働きにくさを抱える若者の中には、貧困や発達障害、長期のニート・ひきこもり経験などの問題を抱えるなどの理由で、
企業への一般就労の前に働く自信をつけたいと考える者も少なくないことから、そうした若者に働く場を提供して自立を助ける中間的就労の取り組みも実施。
ブックカフェで提供するオリジナルの和菓子やお茶を製造する「CHASHITSU factory」を2014年に開設して、ここで約10人の正社員雇用を行い、
働きながら一般就労に必要なスキルや社会人基礎力を身につけてもらっている。
こうした中で、塩山さんは「たとえ年収が低くても、生きる喜びが感じられる働き方のモデルケースづくりにも力を入れていきたい」と話す。
このほか、スマスタでは東日本大震災で被災した宮城県石巻市において、地元の高校生が自分たちでゼロからカフェづくりを行うプロジェクト「高校生がつくる いしのまきカフェ「」(かぎかっこ)」も展開。
将来的には、高校生が町を元気にしながら生き抜く力を身につけていく次世代の教育モデルとして全国に発信して、「5年以内にはスマスタが考える理想の学校をつくりたい」という。
■団体概要 NPO法人スマイルスタイル
ニートなど働きにくさを抱える若者が、仕事への希望を持ちながら自分の働き方を探していける就労支援施設「ハローライフ」を運営。民間だからこそできる斬新な発想で若者の就労サポートを行うと同時に、「オールナイトごみひろい」や「高校生がつくる いしのまきカフェ「」(かぎかっこ)」などさまざまな社会課題解決に向けたソーシャルデザインを手がける。