社会課題と市民活動内容
認認介護って聞いたことがありますか?65歳以上の夫婦や親子、兄弟など高齢者のみの家庭のどちらか一方が介護を行う老老介護についてはよく聞くと思います。老老介護の中でも、介護する側もされる側も認知症を患っているケースがあり、これを認認介護と呼んで、より深刻な社会問題となってきています。
厚生労働省の平成30年 国民生活基礎調査(※1)によれば、65歳以上の高齢者のいる世帯が約2,492万世帯で5年前に比べて約250万世帯も増えており、また、高齢者のみの世帯も56.3%を占めています。このことから、老老介護や認認介護の世帯は今後も増加していくことが予想でき、問題はますます深刻化していくと考えられます。
老老介護と認認介護の増加の原因は?
原因のひとつに、平均寿命に比べて健康寿命(介護や介助を必要とせずに元気で暮らせる期間)が短いということがあります。高齢者社会白書(※2)によれば平成28年時点で男性は平均寿命が80.98歳に対して健康寿命は72.14歳と8年の開きがあり、女性の場合は平均寿命87.14歳に対して健康寿命は74.79歳と13年近くも開きがあります。この期間が介護や介助を必要とする期間で、長いほど介護や介助を必要とする人数が多くなると考えられます。また、核家族化や公的な介護施設の不足、民間の施設へ入る為の金銭的な問題も要因となっています。特に、認認介護の場合は、夫婦のみの世帯が高齢者のいる世帯の3割(※1)もあり、年齢差が比較的に小さいことから、夫婦によるものが多いと考えられます。
老老介護と認認介護の問題点は?
老老介護と認認介護の共通の問題点は、介護する側が高齢の為に体力や精神的な負担が大きく、共倒れになりやすいことです。また、体力がなく動作も遅くなるために介護にかかる時間も増え、趣味や外出の時間が大きく減ります。このことで、社会との接点も少なくなり、ストレスが溜まりやすくうつ病のリスクも高まります。
さらに、認認介護の場合は両方が認知症を患っているので、判断力・認識力の低下によりどちらも「行動を忘れたり、覚えていない」ということがあるので問題も深刻です。例えば、服薬や食事の支度を忘れたり、買い物がうまくできなかったり、お金の管理や火の不始末、緊急事態への対応もできないなどの問題があります。また、介護者が認知症の場合は、力ずくで要介護者に接する事も多いので、事故や事件につながるケースもあります。
老老介護や認認介護の問題は私たち一人一人の問題です。
老老介護や認認介護は私たち一人一人が真剣に考え、取組まなければならない問題です。特に地域全体での積極的な取組や行政との連携が必要です。
認知症による徘徊を見守る取組や介護で孤立しないように声掛け運動を行っている団体のほか、寝たきりや認知症を減らすために、健康寿命を保つための体操や交流会を行っている団体もあります。また、地方自治体によっては、ボランティアを募って、高齢者のお宅への訪問活動や見守り運動を行っています。
高齢のご家族と離れて暮らしている方は、ご家族とのコミュニケーションを密にとることはもちろんですが、ご家族の住む地区の行政のサービスや団体を調べて、早めの対策をとりましょう。また、ご自身も将来の事を考えて健康寿命を保てるよう積極的に活動しましょう。
※1 出典:平成30年 国民生活基礎調査の概況 (厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa18/dl/02.pdf
※2 出典:令和元年度高齢者社会白書(概要版)内閣府
図1-2-2 健康寿命と平均寿命の推移
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2019/gaiyou/pdf/1s2s.pdf