社会課題と市民活動内容
高齢者を中心に”買い物難民” 、または“買い物弱者”と呼ばれる人々が増えています。地域の過疎化や大型スーパーの進出などにより、身近な小売店の廃業や商店街が衰退し、食料品の購入や飲食などに不便や困難を感じる方々の事で、農林水産省では、これらの人の数を「食料品アクセス困難人口」と呼び、この問題を「食料品アクセス(買い物難民・買い物弱者)」問題(※1)として、重要な社会課題であると位置付けています。また、世界的にも「フードデザート(食の砂漠)問題」 と呼ばれ、健康に係わる問題として日本のみならずイギリスやアメリカでも大きな社会課題となっています。
現在、買い物難民問題は農村や山間部などの過疎地だけでなく、都市部でも大きな広がりをみせてきています。
買い物難民は全国で約824.6万人、近年は都心部での増加が著しい
買い物難民の数(食料品アクセス困難人口)は、農林水産省の定義では「店舗(※2)まで500m以上かつ自動車利用困難な65歳以上高齢者」となっており、2015年の調査では約824.6万人(※3)にも上っています。これは、65歳以上の全人口の24.6%にもなります。また、10年前の2005年調査時との比較では全国で21.6%も増加しており、三大都市圏に限れば44.1%に上ります。その一方、地方では7.4%の増加に留まっています。
特に都心部での増加が目立っており、これは人口集中地区での高齢化が大きな要因と考えられています。その反面、地方での増加率が低いのは、高齢者の自動車の利用が高まった為と考えられています。(※3)
買い物難民の問題には、高齢化問題が隠れています
買い物難民はなぜ増え続けているのでしょうか?都市部では、古くからある団地やマンションなどの住人が高齢化することで、運動能力が低下し、日常の買い物が困難になっています。また、大型店の進出により住居の近くの商店や商店街が衰退、閉店することで、買い物にはより遠くまで足を運ばなければならなくなり、さらに困難となっています。
一方、地方でも郊外型の大型スーパーなどの進出によって、身近な商店の閉店が増えています。特に、郊外への移動手段を持たない高齢者の方は買い物が困難となっています。 また、利用者の減少により、公共交通が減便されたり廃止されることで、買い物難民化はより拍車がかかっています。
買い物難民解消の為の取組みが始まっています
高齢者の買い物難民の方は、食料品などを十分に確保できないことから、野菜や果物、魚、肉類などの栄養価の高い生鮮食品の摂取が少なく、保存のきく加工食品に食も偏りがちになるため、健康上の問題も起こりやすいとされています。
それらを解消するためにも、買い物難民を減らす取組みが、地方自治体や様々な団体、地域のコミュニティーで取り組まれています 。特に地域密着型の取組みが成功に結びついています。
たとえば、
- 車による移動販売
スーパーと個人事業者の協働による移動販売を行っている地区があります。提携スーパーの商品の一部を、必要分だけ個人事業者の車に積み代えることで、自ら仕入れや在庫を持つ必要がなく、採算性を上げています。また、移動困難な高齢者の住居の近くを回ることで、高齢者の見守りにも役立っています。
- 宅配・買い物サービス
お客様待ちのタクシーを使ったスーパーの宅配や、ご近所の方や新聞販売店などに買い物が依頼できるシステムを構築した所もあります。また、コンビニの物流網を使って、高齢者の方に食事の配食や食材の宅配サービスなどを行っているところもあります。
- 移動手段の提供など
地方自治体が独自のバスを運行する所や、 民間との協働によりスクールバスや自動車教習所の送迎バスなどの相乗りで、高齢者の移動手段を確保する取組みを行っているところもあります。
買い物難民の問題は地域の社会課題として、地方自治体や民間企業、ボランティア団体が協働で取り組んでいかなければならない問題です。買い物難民がさらに増える前に 、ぜひ、上記以外にも、農林水産省のホームページに様々な取組み事例(※4)が載っていますので、参考にしてみてください 。
※1 出展:農林水産省
食料品アクセス(買い物難民・買い物弱者等)問題ポータルサイト
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/eat/syoku_akusesu.html
※2 農林水産省の定義では、店舗には生鮮食品販売店舗(食肉、鮮魚、果実・野菜小売業、百貨店、総合スーパー、食料品スーパー、コンビニエンスストア)が含まれます。
※3出典:農林水産政策研究所
新たな食料品アクセスマップからみた食料品アクセス困難人口の動向
-平成27年国勢調査に基づく推計結果
http://www.maff.go.jp/primaff/koho/seminar/2018/attach/pdf/180704_01.pdf
※4出典:農林水産省
地域に応じた各地での買い物支援の取組