社会課題と市民活動内容
SDGs1 貧困をなくそうSDGs12 つくる責任 つかう責任
コンビニの恵方巻やクリスマスケーキ、土用の丑などで発生する多量の食品廃棄が問題視されているなかで、「食品廃棄物」と「食品ロス」、よく耳にする言葉ですが、意外とその意味と区別が知られていません。これらは、農林水産省などによって次のように説明(※1)されています。
「食品廃棄物」とは
食品リサイクル法によれば「食品廃棄物等」とは、
・食品が食用に供された後に、または食用に供されずに廃棄されたもの
・食品の製造、加工または調理の過程において副次的に得られた物品のうち食用に供することができないもの
と定義されており、食品に由来する廃棄物全般を指します。例えば、果物の皮や魚の骨といった通常は食用にならないものを含んでいます。「食品ロス」もこの中に含まれています。
「食品ロス」とは
「食品廃棄物」の中で、本来食べられるにも関わらず廃棄される食品のことを指します。また、事業活動に伴って発生する「事業系食品ロス」と各家庭から発生する「家庭系食品ロス」の2つに分けられています。
食品ロス大国の日本、2017年にWFPが支援した食料の約1.7倍も廃棄
今、世界では約8億人が飢餓に苦しんでいます。一方、全世界で生産された食品の3分の1に当たる約13億トンが廃棄されています。
日本でも年間約2,759万トンも食品を廃棄しており、そのうちまだ食べられるのに捨てられる食品ロスが643万トン(事業系食品ロス352万トン・家庭系食品ロスが291万トン)もあり、食品ロス大国の一つとして数えられています。この日本の食品の廃棄量は、国連世界食糧計画(WFP)が2017年に実施した食料支援量の約1.7倍にあたります。また、日本の食料自給率(カロリーベース)は約37%しかなく、その他の先進国、アメリカ約130%、フランス約127%、ドイツ約95%、イギリス約63%と比べると最低の水準であり、食料の多くを輸入に頼っていることからも、食品ロスを減らす取組みが求められています。(数値は※2消費者庁「食品ロス削減関係参考資料」参照)
食品ロスは環境問題などにも深く絡んでいます
食品ロスには環境破壊、資源の枯渇など様々な問題が絡んでいます。例えば、農林水産省によれば、食料の生産や輸送に多大なエネルギーを消費するばかりか、水分の多い食品は廃棄の際の運搬や焼却に使われる燃料などによるCO2などが余分に発生するとされています。また、過剰な食品ロスは、市町村のごみの処理費用を増大させる一因にもなっています。
食品ロスを減らすために公共団体や市民活動団体、
民間企業で様々な取組みが行われています
地方公共団体や民間企業、市民活動団体では、食品ロスを減らす為に様々な取組みが行われています。
・スーパーでの取組み
加工食品などの食品ロスを増やす要因となっている商習慣に「3分の1ルール」と呼ばれるものがあります。食品の製造から賞味期限までの期間を納品、販売、消費に3分の1ずつ割り当て、賞味期限内でもあっても納品、販売のそれぞれの割り当て期間を過ぎたら、その食品は返品または廃棄されます。例えば賞味期限が6か月ならそれぞれの期間が2か月となり、納品に2か月以上かかると、賞味期限が4か月近く残っていても、返品処理されます。この3分の1ルールに明確な根拠がないことから、見直すと同時に、各社で様々な取組みが行われています。
例えば、ある大手スーパーでは具体的な食品廃棄物の削減目標を掲げるとともに、啓発活動として、こども達から家庭でできる食品ロス削減のアイデアを募ったりしています。また、家庭で余った食品を持ち寄り、それを必要とする所に配るフードドライブの実施にも力をいれています。
・市町村での取組み
ある市では、飲食店の食べ残しを減らすための「料理の持ち帰り」や「希望に応じた料理量の調整」などの取組項目をつくり、市内の飲食店から協力店を募っています。
・官庁と企業の協働での取組み
農林水産省や環境省などの省庁や大手民間企業が協働して、冷蔵庫内で残りやすい食材を使った調理方法をクッキングバトル形式で楽しく学べるイベントを行っています。
ここに掲載した実際の取組み事例は、消費者庁のホームページ「食品ロス削減の取組事例を見る」(※3)で確認できます。
・市民活動団体での取組み
市民活動団体の取組みで多いのは、一般家庭への啓発活動とフードバンクです。例えば、啓発活動としてはスーパーの店先などを使って食品ロスが学べるイベントや食材を残さず使えるレシピを配るなどの活動を行っています。また、フードバンクでは地元の食品企業などから過剰在庫やラベルミスで流通できない食品を寄贈してもらい、こども食堂や福祉施設などに配ることで福祉活動にも貢献しています。その他にも新たな取組みとして、家庭や事業所の野菜類廃棄物を集め、たい肥へと加工し農業に利用している団体もあります。
・大阪市での取組み
大阪市では食品ロスを減らすために、食材の「使いきり」、料理の「食べきり」、ごみに出すときの「水きり」の3つの「きり」を実践する『生ごみ”3きり”運動』(※4)や民間の団体と協働で余った食品を集め必要なところへ配る『フードドライブ』(※5)、環境に配慮した調理を行う『エコクッキング』(※6)などを推進しています。
世界中の飢餓で苦しむ人たちのためにも、環境のためにも、まずは私たちが、身近な家庭での食品ロスの削減に取り組んでいくことが重要です。
- ※1 出典:農林水産省 「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)」
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syokuhin/s_hourei/attach/pdf/index-14.pdf
「食品ロスとは」
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/161227_4.html
※2 出典: 消費者庁「食品ロス削減関係参考資料」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/efforts/
※3 出典:消費者庁 「食品ロス削減の取組事例を見る」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/case/
※4 出典:大阪市 『「生ごみ3きり運動」にご協力をお願いします!』
https://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/page/0000334545.html
※5 出典:大阪市 『フードドライブ連携実施にかかる協定を締結しました』
https://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/page/0000471671.html
※6 出典:大阪市『エコクッキングの実践~「もったいない」をエコ活動につなげよう~』
https://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/page/0000463491.html