社会課題と市民活動内容
1回目の緊急事態宣言が発令された昨年4月7日の閣議決定において、「新型コロナウイルス感染症が急激に拡大している状況の中で、院内感染を含む感染防止のため、“非常時の対応”として、オンライン・電話による診察、オンライン・電話による服薬指導が、希望する患者によって活用されるよう直ちに制度を見直し、できる限り早期に実施する」とされました。(※1)
オンライン・電話による診察・服薬指導についてはコロナ感染拡大以前から厚生労働省においても検討されていましたが、正確性・安全性などリスクを考え、現場と調整しながら慎重に進めてきた背景があります。しかしコロナ感染拡大に伴い、患者と医療従事者の安全を守るため、従来は認めていなかった初診患者のオンライン・電話による診察を特例的に認め、遠隔診療を実施する全国の医療機関リストをホームページで公開しています。
今は「時限的・特例的扱い」としていますが、リスクが回避できるさらなる技術開発が進めば、経過観察程度であれば「通院はオンラインが当たり前」という世の中になるかもしれません。
総務省がまとめた資料(※2)によれば、2019年のインターネット利用率は、13~69歳で9割を超えています。(図表5-2-1-5 属性別インターネット利用率(年齢階層別))
しかし70歳を越えると利用率は下がり、70~79歳で7割強、80歳以上で6割弱となっています。
現時点において、コロナ重症化リスクがあるのは高齢者と基礎疾患のある方とされていますので、70歳以上の方々のインターネット利用率をさらに上げていくことが必要になるでしょう。またオンライン診療を受けるには専用のアプリを操作することが必要ですから、パソコン、スマホ、タブレットなどの基本操作から、さまざまなアプリを使いこなす知識や能力を身に付ける必要があります。
具体的な目的・用途については、「メールの送受信」、「情報検索」が各年齢階層で高くなっている一方、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)利用など、一歩進んだ使い方については、2018年に比べると2019年は増えてはいるものの、各年齢階層の差が大きく、高齢者の利用についてはまだ余地がありそうです。(図表5-2-1-8 年齢階層別インターネット利用の目的・用途)
例えば、オンライン帰省、オンライン飲み会など、Withコロナにおける新しいコミュニケーション手段としてのビデオ通話のシニアの利用状況やニーズはどうでしょう。
内閣府がまとめた資料(※3)によれば、使用頻度にばらつきはあるものの、シニアの約5割がビデオ通話を利用したことがあると回答しており、「関心はあるが、パソコン、スマホ等の使い方がわからず利用しない」と回答した人のうち、6割以上が「今後は利用してみたい」と回答しています。
ビデオ通話利用を始めとした、シニアの「オンラインでつながりたい」というニーズは統計的に見て高いと言えそうです。
ニーズが高いわけですから、地域活動の一環でできることがありそうですね。例えば、
●世代交流の一環で、若手と高齢者がスマホお困り解決という目的でつながる
●高齢者見守りグループラインでコロナ禍でも欠かさない見守り活動
これらは居場所づくりをされている団体が実際にされていることです。
シニアのICT活用を切り口に地域でできること、他の地域の団体と協力してできそうなことがあるのではないでしょうか?
【参考】
※1 厚生労働省(新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえたオンライン診療について Ⅱ事務連絡 新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/rinsyo/index_00014.html
※2 総務省(令和2年度版 情報通信白書 インターネットの利用状況 第2部 基本データと政策動向 第2節 ICTサービスの利用動向 (2)インターネットの利用状況)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/html/nd252120.html ※2
※3 内閣府(新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査 2021年6月21日調査結果30ページ 3(シニア)ビデオ通話の利用)