社会課題と市民活動内容
市民活動の活性化と社会課題の解決に向けて、大阪市が進める市民活動の支援では「連携協働」がキーワードとなっています。
しかし、ひとことで活動主体の「連携協働」を進めるといっても、その連携協働の主役であり、担い手となるのは、市民活動団体や企業、学校、地域振興団体などさまざまな「活動主体」であり、この活動主体は多岐にわたっているため、例えば町内会・自治会などを中心に地域諸団体が連携する地域活動に重点を置かれる団体と、高齢者、障がい者、子ども、人権、多文化共生など活動テーマに重点を置かれる団体とでは、「連携協働」という言葉に対して、受け止め方もやり方も異なるのではないでしょうか。
「社会課題を解決するために連携協働が大切!」と言っても、腑に落ちる団体とそうでない団体とが混在し、十分な説明がないまま「連携協働」という言葉だけがひとり歩きすると、取り残された感覚を抱く団体が出てきても不思議ではないと思います。
そこで、市民活動における連携協働とは具体的にどのようなことをめざしているのか?立場の異なる事業推進者3人に「社会課題を解決する連携協働」についてどう考えておられるかについて、インタビューを行いました。事業推進者が思う連携協働について、ここで詳しくご紹介することで連携協働にもさまざまな捉え方があることの理解につながれば、と考えます。
大阪市では、多様な主体の協働を意味する「マルチパートナーシップ」の推進を掲げてさまざまな取組を行ってまいりましたが、今は市民のニーズが多様化し、社会の課題も複雑化して、社会課題の解決に行政だけで対応できる時代ではありません。そんな中にあって、本市主催の事業を通じて、市民や企業など様々な主体が協力(連携)し、行政も加わる(協働)ことで、課題の解決につながることを期待しています。
コロナ禍で集まる機会がなかなかない中、自分たちだけの力では乗り越えられない壁にぶつかったときに頼れるような、ゆるやかなつながりが生まれる場づくりは大切ではないでしょうか。
ゆるやかなつながりがあれば、必要な時に相談したり、情報交換したりできる。そんなネットワークづくりの場を提供できればと思っています。
そうした取組の1つとして令和3年度に実施するのが、活動分野を同じくしながらもキャリアが異なる市民団体が集うステップアップ交流会です。一回目の交流会はすごくいい雰囲気でした。しかし、この交流が一回限りで終わるのではなく、継続的なつながりとして定着するように、引き続きフォローアップしていくことが大切です。さらに、この取組が人と人とを網の目のようにつないでいくプラットフォームの役割を担えれば、大阪市がめざすマルチパートナーシップの実現に一歩近づけるのではないかと考えています。
大阪市が掲げるビジョンの実現をめざし、マーケティングコンサルティングに取り組む企業としてのスキルと経験を活かしてさまざまな企画を考え、推進しています。
私たちが望む連携協働のかたちは、異なるキャリア、異なるノウハウを持つ団体が力を結集することにより、相乗効果を生み出すこと。そうした成功体験を積んでいただき、人的ネットワークを広げ、ステップアップやキャリア選択肢の可能性をより広げていただけるよう、サポートしたいです。
そこで大阪市域のさまざまな活動主体が、つながることによる底力を発揮いただけるようにと願いを込め、「ソコチカラプロジェクト」と名付けて、活動の悩みや課題に直面した市民団体が、経験豊かな団体につながる場としてのステップアップ交流会と、別々のテーマに取り組む組織が強みを持ち寄って、より大きなテーマに挑むなど、さまざまな連携協働モデルができることをめざしたコラボ実現プロジェクトを用意しました。
昨年から続くコロナ禍の影響で、多くの活動主体は活動の場が減少し、悩んでおられる団体は少なくありません。そのピンチをチャンスに変えられるように、顔が見える人と人のつながりから可能性を広げる場づくりをしてまいります。
市民活動に取り組む団体がこまりごとに直面する際、相談できる存在が必要です。
しかし簡単に発することができないからこそ、「SOS」なのです。
本当にこまっているときほど、誰にも言えません。活動を始めて間もない時期には、目先の課題に精いっぱいで周囲を見回す余裕はありません。経験を積み重ねると、視野を広げる場が大事と気づきます。
目標の達成が数字で示されるような成果でなく、地味なプロセスが大切です。
「ここに来てよかった」、「新しい人に出会って、よかった」。そんな出会いの場を大切にしたい。組織と組織がゆるやかにつながる場は、ありそうでありません。悩みもみな違う。誰かに聞いてもらうことが解決になることもあります。自分の気持ちを相手に話したり、紙に書いたりして、自分のストレートな気持ちに気づく。それが、次の一歩を踏み出すきっかけになります。
悩みをぐずぐず言えることも大切です。私は、人の話をちゃんと聴くことを心掛けています。
市民セクターの役割は、ひとりひとりの声をちゃんと聴いて受け止めることです。みんなの力を結集することで、みんながハッピーになる展開を願います。
コロナ禍で我慢を強いられている状況を打破するきっかけになれば、なおいいなと考えます。
取材を担当して
「連携協働」。同じ表現であっても3人がどこに力点を置いて、対象に何を発信されようとしているのか。その捉え方は微妙に異なると受け止めました。
●自分たちだけでは解決できないことがある時に頼れるゆるやかなつながり
●異なるキャリア、ノウハウを持つ団体が力を結集することによる相乗効果
●悩みを言い合える、相談し合えるといった地味なプロセスの積み重ね
異なる視点があるから、協力できる点で連携し、ちがいはちがいとして互いの存在を認め合う。そこにこそ、連携協働の意味があり、源泉から水がほとばしるかのように、一人でなく、束になって発信する力が生まれるのだろうと考えました。
そして共通することとして、「異なる団体がゆるやかにつながる場づくりの必要性」が浮かび上がりました。異なるキャリアを持つ団体同士のゆるいつながりづくりの場として「ステップアップ交流会」を企画しました。次の記事ではステップアップ交流会の様子をレポ。ぜひご覧ください。
聞き手・記事構成:中尾卓司