2022(令和4)年5月、阿倍野区役所において、「地域の居住支援連携の促進に向けた情報交換会」（主催：大阪市都市整備局）が開催されました。日ごろから大阪市内で居住支援の活動に取り組む居住支援法人、大阪市の関連部局の担当者など約90人が参加し、相談事例や取り組みの現状について情報交換が行われました。

高齢者や子育て世帯等の住宅確保を支える制度

　「長年住んでいる家が老朽化のため取り壊しが予定されており、退去が求められている」「夫が亡くなって収入が減り、家賃が払えなくなった」「離婚して子どもと新しい生活を始めようとしているが、住む家が見つからない」「車椅子でも安全に暮らせる部屋に引っ越したい」

　さまざまな事情を抱えた高齢者や障がい者、子育て世帯､外国人等住まいの確保が難しい人（住宅確保要配慮者）が増えています（注１）。一方、民間賃貸住宅の空家・空き室は増えており、その活用が課題になっています。このような背景から、2017（平成29）年10月の住宅セーフティネット法改正によりスタートしたのが新たな住宅セーフティネット制度(注２)です。

住宅セーフティネット制度の説明（出典：国土交通省ホームぺージ）

　住宅セーフティネット制度は、主に

①高齢者や障がい者などの住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅を登録し、情報提供する登録制度。

②登録住宅のバリアフリー化や耐震改修工事などの補助や、家賃低廉化などの経済的支援。

③居住支援法人による住宅確保要配慮者への居住支援。

の３つの柱から成り立っています。

　この住宅セーフティネット制度に基づき、大阪市もセーフティネット住宅の登録や住まい探しをする住宅確保要配慮者への居住支援を進めています。登録住宅や居住支援法人等の情報は、セーフティネット住宅情報提供システムやOsakaあんしん住まい推進osakaあんしん住まい協議会のサイト等で検索することができます。

住まい探しから終活まで支援する居住支援法人

　住まい探しを支援する居住支援法人も増えてきました。ＮＰＯ法人や社会福祉法人、不動産会社などが指定を受けており大阪市内を業務エリアに含む居住支援法人は75法人あります。（令和４年３月末時点）

　居住支援法人は、物件情報の提供など住まい探しの他、賃貸契約や転居などの支援も行っています。また、入居後の見守りや金銭管理、介護、就労支援、時には死後事務など、さまざまな生活支援を行っています。住まいの支援には、福祉施策との連携や地域での見守り、家主や不動産事業者の協力や情報交換などが求められており、住宅セーフティネット法に基づき、自治体と居住支援法人、不動産関係者等が連携して全国的に居住支援協議会の設立が進められています。大阪府内では大阪府、豊中市、摂津市、岸和田市に居住支援協議会が設立されています(令和4年５月末現在)。

阿倍野区の居住支援法人が開設したシェアハウス。24時間介護士が常駐する

現状と課題の共有、そして実践へ

　しかし、住宅セーフティネット制度の内容は、まだ十分に知られていない現状があります。情報交換会では、補助金制度や空家改修事例などの紹介に続き、阿倍野区でシェアハウスを運営する居住支援法人の居住支援の事例、連帯保証人に近い役割を担う制度である家賃債務保証制度の紹介、大阪市立住まい情報センターに寄せられる相談事例などが報告されました。

　参加した居住支援法人からは、「障がいのある人同士や近隣とのトラブルをどのように解決すればよいか」「オーナーとしては物件の入居対策が必要な時代になっており住宅確保要配慮者の受け入れを進めたいものの、リスクも感じている」「居住支援法人が保証人となるなど支援したことから入居が実現した例がある」など、日頃の支援の現場での課題が共有される質疑と意見交換が続きました。

　一般社団法人居住支援全国ネットワークの調査にも関わった､菅野拓大阪公立大学准教授は「人の暮らしを住まいのみで考えるだけでは無理がある。生活困窮者自立支援機関をはじめとした地域共生社会づくりを担う支援機関などと連携し、支援者のネットワークで対応することが重要だ」と話します。

　今後、住宅確保要配慮者への包括的な居住支援の連携づくりが模索されています。

(シミポタ運営事務局　コリアジャパンセンター)

注１：住宅確保要配慮者の範囲について詳しくはこちら。大阪府は、法律で定められた範囲に加えて、海外からの引揚者、新婚世帯、原子爆弾被弾者、戦傷病者、児童養護施設退所者、LGBTをはじめとする性的マイノリティ、UIJターンによる転入者などを住宅確保要配慮者として定めており、大阪市も同様です。

注２：住宅セーフティネット制度について詳しくはこちら