社会課題と市民活動内容

社会課題と市民活動内容

警察庁が公表した「警察取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの者」(令和6年)によると

生前に社会的に孤立していたことが強く推認される「死後8日以上」を経過 していたものは、21,856 件。 (参考)「死後4日以上」を経過していたものは、31,843 件となっています。

 

今後も単身世帯・単身高齢世帯が増加し、孤独・孤立の問題の深刻化が懸念され、このような状況に加え、死亡者数が自然増となることもあり、孤立死についても増加していくことが懸念される中、生前において社会とのつながりを失い孤立死に至ることを予防していくことが重要であると書かれています。

 

このような社会課題を解決する取り組みの参考になるのではないかと

シニアのための多世代型交流スペースを運営さているNPO法人『ここから100』代表・金山佳子さんにお話を伺いました。

 

 

「終活」ではなく「生き活」を──『ここから100』の理念

 

「終活」という言葉には、人生の終わりを意識させるどこか後ろ向きな印象があるかもしれません。しかし本来の終活とは、これからの人生をより良く、自分らしく生きるための準備のことであり、

『ここから100』は、「終活」を前向きにとらえなおし、「生き活(いきかつ)」と呼ぶことで、いきいきとした人生を応援しています。

 

団体名の「ここから100」には、「ここから100歳まで、100点満点の人生を」という思いが込められており

年齢に関係なく、誰もが自分らしく輝ける場づくりを目指し、日々活動を展開されています。

 

 

設立のきっかけは「プロボノ大阪」から

金山さんはもともと会社員でしたが、プロボノ大阪の「ええ街プロジェクト」に参加したことで、地域に潜む社会課題の多さに気づきます。「何か自分にできることはないか?」との思いから、2018年に会社を退職。空き家を借りてリノベーションし、『ここから100』の活動をスタートさせました。

 

3つの柱で支える活動

『ここから100』の活動は、現在以下の3つの柱を中心に構成されています。

 

楽しめる「場をつくる」

多世代が集い、交流できる居場所づくり。高齢者と子どもがつながる「こども食堂」や趣味のサークル活動(麻雀、編み物など)を通じて、地域の交流を深める。

 

お困りごとを「かたづける」

生前整理・遺品整理、引っ越し、死後事務委任など、暮らしや人生に関わるあらゆる「片づけ」を支援。行政や地域団体とも連携し、複雑な課題にも対応。

 

将来の不安をなくす「情報をつなぐ」

見守りサービス、家事代行、葬儀・エンディングプロデュースなど、安心して暮らすための情報やサービスを提供。

 

 

高齢者の力を、地域の力に

 

 活動の原点は「100歳体操」。そこから利用者の「これがやりたい!」という声をきっかけに、趣味の交流など、活動がどんどん広がり、

2019年からは、高齢者自身が担い手となってこども食堂を開催。高齢者が子どもたちのために料理を作ることで、地域に役立ちながら自分の役割を実感できる機会となっています。

 

こうした多世代交流の場は、高齢者にとっての生きがいとなるだけでなく、子どもたちにも温かい地域のつながりを伝える場として大切にされています。

 

 

 

 

「人生100年時代を、100点満点で終えてほしい」

『ここから100』が目指すのは、高齢者が誰一人取り残されることなく、自分らしい人生を全うできる社会です。

 

孤独死の現場を実際に見てきた金山さんは、「誰にも助けを求められない状況をなくしたい」と話します。だからこそ、顔の見えるつながり、気軽に頼れる場所づくりに力を注ぎ続けています。

 

 

『やってみたい』から始まった社会意義イベント

 

これまで、ここから100に通う多世代の人の『やってみたいこと』をサポートしてきました。

その活動の中でも印象的なのが、キャンドルナイトイベントです。

 

ある日、ここから100でキャンドル教室をしている講師から「キャンドルナイトをしてみたい」という声を受け、金山さんが東北での防災研修で得た学びと掛け合わせ実現しました。

 

防災に関するブースはもちろん、音楽ステージやマルシェなどで、高齢者だけでなく多くの地域の人々が賑わい、夜にはキャンドルの灯りに多くの人が集い

顔の見えるつながりの大切さを実感できるイベントとなっています。

 

また、大阪男女いきいき財団で防災について学び、医療・福祉従事者とともに「防災ノート」を作成。2025年にはこのノートを活用した講座の開催も予定しています。

・防災ノート

 

キャンドルナイト&防災イベント

 

 

 

最後に──地域と共に進む

活動の中で最も苦労したのは「地域の理解を得ること」だと金山さんは語ります。しかし、少しずつ信頼を築き、今では多くの人が集う居場所となりました。

 

『ここから100』の取り組みは、地域の未来を変える小さな一歩。

これからも高齢者を中心とした、多世代が笑顔でつながる社会の実現を目指されています。

今後の取り組みも注目していきたいと思います。

 

 

 

取材・記事作成:シミポタ運営事務局(大山 智現)

 

引用文献

「警察取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの者」(令和6年)

https://www.cao.go.jp/kodoku_koritsu/torikumi/project_team/dai4/pdf/sankou2