市民活動ワクワクレポート内容
コロナ禍を乗り越えて共同菜園で野菜作りを継続し、活動は4年目に突入。
鶴見区シニアボランティア アグリ (以下「アグリ」という)は、シニア男性のみで畑作業をし、獲れた野菜を子ども食堂や鶴見区食生活改善推進員協議会(ヘルスメイト)の活動に無償で提供している団体で、2019年にポータルサイトに記事が掲載されていますが、その後、2020年に行われた厚生労働省「第9回 健康寿命を延ばそう!アワード 団体部門」において、見事、「老健局長 優良賞」を受賞されました。
そこで第2弾として、コロナ禍での活動状況について、活気の輪を広げる秘訣となっていることや新たなつながりなど、前回取材時からの変化を中心に、代表の龍神正則さんと鶴見区社会福祉協議会の安藤美希さんにお話をうかがいました。また野菜の提供先のひとつである子ども食堂にも、お話をうかがうことができましたので、併せてご紹介します。
年々、工夫・改良ができている実感があるが、今、子どもたちと会えないのがもどかしい
活動される中で、大切にされていることについて改めておうかがいします。また、コロナ禍でその後、どのような変化がありましたか?
野菜の成長は待ってくれないからね。収穫のタイミングを逃すと成長しすぎて食べごろを逃してしまうのです。今日は雨でしたが、皆さん自主的に参加してくれていました。コロナ禍はマスクをつけながらの作業になりましたが、密にならないように心がけて作業してくれています。
野菜や果物に虫食いあとがあれば、今の子どもたちは食べるのを嫌がります。当番制で水やりなど行う際に、虫がついていたらみんなで丁寧に取り除いています。
そして1つの種類の野菜を一度に作らず、少し時期をずらして育てることで長く食べてもらえるよう、工夫するようにもなりました。最初は何もわからなかったけど、4年間の経験の積み重ねで色々工夫・改良しています。
コロナ禍になってからは、思うように子どもたちとつながれず、もどかしい思いを抱いています。
以前なら小中学生から高校生まで、プチトマトや芋ほりなどの収穫体験や草引きなどのお手伝いにと、実際に畑に来てくれていたので、「火が消えたような気持ち」でした。
鶴見区内の5か所ある子ども食堂も現在は3か所のみが活動している状況です。お弁当形式にしたり、届け方を工夫されているようです。実際に畑で集まって子どもたちと会い、直接「美味しかった!」「楽しかった!」の声が聞きたいけど、今はメールや手紙で伝えてもらっています。
さまざまな仕事を経験してきた男性たちが強みを発揮し、持続可能且つ発展的な活動へ
種や苗、農具購入に必要な資金確保含め、活動持続と活動の輪を広げる秘訣は?
私たちの活動は大阪市ボランティア活動振興基金や大阪ガス福祉財団等、助成金と会員の年会費で運営しています。助成金では耕運機のほか、支柱や防虫ネットを購入しました。
助成金申請にはアグリの会員でパソコン操作が得意な人ががんばってくれました。
アグリの人たちは、みんなさまざまな仕事を経験してきたので、パソコンが得意な人、支柱を立てるのがうまい人、機械に詳しい人などそれぞれに得意分野をもっていますので、活動の輪を広げるポイントになっていると思います。
パソコン担当の人はSNSを利用して活動の発信もしてくれているのですが、おかげで京都工芸繊維大学の学生にも興味を持っていただき、問い合わせがあり、オンラインZoomで話をすることができました。
その際、私たちは鶴見区社会福祉協議会主催のボランティア講座を受講したことをきっかけに、共同菜園のボランティア活動に出会うことができ、当初は8名の会員だったが、現在17名、みんなで楽しく試行錯誤しながら活動していることなど、さまざまなことを伝えました。学生たちは「シニアの孤立を防ぐ施策」の研究に取り組んでいるそうです。とても有意義な意見交換の場を持つことができました。
鶴見区社会福祉協議会の安藤さんにうかがいます。
シニア男性を対象とした共同菜園ボランティアの企画意図とその後の展開につながった秘訣は?
男性の場合、退職後、地域で知り合いや友人を作るきっかけがなければ人との交流は少なくなる傾向にあります。さらに一人暮らしをされている高齢者の方も多く、見守りの必要も感じていました。そんな中、農協や畑を持っている地主さんなどの協力もあって平成29年、ボランティア講座「野菜づくりで生きがいづくり」を企画することができました。その講座をきっかけに活動を始め、アグリは4年目を迎えましたが、予想以上の皆さんのがんばりもあって、畑面積も広がり、収穫できる野菜も増え、なにより皆さんの元気に私たちがパワーをいただいています。また、ずっとご一緒していると身内のようにも思えて…。
だから余計にアグリの皆さんが作った野菜をどんどん有効活用したい、届ける場所を広げたいという思いが強いのかもしれません。食材を必要とする地域の諸団体、例えば子ども食堂はどうか?鶴見区役所の保健福祉課に相談し、連携団体をご紹介させていただきました。
でも何よりアグリの皆さんの熱心さがあってこそで、そのエネルギーに引っ張られるように、活躍の場が広がったのだと思います。
アグリが野菜を提供している「子ども食堂うつぎ」(運営:NPO法人PASまいんど)の安本幸子さんに後日、お話を伺いました。
私自身、大の野菜好き。いただける野菜の種類が年々増え、さまざまなメニューに野菜を使えるので本当に助かっています。ギョーザなどは白菜やキャベツなどの菜ものだけでなく、いただいたピーマンやニンジンなども刻んで6~7種類の野菜を入れますし、びっくりするくらい大きなきゅうりは炒め物や漬物にしたり、子どもたちに、より美味しく野菜を食べてもらえる工夫をしています。
今のお店では季節関係なく、年間通じていろんな野菜が手に入りますが、アグリの皆さんが丹精込めて育てられた四季折々の採れたて野菜を通じて「旬」についてなど食育にもつなげることができますし、年が明けての初めての集まり時はおせち風にしてみんなで日本文化のことを考えたり、アグリさんの野菜を中心に子どもたちの学びが広がり、コミュニケーションがより活発になっていると感じています。本当にありがたいですね。
<取材を終えて>
収穫の様子を見学することになっていたこの日はあいにくの雨。取材は延期か?と思いきや、皆さんレインコートを着て畑へ。そのパワーに圧倒されました。極力、農薬をおさえて育てられているのに、どの野菜の葉も実も虫食いがほとんどなく、とても丁寧に手間をかけて育てられているのだと思いました。そして、ただ美味しい野菜を手作りしたいだけではなく、「美味しい」と喜んでくれる子どもたちに届けたいという思いがモチベーションとなり、コロナ禍でも着実に活動成果をあげられてきたのだと感じました。そして鶴見区社会福祉協議会の生活支援コーディネーターの点と点をつなぐ力にも、頼もしさを感じました。
シニア世代の活躍が期待されている昨今ですが、現役世代の投げかけ方次第で可能性は広がるのだと思います。取材当日はあいにくの雨模様でしたが、皆さんハツラツとされていて、とても清々しい気持ちになりました。
シニアボランティア アグリの記事第1弾はこちらからご覧いただけます。
https://kyodo-portal.city.osaka.jp/case/24000005527/
記事作成:大阪ローカルメディア ぼちぼち 藤本 真理